“The Right Path: From Ike to Reagan, How Republicans Once Mastered Politics---and Can Again”という本を読みました。読了は確か1月中旬ごろ。MSNBCで“Morning Joe”という番組の司会をしている共和党の元下院議員、ジョー・スカボローが書いた本で、第二次世界大戦後の米国政治の軌跡を振り返りながら、「共和党は右に寄りすぎても勝てないし、左に寄りすぎても勝てない」なんていうことを論じている本です。扱っている時代が長いので全てを記憶に刻めるわけではないですが、勉強になりました。
例えばですね、ケネディ暗殺の翌年、1964年の大統領選で共和党はバリー・ゴールドウオーターを候補者に選びます。7月にジョンソン大統領の下で公民権法が成立した直後の選挙だったんですが、このゴールドウオーターっていう人は公民権法に反対票を投じたっていうぐらいバリバリの右派。「連邦政府が州の政策に介入すべきじゃない」というフェデラリズムの立場からの反対だったみたいですけど、大統領選では得票率で61.1%対38.5%という大敗に終わります。
共和党は前回1960年の大統領選では民主党のケネディに対して、当時の副大統領で、中道路線をとっていたニクソンを擁立し、得票率で49.7%対49.6%という超僅差で敗れていました。ニクソンは黒人票の32%を取っていたそうです。ところが公民権法に反対したゴールドウオーターは黒人票の6%しか取れなかった。このイメージは現在に至るまで続いているということで、共和党にとってバリバリ右派のゴールドウオーターを候補に擁立したことは歴史的な失敗だったというわけです。
で、共和党は1968年の大統領選挙で再びニクソンを候補に擁立します。このときの選挙はニクソン、民主党のハンフリー、独立党のウォレスによる三つ巴の選挙で、ニクソンは43.2%の得票率で当選。4年後の大統領選では、民主党のマクガバンに対して60.7%の得票率で再選。投票人の数では520対17という歴史的な大勝です。
1964年の段階では民主党を圧倒的に支持していた有権者が、1968年以降には共和党支持に移った理由として、スカボローは1965年のワッツ暴動に象徴されるような人種差別反対運動の過激化が進んでいたことを挙げます。もちろん独立党のウォレスのような人種差別を認めてしまうような候補者に支持は集まらないわけですが、ちょっとリベラルの側もやりすぎなんじゃないかという雰囲気が広まっていたとのこと。人種問題以外にも、ベトナム反戦運動の過激化、ドラッグ文化の浸透、教会に対する批判なんていう風潮が広まっていて、多くの一般的な米国人が取り残された気分になっていた。そういう時代において、中道的な立場をとるニクソンが支持を得たというわけです。
ただ、このニクソンはウオーターゲート事件で、1974年に辞任に追い込まれる。しかも副大統領から昇格するフォードとの間で、「フォードが大統領になったら、辞職したニクソンを訴追しない」なんていう密約を結んでいたとの疑惑が持ち上がって、共和党の人気は下落します。さらにフォードは副大統領にリベラル寄りのロックフェラーを選んだ。このことも保守層の反発を招いたということで、フォードは1976年の大統領選では民主党のカーターに敗れてしまいます。ちなみにカーターの得票率は50.1%。フォードは48.0%。
ところが、このカーターも政権をうまく運営できない。失業率は10%を超え、物価は18%も上昇。FRBの政策金利も20%近くまで引き上げられた。さらに1978年にはソ連がアフガニスタンに侵攻して米国内で危機感が高まり、1979年のイラン革命後には在テヘラン米大使館での人質事件が発生。カーター大統領は事態を解決できないままに1980年の大統領選に突入し、共和党のレーガンに敗北する。この時のレーガンの得票率は50.7%でしたが、次の1984年の選挙では得票率58.7%、選挙人で525人を獲得する大勝利です。
このほか、アイゼンハワーとかブッシュ親子とか1994年の中間選挙で共和党が下院で40年ぶりに過半数を取った保守革命なんかについても、いろいろと分析されています。こうした大まかな流れのなかで、いかにアイゼンハワーやニクソンやレーガンが中道的な立場をとって、現実主義に基づいた判断を重ね、結果を残してきたか、なんていう解説が加えられています。
で、気になるのは、それじゃぁ、共和党は2016年の大統領選で誰を候補に立てればいいのかっていうところなんですが、これがなかなか難しい。小さな政府を志向する保守候補で、現実主義に徹して政策を遂行できる中道路線をとる人が理想なわけですが、ただの中道だと、ティーパーティーみたいな保守層右派と「もっとリベラルにシフトすべきだ」っていう保守層左派の双方から批判される恐れもある。そうじゃなくて「保守層右派と保守層左派の両方が支持できる人」じゃないといけないわけですね。穏やかな口調で米国の保守主義の伝統を訴えて、保守層をひとつにまとめられる人材が必要だということになります。
スカボローはコリン・パウエル元国務長官みたいな人がいいというわけですが、パウエル自身はもう76歳ですから現実的じゃない。クルズやルビオはキャンキャンとやるイメージですし、クリスティも「陽気なデブにみえるけど、実は嫌な奴」っていうイメージがついてきた。ランド・ポールは穏やかイメージへの転換を図っている気がしますが、間に合うかどうか。ジェブ・ブッシュは「兄貴よりは賢い」っていうイメージなので、もしかしたら有力かもしれない。
ただ、オバマ政権には決定的な失敗があるわけでもない。ベンガジとかシリアへの対応はまずかったかもしれないけれど、米国の国益が決定的におびやかされる事態が起こっているわけじゃないですし、経済もなんだかんだでじわじわと快方に向かっている。ニクソン政権誕生の背景となった1960年代のジョンソン政権後半の社会的な混乱とか、レーガン政権誕生の背景となった1970年代後半のカーター政権時の経済・外交上の混乱みたいな事態とは違う。米国が抱えるリスクは大きくなっているのかもしれませんが、人口動態的にみても、次の大統領選は共和党にとって厳しくなるんだろうと。
まぁ、そんなことを考えさせられる本でした。面白かったです。
2014年2月22日土曜日
2014年1月15日水曜日
Glenn Beck’s Common Sense
ラジオやテレビ番組の司会者で、ティーパーティー支持者から熱烈な支持を受ける(参照)ベストセラー作家でもあるグレン・ベッグが2009年に書いた本。米国は個人の自由を尊重した小さな政府であるべきだと主張する本です。タイトルは、米国独立戦争時に植民地を一方的に支配しようとする英国からの独立は「常識だ」と主張したトーマス・ペインの著書”Common Sense”にのっかっています。
ティーパーティー運動がリーマン・ショック後のオバマ政権による債務者救済策の表明をきっかけに火がついたことは知っていたのですが、それがどうして「妊娠中絶反対」とか「同性婚反対」といったキリスト教的な価値観と結びつくのがよく分からなかったので読んでみた。
で、この本のなかでは声高に「妊娠中絶反対!」とか「同性婚反対!」とか訴えているわけではなかったです。Abortionという言葉は2回、marriageという言葉は1回しか出てこない。ただ、割と最初の方から”Our Founding Fathers understood that our rights and liberties are gifts from God”なんていう言葉が繰り返し出てきます。要は、米国は神から与えられた個人の人権を大切にする国だという考え方ですね。で、政府であっても神から与えられた個人の人権を侵害してはいけないから、米国は小さな政府であるべきだっていうことだと思います。そう考えれば、妊娠中絶反対とか同性婚反対といった価値観とつながるのもうなずけます。「神はそんなこと許していない」っていうのが支持者の主張でしょう。
財政問題についても主張はシンプルです。世の中には良い借金もある。住宅ローンとか、みんな使っている。常識ですね。ただ、”what most people ignore is that debt works only in the context of an otherwise financially responsible lifestyle”というわけです。つまり謝金するんだったら、返済のために節度ある生活をせねばならないということ。これも常識。”the result of preventing failure in a country rooted in freedom is a country that is no longer rooted in logic”なんていう言葉も出てきて、「自分が失敗すれば自分の責任だ」っていう考え方にも肯定的なんだと思う。
そうなってくると、財政赤字が拡大するなかでさらに政府の規模を大きくしようなんていう考えや、サブプライムローンで借金を返せなくなった人たちを救済しようなんていう考えには納得できないことになる。Social Security is a great example of a “legal Ponzi scheme”. なんていう文章も出てきますし、その後にはメディケアも「コストなしでの国民皆保険」なんていうのも嘘っぱちだと位置づけられています。
グレン・ベックの批判の矛先は「大きな政府」を標榜する民主党だけでなく、財政赤字を拡大させてきたワシントン全体に向けられています。多くの議員がゲリマンダーで選挙区をガチガチに固めて再選を繰り返していることにも批判的で、「議員の任期を制限せよ」と主張したりもする。ワシントンの政治エリートの「個人の権利は政府の権力に従属するもので、公益よりも大切な個人の権利なんてない」という考え方を”Progressivism”と批判して、共産主義やファシズムや社会主義や帝国主義や国家主義と同じだとします。右のプログレッシビズムは米国の海外での軍事活動を拡大させ、左のプログレッシビズムは国連なんかの役割を拡大させる、という記述もある。もちろん、政府は銃を持っていいけど、個人は銃を持っちゃいけないなんていう考え方にも反対です。公的教育のなかで教師が子供たちの友達のように振る舞ったり、テストの点数よりも「みんな平等で仲良くしよう」なんていう考え方を教えたりすることにも否定的です。学校では建国以来の価値観である競争原理を教えなければ米国は弱くなってしまうという発想です。
とまぁ、ちょっと過激なところはあります。あと、ティーパーティーの人たちがよく批判されるように対案は示されていません。とにかく政府の拡大は問題なので国民は立ち上がるべきだというだけですね。
ただ、「あんまり政府をあてにするもんじゃないよ。自分のことは自分で守るのが常識だ」っていう感覚には納得できます。経済低迷で生活への不安が広がるなかで、増税や弱者救済のための負担増という考え方に反発する気持ちも分かる。さらに神を重視する人たちであれば、その他の社会問題にも過剰に反応したりするのでしょう。
なんとなくティーパーティーの気分が分かりました。要は不安なんだと思います。
ティーパーティー運動がリーマン・ショック後のオバマ政権による債務者救済策の表明をきっかけに火がついたことは知っていたのですが、それがどうして「妊娠中絶反対」とか「同性婚反対」といったキリスト教的な価値観と結びつくのがよく分からなかったので読んでみた。
で、この本のなかでは声高に「妊娠中絶反対!」とか「同性婚反対!」とか訴えているわけではなかったです。Abortionという言葉は2回、marriageという言葉は1回しか出てこない。ただ、割と最初の方から”Our Founding Fathers understood that our rights and liberties are gifts from God”なんていう言葉が繰り返し出てきます。要は、米国は神から与えられた個人の人権を大切にする国だという考え方ですね。で、政府であっても神から与えられた個人の人権を侵害してはいけないから、米国は小さな政府であるべきだっていうことだと思います。そう考えれば、妊娠中絶反対とか同性婚反対といった価値観とつながるのもうなずけます。「神はそんなこと許していない」っていうのが支持者の主張でしょう。
財政問題についても主張はシンプルです。世の中には良い借金もある。住宅ローンとか、みんな使っている。常識ですね。ただ、”what most people ignore is that debt works only in the context of an otherwise financially responsible lifestyle”というわけです。つまり謝金するんだったら、返済のために節度ある生活をせねばならないということ。これも常識。”the result of preventing failure in a country rooted in freedom is a country that is no longer rooted in logic”なんていう言葉も出てきて、「自分が失敗すれば自分の責任だ」っていう考え方にも肯定的なんだと思う。
そうなってくると、財政赤字が拡大するなかでさらに政府の規模を大きくしようなんていう考えや、サブプライムローンで借金を返せなくなった人たちを救済しようなんていう考えには納得できないことになる。Social Security is a great example of a “legal Ponzi scheme”. なんていう文章も出てきますし、その後にはメディケアも「コストなしでの国民皆保険」なんていうのも嘘っぱちだと位置づけられています。
グレン・ベックの批判の矛先は「大きな政府」を標榜する民主党だけでなく、財政赤字を拡大させてきたワシントン全体に向けられています。多くの議員がゲリマンダーで選挙区をガチガチに固めて再選を繰り返していることにも批判的で、「議員の任期を制限せよ」と主張したりもする。ワシントンの政治エリートの「個人の権利は政府の権力に従属するもので、公益よりも大切な個人の権利なんてない」という考え方を”Progressivism”と批判して、共産主義やファシズムや社会主義や帝国主義や国家主義と同じだとします。右のプログレッシビズムは米国の海外での軍事活動を拡大させ、左のプログレッシビズムは国連なんかの役割を拡大させる、という記述もある。もちろん、政府は銃を持っていいけど、個人は銃を持っちゃいけないなんていう考え方にも反対です。公的教育のなかで教師が子供たちの友達のように振る舞ったり、テストの点数よりも「みんな平等で仲良くしよう」なんていう考え方を教えたりすることにも否定的です。学校では建国以来の価値観である競争原理を教えなければ米国は弱くなってしまうという発想です。
とまぁ、ちょっと過激なところはあります。あと、ティーパーティーの人たちがよく批判されるように対案は示されていません。とにかく政府の拡大は問題なので国民は立ち上がるべきだというだけですね。
ただ、「あんまり政府をあてにするもんじゃないよ。自分のことは自分で守るのが常識だ」っていう感覚には納得できます。経済低迷で生活への不安が広がるなかで、増税や弱者救済のための負担増という考え方に反発する気持ちも分かる。さらに神を重視する人たちであれば、その他の社会問題にも過剰に反応したりするのでしょう。
なんとなくティーパーティーの気分が分かりました。要は不安なんだと思います。
2014年1月11日土曜日
Foreign Policy Begins at Home
The Despensable Nationを読んで、何か別の人の本でもと思って読んだ。米国の外交を立て直すにはまず内政問題への取り組みが大切だというちょっと変化球的な内容ですが、リチャード・ハースといえば、Foreign Affairsを出していることでおなじみの外交問題評議会のトップですので、そんな無茶苦茶なことを書いているわけでもないんだと思います。2013年4月出版。オバマ政権2期目に入ってからの本です。読み終わったのは11月の下旬ごろ。
米国といえば超大国として国際社会への関与を続けて来たわけです。特に冷戦終結後は唯一の超大国となり、イラクのクウェート侵攻後の湾岸戦争(1991年)とか911後のアフガン戦争、2003年に始まったイラク戦争なんかではまさに「世界の警察官」としてふるまってきた。ところが最近の米国内には戦争疲れが広がって、2008年のリーマン・ショック後は財源的にも余裕がない。そんななかでオバマ大統領は「米国は世界の警察官ではない」と宣言しちゃう。
そういう現状のなかでハースは「米国は自らの影響力の限界を認識して、国際社会で何を成し遂げようとするかを考え直す必要がある。やることが望ましいこととやらねばならないこと、実現可能なことと実現不可能なことの区別をつけなければならない」としています。
ハースは911後のアフガン戦争は米国の安全を守るためには避けられない戦争だったとしています。まぁ、マンハッタンに旅客機で突っ込まれたんだから、やり返さないわけにはいかないということでしょう。ただ、2009年のアフガン増派は回避すべきだったとしています。米国はアフガン増派で911を実行したアルカイダだけでなく、タリバンも攻撃対象としますが、これは「タリバンの支配地域は自動的にアルカイダのものになる」という誤った想定に基づいたもので、増派しなくても無人機攻撃や特殊部隊の投入で対応できる可能性を無視していた。また米国が何をしようとも、アフガン南部でタリバンが勢力を拡大することは避けられないという現実問題も見落としていた。このアフガン増派の結果、米国はアフガン国内の戦闘の主体となってしまい、米国の安全保障とは関係のない戦いに巻き込まれたという分析です。また、歴史的に中央政府の力が弱いアフガンで強大な政府軍を作るという困難な目標をたてたことも間違いだったとしています。
あと、ハースはカーターやレーガンの時代は外交の目的を人権の拡大においたけれど、ブッシュ(子)は民主主義の拡大においた。ただ、民主主義の拡大っていうのは極めて難しい。安全保障の維持とか経済成長のためにはサウジアラビアとか中国とかも協力せねばならないわけです。「いろんな問題で協力を求めながら、同時に相手の体制を否定するというのは難しいことだ」というわけです。中東で民主主義を拡大することは米国にとって望ましいことではあるけれど、米国外交の唯一の目標ではない。もちろん民主主義の問題に口をつぐめというわけじゃないんだけれど、民主主義の拡大を目標にすえる際には「地域の現状や政策的に取り得るオプションや米国へのコストなんかを吟味することが必要」という主張です。「現実問題として考えれば、西側式の民主主義は世界的な価値ではないということを米国は認識すべきだ」とも言っています。
あと、米国はコソボ問題なんかでは「政権による虐殺を防ぐという人道的見地から軍事介入する」なんていうことをしたりするわけですが、こうした人道的見地からの軍事介入も「無制限のリソースが必要になる」と批判的です。こうした軍事介入も、きちんとコストとベネフィットを見極めたうえでやらねばならない。人道的軍事介入が認められる条件としては、「脅威が大きくて疑いのないもので、被害を受けている人たちからの要請があり、反体制派が妥当な目標のもとで機能していて、国際社会の支持と支援があって、資金的なコストを限定できる確実な見通しがあって、他の手段は不適切だと判断される場合」としています。
ハースは現在の米国がとるべき政策として、”Restoration”という言葉を使っています。米国をめぐる国際環境はかつてほど厳しいものではないという認識のもとで、まずは米国のリソースを国内問題に配分する。外交では中東への過剰な介入は控えて、アジア太平洋地域や西側地域にリソースを割く。あと軍事介入偏重を改め、経済や外交交渉といったツールをより重視するということだそうです。「米国は友好国への支持を示して、友好国を攻撃しようとする国を牽制しなければならないが、逆に友好国が挑発的になったり向こう見ずな行動に出たりしないように、無条件に友好国を支持するわけではないことも示すべきだ」なんてことも言っています。
とまぁ、外交パートはこんな感じ。まぁ、今のオバマ政権の外交方針はこんな感じなんでしょうね。昨年夏にオバマがシリアへの軍事行動を検討した際、「化学兵器使用の拡大を防ぐための人道的見地」を強調して「アサド政権の打倒」は否定したところとか、英国が軍事行動への参加を見送った後で、(結果的にせよ)外交交渉を通じた化学兵器全廃が進展したところなんかは、「ハースが後ろでささやいていたんじゃないの」って思えるほどです。日中関係への関わり方もそう。尖閣諸島が日本の施政下にあることは明確にするけれども、安倍首相が靖国参拝なんかをやれば「失望」を表明して、日本が行き過ぎることも防ごうとする。
そんなハースは、イランがもめた場合はミサイル攻撃などで対応できるが、北朝鮮がもめた場合は地上戦の「必要がある」としています。あと、この後、米国の内政を立て直すためには何が必要かという話も沢山出てくるのですが、まぁ、ハースは外交の人でしょうから割愛。
面白かったです。
米国といえば超大国として国際社会への関与を続けて来たわけです。特に冷戦終結後は唯一の超大国となり、イラクのクウェート侵攻後の湾岸戦争(1991年)とか911後のアフガン戦争、2003年に始まったイラク戦争なんかではまさに「世界の警察官」としてふるまってきた。ところが最近の米国内には戦争疲れが広がって、2008年のリーマン・ショック後は財源的にも余裕がない。そんななかでオバマ大統領は「米国は世界の警察官ではない」と宣言しちゃう。
そういう現状のなかでハースは「米国は自らの影響力の限界を認識して、国際社会で何を成し遂げようとするかを考え直す必要がある。やることが望ましいこととやらねばならないこと、実現可能なことと実現不可能なことの区別をつけなければならない」としています。
ハースは911後のアフガン戦争は米国の安全を守るためには避けられない戦争だったとしています。まぁ、マンハッタンに旅客機で突っ込まれたんだから、やり返さないわけにはいかないということでしょう。ただ、2009年のアフガン増派は回避すべきだったとしています。米国はアフガン増派で911を実行したアルカイダだけでなく、タリバンも攻撃対象としますが、これは「タリバンの支配地域は自動的にアルカイダのものになる」という誤った想定に基づいたもので、増派しなくても無人機攻撃や特殊部隊の投入で対応できる可能性を無視していた。また米国が何をしようとも、アフガン南部でタリバンが勢力を拡大することは避けられないという現実問題も見落としていた。このアフガン増派の結果、米国はアフガン国内の戦闘の主体となってしまい、米国の安全保障とは関係のない戦いに巻き込まれたという分析です。また、歴史的に中央政府の力が弱いアフガンで強大な政府軍を作るという困難な目標をたてたことも間違いだったとしています。
あと、ハースはカーターやレーガンの時代は外交の目的を人権の拡大においたけれど、ブッシュ(子)は民主主義の拡大においた。ただ、民主主義の拡大っていうのは極めて難しい。安全保障の維持とか経済成長のためにはサウジアラビアとか中国とかも協力せねばならないわけです。「いろんな問題で協力を求めながら、同時に相手の体制を否定するというのは難しいことだ」というわけです。中東で民主主義を拡大することは米国にとって望ましいことではあるけれど、米国外交の唯一の目標ではない。もちろん民主主義の問題に口をつぐめというわけじゃないんだけれど、民主主義の拡大を目標にすえる際には「地域の現状や政策的に取り得るオプションや米国へのコストなんかを吟味することが必要」という主張です。「現実問題として考えれば、西側式の民主主義は世界的な価値ではないということを米国は認識すべきだ」とも言っています。
あと、米国はコソボ問題なんかでは「政権による虐殺を防ぐという人道的見地から軍事介入する」なんていうことをしたりするわけですが、こうした人道的見地からの軍事介入も「無制限のリソースが必要になる」と批判的です。こうした軍事介入も、きちんとコストとベネフィットを見極めたうえでやらねばならない。人道的軍事介入が認められる条件としては、「脅威が大きくて疑いのないもので、被害を受けている人たちからの要請があり、反体制派が妥当な目標のもとで機能していて、国際社会の支持と支援があって、資金的なコストを限定できる確実な見通しがあって、他の手段は不適切だと判断される場合」としています。
ハースは現在の米国がとるべき政策として、”Restoration”という言葉を使っています。米国をめぐる国際環境はかつてほど厳しいものではないという認識のもとで、まずは米国のリソースを国内問題に配分する。外交では中東への過剰な介入は控えて、アジア太平洋地域や西側地域にリソースを割く。あと軍事介入偏重を改め、経済や外交交渉といったツールをより重視するということだそうです。「米国は友好国への支持を示して、友好国を攻撃しようとする国を牽制しなければならないが、逆に友好国が挑発的になったり向こう見ずな行動に出たりしないように、無条件に友好国を支持するわけではないことも示すべきだ」なんてことも言っています。
とまぁ、外交パートはこんな感じ。まぁ、今のオバマ政権の外交方針はこんな感じなんでしょうね。昨年夏にオバマがシリアへの軍事行動を検討した際、「化学兵器使用の拡大を防ぐための人道的見地」を強調して「アサド政権の打倒」は否定したところとか、英国が軍事行動への参加を見送った後で、(結果的にせよ)外交交渉を通じた化学兵器全廃が進展したところなんかは、「ハースが後ろでささやいていたんじゃないの」って思えるほどです。日中関係への関わり方もそう。尖閣諸島が日本の施政下にあることは明確にするけれども、安倍首相が靖国参拝なんかをやれば「失望」を表明して、日本が行き過ぎることも防ごうとする。
そんなハースは、イランがもめた場合はミサイル攻撃などで対応できるが、北朝鮮がもめた場合は地上戦の「必要がある」としています。あと、この後、米国の内政を立て直すためには何が必要かという話も沢山出てくるのですが、まぁ、ハースは外交の人でしょうから割愛。
面白かったです。
2013年12月14日土曜日
The Dispensable Nation
オバマ政権の1期目でアフガニスタン・パキスタン問題の担当特使を務めたリチャード・ホルブルックの右腕として働き、今でも国務省のForeign Affairs Policy Boardのメンバーである、Vali Nasrの本です。読み終えたのはちょっと前ですけど、面白かったです。門外漢の私には知らないことばかりで勉強になりました。
Nasrは冒頭から、オバマ政権内には外交で問題を解決しようとする国務省と、軍事行動に重きをおく国防総省などの間に対立関係があると指摘して、側近に囲まれたオバマ大統領は多くの場合は国防総省側の意見をとりいれたことを嘆いています。政権内にいたのは2年ほどだったようですが、オバマ外交には批判的です。
2009年春ごろにホルブルックはアフガンの治安を安定させて米軍撤退をスムーズに進めるというシナリオを描いて、タリバンとアフガニスタンのカルザイ大統領との和平交渉を始めようとした。でも国防総省やCIAなんかは、タリバンと交渉するなんてテロを容認するようなものだとかいって反対する。で、そのとき就任したばかりのオバマは対外的に「弱腰だ」とみられることを恐れてホルブルックの意見に賛成しない。クリントン国務長官はホルブルックを信頼していたので、なんとかオバマを説得しようとするんだけれど、「ベルリンの壁」と呼ばれるオバマの側近グループが邪魔をする。クリントンはオバマあてのペーパーを書いて「これを承認してくれ」と頼み込み、オバマもうなずいたらしいんですが、それも棚上げになってしまう。そんなこんなとしているうちに、ホルブルックは2010年12月に心臓の病気で亡くなってしまいます。69歳。
ホワイトハウスがタリバンとの対話を検討し始めたのはこの後で、クリントンは2011年2月の演説でようやく、オバマ政権を代表してタリバンとの対話を表明することができた。ただ、ホルブルックの構想では、アフガンに駐留している米兵の数が最大の時期こそが米国の交渉力が一番強いわけだから、この状態をなるべく維持しておくという方針だったのに、オバマは6月には早々にアフガンからの撤退計画を発表してしまう。ホルブルックが死んでからホワイトハウスにどういう心境の変化があったのかは分かりませんが、ホルブルックとともに働いてきたNasrにすれば、なんという下手くそな外交なんだというところでしょう。
このほかパキスタンのムシャラフが密かにタリバンを支援しているんだとか、2011年のNATO軍によるパキスタンの検問所の誤爆の後、オバマは「タフ」に見られたいからパキスタンとの関係修復に後ろ向きだったとか、オバマはイランに圧力をかけるばかりだという意味ではブッシュ政権と大差ないとか、いろいろと面白いエピソードも。ただ、ウィキペディアをざっとみたところ、ホルブルックは毀誉褒貶がある人らしいのでNasrの評価がどれだけ的を得ているのかは分かりません。ただ、米国の政権内にはいろんな考え方をもった人がいて、なんとかそれを実現しようとあーだこーだとやっているんだなという実態は面白いと思います。
あと、中東をめぐる情勢分析も、いろいろと。イランはイスラエルと敵対することでアラブのリーダーになろうとしているけど、サウジやトルコほどの経済力がないから支持を得られないとか、イランはパキスタンやインドや北朝鮮が核兵器保有を黙認されているんだから、自分たちも認められるだろうと考えているとか、米国からすればイスラエルへのテロ活動を支援するイランに核兵器保有を許すことはテロリストに核の傘を与えることになるから認められない面があるんだとか、経済制裁は便利な方法だけれどもそれだけでは問題の根源は解決できないとか、いろいろと門外漢にとっては面白い知見が出てきます。へぇ。
面白いのはNasrはイランについて、核兵器保有を許してしまったうえで封じ込めと抑止で対応した方がいいんじゃないのかと考えているところ。ロシアや中国が核兵器を持っていても世界が核戦争に向かっているわけじゃないし、北朝鮮やパキスタン、インドが核兵器を保有しているからといって、日本や韓国、バングラディシュ、スリランカなんかが核兵器保有を目指しているわけじゃない。米国には冷戦期に豊富な経験があるんだから、イランの核保有を阻止することにこだわらなくてもいいという見方です。へぇ。以前に書いたこのエントリの話に似ています。Nasrみたいに政権内にいるような人にも、そんな考え方をする人がいるんですね。
それと中国についても力点が置かれています。長すぎるんで、ざっと書いちゃうと、中国と米国の対立はなにも太平洋を挟んで起きるわけでなく、経済成長に不可欠な原油などの供給源である中東を舞台に起きるのだから、米国はきちんと準備をしておかなければならない。中国はアラブ世界やパキスタンやイランやトルコへの影響力確保を狙っている。だから米国もこうした地域にきちんと関与していかないと、中国にいいようにやられてしまう。というのが、Nasrの心配するところであったりします。
面白い本でした。
Nasrは冒頭から、オバマ政権内には外交で問題を解決しようとする国務省と、軍事行動に重きをおく国防総省などの間に対立関係があると指摘して、側近に囲まれたオバマ大統領は多くの場合は国防総省側の意見をとりいれたことを嘆いています。政権内にいたのは2年ほどだったようですが、オバマ外交には批判的です。
2009年春ごろにホルブルックはアフガンの治安を安定させて米軍撤退をスムーズに進めるというシナリオを描いて、タリバンとアフガニスタンのカルザイ大統領との和平交渉を始めようとした。でも国防総省やCIAなんかは、タリバンと交渉するなんてテロを容認するようなものだとかいって反対する。で、そのとき就任したばかりのオバマは対外的に「弱腰だ」とみられることを恐れてホルブルックの意見に賛成しない。クリントン国務長官はホルブルックを信頼していたので、なんとかオバマを説得しようとするんだけれど、「ベルリンの壁」と呼ばれるオバマの側近グループが邪魔をする。クリントンはオバマあてのペーパーを書いて「これを承認してくれ」と頼み込み、オバマもうなずいたらしいんですが、それも棚上げになってしまう。そんなこんなとしているうちに、ホルブルックは2010年12月に心臓の病気で亡くなってしまいます。69歳。
ホワイトハウスがタリバンとの対話を検討し始めたのはこの後で、クリントンは2011年2月の演説でようやく、オバマ政権を代表してタリバンとの対話を表明することができた。ただ、ホルブルックの構想では、アフガンに駐留している米兵の数が最大の時期こそが米国の交渉力が一番強いわけだから、この状態をなるべく維持しておくという方針だったのに、オバマは6月には早々にアフガンからの撤退計画を発表してしまう。ホルブルックが死んでからホワイトハウスにどういう心境の変化があったのかは分かりませんが、ホルブルックとともに働いてきたNasrにすれば、なんという下手くそな外交なんだというところでしょう。
このほかパキスタンのムシャラフが密かにタリバンを支援しているんだとか、2011年のNATO軍によるパキスタンの検問所の誤爆の後、オバマは「タフ」に見られたいからパキスタンとの関係修復に後ろ向きだったとか、オバマはイランに圧力をかけるばかりだという意味ではブッシュ政権と大差ないとか、いろいろと面白いエピソードも。ただ、ウィキペディアをざっとみたところ、ホルブルックは毀誉褒貶がある人らしいのでNasrの評価がどれだけ的を得ているのかは分かりません。ただ、米国の政権内にはいろんな考え方をもった人がいて、なんとかそれを実現しようとあーだこーだとやっているんだなという実態は面白いと思います。
あと、中東をめぐる情勢分析も、いろいろと。イランはイスラエルと敵対することでアラブのリーダーになろうとしているけど、サウジやトルコほどの経済力がないから支持を得られないとか、イランはパキスタンやインドや北朝鮮が核兵器保有を黙認されているんだから、自分たちも認められるだろうと考えているとか、米国からすればイスラエルへのテロ活動を支援するイランに核兵器保有を許すことはテロリストに核の傘を与えることになるから認められない面があるんだとか、経済制裁は便利な方法だけれどもそれだけでは問題の根源は解決できないとか、いろいろと門外漢にとっては面白い知見が出てきます。へぇ。
面白いのはNasrはイランについて、核兵器保有を許してしまったうえで封じ込めと抑止で対応した方がいいんじゃないのかと考えているところ。ロシアや中国が核兵器を持っていても世界が核戦争に向かっているわけじゃないし、北朝鮮やパキスタン、インドが核兵器を保有しているからといって、日本や韓国、バングラディシュ、スリランカなんかが核兵器保有を目指しているわけじゃない。米国には冷戦期に豊富な経験があるんだから、イランの核保有を阻止することにこだわらなくてもいいという見方です。へぇ。以前に書いたこのエントリの話に似ています。Nasrみたいに政権内にいるような人にも、そんな考え方をする人がいるんですね。
それと中国についても力点が置かれています。長すぎるんで、ざっと書いちゃうと、中国と米国の対立はなにも太平洋を挟んで起きるわけでなく、経済成長に不可欠な原油などの供給源である中東を舞台に起きるのだから、米国はきちんと準備をしておかなければならない。中国はアラブ世界やパキスタンやイランやトルコへの影響力確保を狙っている。だから米国もこうした地域にきちんと関与していかないと、中国にいいようにやられてしまう。というのが、Nasrの心配するところであったりします。
面白い本でした。
2013年6月13日木曜日
棚上げすればいいんじゃないか論
ちょっと昔の話なんですが、Jonathan TeppermanというForeign Affairsの編集者の文章を読んだ。"Asian Tensions and the Problem of History"というタイトルで、なんで日中韓の三国は歴史問題でケンカばかりしているのかねぇという内容です。(参照)
Teppermanさんは、安倍首相が「731」ナンバーの戦闘機の操縦席で撮った写真が中韓の反発を招いた話で日中韓のややこしい関係を紹介。日中は尖閣問題で対立するし、日韓には竹島問題がある。「朴大統領はオバマ大統領との会談のかなりの部分を安倍首相をこきおろすことに費やした」なんていう表現もある。で、もちろん対立の根源は第二次世界大戦に遡るわけですが、Teppermanさんは、
Why can’t these countries just let the past lie, especially when doing so would be so clearly in their interests? Yes, there are plenty of ugly traumas to overcome. But Japan has been a pacifist, liberal democracy for nearly 70 years now, and it’s hard to imagine it threatening anyone.
と疑問を呈します。そうそう。私もそう思う。
Teppermanさんは「ベストの解決法は、西ドイツのブラント首相が1970年にやったように、日本が全面的に第二次世界大戦時の行為について謝罪すること」と指摘します。「大日本帝国とナチは違う」ことにも理解は示すわけですけど、ドイツは謝罪によって膨大な利益があったわけだから、日本だって同様にするべきだというわけです。日本の政治家たちが「これまでに何度も謝罪しているし、賠償金だって払っている」と主張していることについては、「その通りだ」と認めます。でも、日本の政治家たちが保守的で謝罪疲れした支持者を満足させるために、その謝罪を台無しにするような発言を繰り返していることも事実だと。うん。確かにそうだ。
一方、中韓に対しては、「現在の目的のために歴史を利用しようとしている点で罪深い」(Japan’s neighbors, meanwhile, are just as guilty of exploiting the past for present ends.)と論評。中国が尖閣の領有権を主張し始めたのは周辺海域で資源が見つかったことと無関係ではないことや、国内の不満をそらそうとして愛国心をあおっていることにも注目します。
つまり、確かに日本は謝罪はしているんだけど、中韓は資源獲得とか国内の不満をそらそうなんていう気持ちがあるから謝罪を受け入れようとしない。それなら日本はもう一度謝罪した方がいいんだけど、せっかくの最初の謝罪を台無しにするような発言で事態を混乱させていると。つまり日中韓が何故過去のことを水に流せないのかという疑問に対する答えについては、"The answer is that no one will go first."というわけです。まぁ、当たり前の話なんですが、的を得た簡潔な説明である気がします。
じゃぁ、どうすればいいのかというと、Teppermanさんは" simply shelve the thorniest issues and work around them"と主張します。中国と台湾だって難しい問題は棚上げしているし、日中だって国交正常化から中国が台頭する最近までは尖閣問題を事実上棚上げしていたじゃないかと。確かに簡単な話ではないんだけど、棚上げすれば、
it would cool the region’s boiling waters while letting all sides save face. And it might just be the only way to avoid an actual shooting war that no side, despite the overheated talk, wants or could afford.
ということです。
まぁ、当事者以外の立場からみればそうなんでしょう。ということは日中韓の3カ国以外の立場の人はみんなそう思っているわけですな。じゃ、そうするのが正解だな。
写真はTeppermanさん。頭良さそうな顔ですね。
Teppermanさんは、安倍首相が「731」ナンバーの戦闘機の操縦席で撮った写真が中韓の反発を招いた話で日中韓のややこしい関係を紹介。日中は尖閣問題で対立するし、日韓には竹島問題がある。「朴大統領はオバマ大統領との会談のかなりの部分を安倍首相をこきおろすことに費やした」なんていう表現もある。で、もちろん対立の根源は第二次世界大戦に遡るわけですが、Teppermanさんは、
Why can’t these countries just let the past lie, especially when doing so would be so clearly in their interests? Yes, there are plenty of ugly traumas to overcome. But Japan has been a pacifist, liberal democracy for nearly 70 years now, and it’s hard to imagine it threatening anyone.
と疑問を呈します。そうそう。私もそう思う。
Teppermanさんは「ベストの解決法は、西ドイツのブラント首相が1970年にやったように、日本が全面的に第二次世界大戦時の行為について謝罪すること」と指摘します。「大日本帝国とナチは違う」ことにも理解は示すわけですけど、ドイツは謝罪によって膨大な利益があったわけだから、日本だって同様にするべきだというわけです。日本の政治家たちが「これまでに何度も謝罪しているし、賠償金だって払っている」と主張していることについては、「その通りだ」と認めます。でも、日本の政治家たちが保守的で謝罪疲れした支持者を満足させるために、その謝罪を台無しにするような発言を繰り返していることも事実だと。うん。確かにそうだ。
一方、中韓に対しては、「現在の目的のために歴史を利用しようとしている点で罪深い」(Japan’s neighbors, meanwhile, are just as guilty of exploiting the past for present ends.)と論評。中国が尖閣の領有権を主張し始めたのは周辺海域で資源が見つかったことと無関係ではないことや、国内の不満をそらそうとして愛国心をあおっていることにも注目します。
つまり、確かに日本は謝罪はしているんだけど、中韓は資源獲得とか国内の不満をそらそうなんていう気持ちがあるから謝罪を受け入れようとしない。それなら日本はもう一度謝罪した方がいいんだけど、せっかくの最初の謝罪を台無しにするような発言で事態を混乱させていると。つまり日中韓が何故過去のことを水に流せないのかという疑問に対する答えについては、"The answer is that no one will go first."というわけです。まぁ、当たり前の話なんですが、的を得た簡潔な説明である気がします。
じゃぁ、どうすればいいのかというと、Teppermanさんは" simply shelve the thorniest issues and work around them"と主張します。中国と台湾だって難しい問題は棚上げしているし、日中だって国交正常化から中国が台頭する最近までは尖閣問題を事実上棚上げしていたじゃないかと。確かに簡単な話ではないんだけど、棚上げすれば、
it would cool the region’s boiling waters while letting all sides save face. And it might just be the only way to avoid an actual shooting war that no side, despite the overheated talk, wants or could afford.
ということです。
まぁ、当事者以外の立場からみればそうなんでしょう。ということは日中韓の3カ国以外の立場の人はみんなそう思っているわけですな。じゃ、そうするのが正解だな。
写真はTeppermanさん。頭良さそうな顔ですね。
2013年6月11日火曜日
「新型の大国関係」とG2論
中国の習近平国家主席が米国のオバマ大統領と会談しました。そのなかで、"new model of major country relationship"(新型の大国関係)という言葉が出てくるので、どういう考え方なのか調べてみた。
このフレーズは習近平国家主席が持ち出した言葉のようで、6月7日の会談前のちょっとした会見(参照)で、
We need to think creatively and act energetically so that working together we can build a new model of major country relationship.
なんていう風に言っています。
で、この発言には前段があって、そこの部分を読むと、
And at present, the China-U.S. relationship has reached a new historical starting point. Our two countries have vast convergence of shared interests, from promoting our respective economic growth at home to ensuring the stability of the global economy; from addressing international and regional hotspot issues to dealing with all kinds of global challenges. On all these issues, our two countries need to increase exchanges and cooperation.
And under the new environment, we need to take a close look at our bilateral relationship: What kind of China-U.S. relationship do we both want? What kind of cooperation can our two nations carry out for mutual benefit? And how can our two nations join together to promote peace and development in the world? These are things that not just the people in our two countries are watching closely, but the whole world is also watching very closely.
Both sides should proceed from the fundamental interests of our peoples and bear in mind human development and progress.
と言っている。
まぁ、今から作り上げていこうというものですけど、
・双方が納得のいく関係
・お互いの国益のために協調する関係
・世界の平和と発展に資する関係
・両国の基本的な国益を出発点として、人間的な発展や進歩も考慮する関係
ってことですかね。
で、この新型の大国関係については、会談後の共同会見(参照)でも触れられている。
習近平国家主席によると、
President Obama and I both believe that in the age of economic globalization and facing the objective need of countries sticking together in the face of difficulties, China and the United States must find a new path -- one that is different from the inevitable confrontation and conflict between the major countries of the past. And that is to say the two sides must work together to build a new model of major country relationship based on mutual respect and win-win cooperation for the benefit of the Chinese and American peoples, and people elsewhere in the world.
ということらしいです。昔は2つの大国があれば衝突は必至だったけれど、そういうことにならないように協力しあいましょうということですね。この後の発言では、経済での連係や人的交流、軍事面での関係強化なんかの必要性について話しています。
まぁ、米中は経済的なつながりは強まっているんだけど、対立点もいっぱいあるわけです。人権問題とかサイバーセキュリティとか南シナ・東シナ海での航行の自由の確保とか、チベット問題、台湾問題なんかについては意見の相違は大きい。ただ、そういった問題点について対立の道を進むのではなく、お互いの利益を尊重しつつ、解決の道を探っていくということでしょう。
一方、オバマ大統領は、
I think President Xi identified the essence of our discussions in which we shared our respective visions for our countries' futures and agreed that we're more likely to achieve our objectives of prosperity and security of our people if we are working together cooperatively, rather than engaged in conflict.
としている。「衝突を避け、協力しあえば、人々の繁栄と安全という目的を達成できる」ということです。
またドニロン大統領補佐官は8日のプレスブリーフィングで、
the observation and the view by many people, particularly in the international relations field and some people in the United States and some people in China, that a rising power and an existing power are in some manner destined for conflict; that in fact this just an inexorable dynamic between an arising power and an existing power. We reject that, and the Chinese government rejects that. And the building out of the so-called new relationships, new model of relation between great powers is the effort to ensure that doesn’t happen; is an effort to ensure that we don’t succumb to the idea that somehow relations between countries are some immutable law of physics -- that, in fact, this is about leadership, it’s about conscious decisions and it’s about doing what’s best for your respective people.
と述べています。こちらも「衝突を避ける」ということを強調しています。オバマ大統領やドニロン補佐官が「お互いの国益を守る」というあたりに触れていないのは、人権とかサイバーセキュリティ、航行の自由なんかの対立点について口をつぐむわけじゃないという意思表示かもしれない。それでも新型の大国関係を目指すことで合意したとは認めているわけですから、対立点はあるけれど、協力できるところから協力していきましょうなんていうことかもしれません。
ちなみにオバマ政権の初期にあったG2論とは違うのかっていう話もあるわけですけど、Wikipediaによると、G2論というのは「世界1位、2位の経済大国である米中が話し合えば、世界金融危機とか気候変動問題とか北朝鮮やイランの核問題とか、いろんな問題を解決できて、新たな冷戦を回避できるんじゃないの?」っていう話のようです。経済学者のフレッド・バーグステンが提唱して、カーター大統領の補佐官だったブレジンスキーや世界銀行総裁だったゼーリックなんかが支持した。(参照)
バーグステンのForeign Affairsへの寄稿(参照)によると、中国はWTOに加盟したものの交渉の阻害要因となり、APEC全体での自由貿易圏構想に反対したり、資源の囲い込みを謀ったり、為替レートを操作したりして、世界2位の大国としての責任感に欠けている。だから、
To deal with the situation, Washington should make a subtle but basic change to its economic policy strategy toward Beijing. Instead of focusing on narrow bilateral problems, it should seek to develop a true partnership with Beijing so as to provide joint leadership of the global economic system. Only such a "G-2" approach will do justice, and be seen to do justice, to China's new role as a global economic superpower and hence as a legitimate architect and steward of the international economic order.
ということです。「お行儀の悪い中国を国際ルールに従わせるため、米国が中国と2つの大国として協調する」というコンセプトですかね。
あと、米国はこれまで中国を国際ルールに従わせるために「従わないとペナルティがあるぞ」という方針で臨んできたけど、米国にも他の国にも中国との関係から恩恵を受けている人は沢山いるので、そんな強行姿勢をとっても中国は本気にしない。だから、
Abandoning the present position and adopting a less confrontational approach might be the only way to persuade China to start cooperating.
なんていうことも言っています。
あと、
At a minimum, creating a G-2 would limit the risk of bilateral disputes escalating and disrupting the U.S.-Chinese relationship and the broader global economy. At a maximum, it could start a process that might, over time, generate sufficient trust and mutual understanding to produce active cooperation on crucial issues.
とも。
G2論も新型の大国関係も米中が協調するという点には変わりはないですが、G2論の最終的な目標は「最終的に中国を国際ルールに従わせる」という点にあるのに対して、新型の大国関係の目標は「衝突を避ける」という点であって、中国が国際ルールに従うかどうかは棚上げされているというイメージですかね。
本当かよ。
このフレーズは習近平国家主席が持ち出した言葉のようで、6月7日の会談前のちょっとした会見(参照)で、
We need to think creatively and act energetically so that working together we can build a new model of major country relationship.
なんていう風に言っています。
で、この発言には前段があって、そこの部分を読むと、
And at present, the China-U.S. relationship has reached a new historical starting point. Our two countries have vast convergence of shared interests, from promoting our respective economic growth at home to ensuring the stability of the global economy; from addressing international and regional hotspot issues to dealing with all kinds of global challenges. On all these issues, our two countries need to increase exchanges and cooperation.
And under the new environment, we need to take a close look at our bilateral relationship: What kind of China-U.S. relationship do we both want? What kind of cooperation can our two nations carry out for mutual benefit? And how can our two nations join together to promote peace and development in the world? These are things that not just the people in our two countries are watching closely, but the whole world is also watching very closely.
Both sides should proceed from the fundamental interests of our peoples and bear in mind human development and progress.
と言っている。
まぁ、今から作り上げていこうというものですけど、
・双方が納得のいく関係
・お互いの国益のために協調する関係
・世界の平和と発展に資する関係
・両国の基本的な国益を出発点として、人間的な発展や進歩も考慮する関係
ってことですかね。
で、この新型の大国関係については、会談後の共同会見(参照)でも触れられている。
習近平国家主席によると、
President Obama and I both believe that in the age of economic globalization and facing the objective need of countries sticking together in the face of difficulties, China and the United States must find a new path -- one that is different from the inevitable confrontation and conflict between the major countries of the past. And that is to say the two sides must work together to build a new model of major country relationship based on mutual respect and win-win cooperation for the benefit of the Chinese and American peoples, and people elsewhere in the world.
ということらしいです。昔は2つの大国があれば衝突は必至だったけれど、そういうことにならないように協力しあいましょうということですね。この後の発言では、経済での連係や人的交流、軍事面での関係強化なんかの必要性について話しています。
まぁ、米中は経済的なつながりは強まっているんだけど、対立点もいっぱいあるわけです。人権問題とかサイバーセキュリティとか南シナ・東シナ海での航行の自由の確保とか、チベット問題、台湾問題なんかについては意見の相違は大きい。ただ、そういった問題点について対立の道を進むのではなく、お互いの利益を尊重しつつ、解決の道を探っていくということでしょう。
一方、オバマ大統領は、
I think President Xi identified the essence of our discussions in which we shared our respective visions for our countries' futures and agreed that we're more likely to achieve our objectives of prosperity and security of our people if we are working together cooperatively, rather than engaged in conflict.
としている。「衝突を避け、協力しあえば、人々の繁栄と安全という目的を達成できる」ということです。
またドニロン大統領補佐官は8日のプレスブリーフィングで、
the observation and the view by many people, particularly in the international relations field and some people in the United States and some people in China, that a rising power and an existing power are in some manner destined for conflict; that in fact this just an inexorable dynamic between an arising power and an existing power. We reject that, and the Chinese government rejects that. And the building out of the so-called new relationships, new model of relation between great powers is the effort to ensure that doesn’t happen; is an effort to ensure that we don’t succumb to the idea that somehow relations between countries are some immutable law of physics -- that, in fact, this is about leadership, it’s about conscious decisions and it’s about doing what’s best for your respective people.
と述べています。こちらも「衝突を避ける」ということを強調しています。オバマ大統領やドニロン補佐官が「お互いの国益を守る」というあたりに触れていないのは、人権とかサイバーセキュリティ、航行の自由なんかの対立点について口をつぐむわけじゃないという意思表示かもしれない。それでも新型の大国関係を目指すことで合意したとは認めているわけですから、対立点はあるけれど、協力できるところから協力していきましょうなんていうことかもしれません。
ちなみにオバマ政権の初期にあったG2論とは違うのかっていう話もあるわけですけど、Wikipediaによると、G2論というのは「世界1位、2位の経済大国である米中が話し合えば、世界金融危機とか気候変動問題とか北朝鮮やイランの核問題とか、いろんな問題を解決できて、新たな冷戦を回避できるんじゃないの?」っていう話のようです。経済学者のフレッド・バーグステンが提唱して、カーター大統領の補佐官だったブレジンスキーや世界銀行総裁だったゼーリックなんかが支持した。(参照)
バーグステンのForeign Affairsへの寄稿(参照)によると、中国はWTOに加盟したものの交渉の阻害要因となり、APEC全体での自由貿易圏構想に反対したり、資源の囲い込みを謀ったり、為替レートを操作したりして、世界2位の大国としての責任感に欠けている。だから、
To deal with the situation, Washington should make a subtle but basic change to its economic policy strategy toward Beijing. Instead of focusing on narrow bilateral problems, it should seek to develop a true partnership with Beijing so as to provide joint leadership of the global economic system. Only such a "G-2" approach will do justice, and be seen to do justice, to China's new role as a global economic superpower and hence as a legitimate architect and steward of the international economic order.
ということです。「お行儀の悪い中国を国際ルールに従わせるため、米国が中国と2つの大国として協調する」というコンセプトですかね。
あと、米国はこれまで中国を国際ルールに従わせるために「従わないとペナルティがあるぞ」という方針で臨んできたけど、米国にも他の国にも中国との関係から恩恵を受けている人は沢山いるので、そんな強行姿勢をとっても中国は本気にしない。だから、
Abandoning the present position and adopting a less confrontational approach might be the only way to persuade China to start cooperating.
なんていうことも言っています。
あと、
At a minimum, creating a G-2 would limit the risk of bilateral disputes escalating and disrupting the U.S.-Chinese relationship and the broader global economy. At a maximum, it could start a process that might, over time, generate sufficient trust and mutual understanding to produce active cooperation on crucial issues.
とも。
G2論も新型の大国関係も米中が協調するという点には変わりはないですが、G2論の最終的な目標は「最終的に中国を国際ルールに従わせる」という点にあるのに対して、新型の大国関係の目標は「衝突を避ける」という点であって、中国が国際ルールに従うかどうかは棚上げされているというイメージですかね。
本当かよ。
2013年5月13日月曜日
議会調査局
ちょっと前に米国の議会調査局(Congressional Research Service)が出した日本に関するレポートで、安倍政権のナショナリズムっぷりが懸念されているというニュースがあった。
この日本に関するレポートというのは5月1日に出たもので、このサイトで原文を読むことができます。確かにサマリーの部分を読んだだけでも、
Comments and actions on controversial historical issues by Prime Minister Abe and his cabinet have raised concern that Tokyo could upset regional relations in ways that hurt U.S. interests. Abe is known as a strong nationalist. Abe’s approach to issues like the so-called “comfort women” sex slaves from the World War II era, history textbooks, visits to the Yasukuni Shrine that honors Japan’s war dead, and statements on a territorial dispute with South Korea will be closely monitored by Japan’s neighbors as well as the United States.
なんていう文章が出てくる。
ただ、この日本に関するレポートっていうのは頻繁に出ているもので、今年の2月にも同種のレポートが出ている。(参照) このレポートのサマリーにも同じ文章が出てくるので、別に今なって騒ぐ話でもないような気がします。
というわけで、この報告書を読んだところで日本でも報じられていることばかりだとは思うのですが、この議会調査局のレポートが非常に便利なことに気付きました。だって、日米関係のレポートが日米関係の諸問題について網羅的に記しているわけですから、他のテーマについてもレポートを読めば、どんな問題が懸念されているのかが網羅的に分かるってことじゃないですか。便利。ちなみにウィキペディアによると、CRSは議会予算局(CBO)や会計検査院(GAO)なんかと同じように、議会をサポートするための中立的な組織として知られているようです。
で、試しにこのページから、最近の報告書をあさってみると、4月26日に米韓関係についてのレポートが出ている。で、サマリーを読んでみると、「米韓関係はオバマ大統領と李明博前大統領の時代に最良の状態にあり、朴槿恵大統領に代わってからも良好な関係が続くと思われるが、朴大統領が北朝鮮との対決姿勢と柔軟姿勢のバランスをどのようにとるかは注視せねばならないよ。朝鮮半島の非核化や人権問題という米国の最優先事項をどのぐらい重視するかが問題だ」みたいなことが書いてある。なるほど。
Dealing with North Korea is the dominant strategic element of the U.S.-South Korean relationship. The two countries’ coordination over North Korea was exceptionally close under the Lee and Obama Administrations. Bilateral cooperation is expected to work well under President Park, but it remains to be seen whether her calls for a new combination of toughness and flexibility toward Pyongyang will challenge Washington and Seoul’s ability to coordinate their policies. Perhaps most notably, Park has proposed a number of confidence-building measures with Pyongyang in order to create a “new era” on the Korean Peninsula. Two key questions will be the extent to which her government will link these initiatives to progress on denuclearization, which is the United States’ top concern, and how much emphasis she will give to North Korea’s human rights record. Likewise, an issue for the Obama Administration and Members of Congress is to what extent they will support—or, not oppose—initiatives by Park to expand inter-Korean relations.
4月24日には対イラン制裁に関するレポートが出ている。「イランに対する経済制裁は効いているんだけど、イランに核開発を諦めされるまでのダメージを与えているわけじゃない。イランが経済制裁の抜け穴を突くようになり、経済制裁がイラン国民に及ぼす非人道的な効果を宣伝するようになれば、経済制裁の効果は薄れていくかもしれない」なんて分析されています。なるほど、なるほど。
まぁ、詳しい人たちから見れば「当たり前の話じゃん」ってなもんかもしれませんが、私にとっては便利なことこのうえないです。
この日本に関するレポートというのは5月1日に出たもので、このサイトで原文を読むことができます。確かにサマリーの部分を読んだだけでも、
Comments and actions on controversial historical issues by Prime Minister Abe and his cabinet have raised concern that Tokyo could upset regional relations in ways that hurt U.S. interests. Abe is known as a strong nationalist. Abe’s approach to issues like the so-called “comfort women” sex slaves from the World War II era, history textbooks, visits to the Yasukuni Shrine that honors Japan’s war dead, and statements on a territorial dispute with South Korea will be closely monitored by Japan’s neighbors as well as the United States.
なんていう文章が出てくる。
ただ、この日本に関するレポートっていうのは頻繁に出ているもので、今年の2月にも同種のレポートが出ている。(参照) このレポートのサマリーにも同じ文章が出てくるので、別に今なって騒ぐ話でもないような気がします。
というわけで、この報告書を読んだところで日本でも報じられていることばかりだとは思うのですが、この議会調査局のレポートが非常に便利なことに気付きました。だって、日米関係のレポートが日米関係の諸問題について網羅的に記しているわけですから、他のテーマについてもレポートを読めば、どんな問題が懸念されているのかが網羅的に分かるってことじゃないですか。便利。ちなみにウィキペディアによると、CRSは議会予算局(CBO)や会計検査院(GAO)なんかと同じように、議会をサポートするための中立的な組織として知られているようです。
で、試しにこのページから、最近の報告書をあさってみると、4月26日に米韓関係についてのレポートが出ている。で、サマリーを読んでみると、「米韓関係はオバマ大統領と李明博前大統領の時代に最良の状態にあり、朴槿恵大統領に代わってからも良好な関係が続くと思われるが、朴大統領が北朝鮮との対決姿勢と柔軟姿勢のバランスをどのようにとるかは注視せねばならないよ。朝鮮半島の非核化や人権問題という米国の最優先事項をどのぐらい重視するかが問題だ」みたいなことが書いてある。なるほど。
Dealing with North Korea is the dominant strategic element of the U.S.-South Korean relationship. The two countries’ coordination over North Korea was exceptionally close under the Lee and Obama Administrations. Bilateral cooperation is expected to work well under President Park, but it remains to be seen whether her calls for a new combination of toughness and flexibility toward Pyongyang will challenge Washington and Seoul’s ability to coordinate their policies. Perhaps most notably, Park has proposed a number of confidence-building measures with Pyongyang in order to create a “new era” on the Korean Peninsula. Two key questions will be the extent to which her government will link these initiatives to progress on denuclearization, which is the United States’ top concern, and how much emphasis she will give to North Korea’s human rights record. Likewise, an issue for the Obama Administration and Members of Congress is to what extent they will support—or, not oppose—initiatives by Park to expand inter-Korean relations.
4月24日には対イラン制裁に関するレポートが出ている。「イランに対する経済制裁は効いているんだけど、イランに核開発を諦めされるまでのダメージを与えているわけじゃない。イランが経済制裁の抜け穴を突くようになり、経済制裁がイラン国民に及ぼす非人道的な効果を宣伝するようになれば、経済制裁の効果は薄れていくかもしれない」なんて分析されています。なるほど、なるほど。
まぁ、詳しい人たちから見れば「当たり前の話じゃん」ってなもんかもしれませんが、私にとっては便利なことこのうえないです。
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