2011年7月26日火曜日

More Money Than God


読了しました。"More Money Than God"という本で、ヘッジファンドの歴史を描いた本です。ヘッジファンド界の出来事や中心人物のエピソードを中心にした堅苦しくない本。面白かったです。

ヘッジファンド界最初の成功者は、Alfred Winslow Jonesという人だそうです。彼が最初のヘッジファンドを立ち上げたのは1949年。4人の友人から6万ドルを集め、自分自身でも4万ドルを投資します。
で、1968年までの累積のリータンは5000%。1949年の1万ドルが、約20年で48万ドルになった計算です。

それまでは資産を預けるという行為は、財産を保持することが目的で、その預け先はFedelityやPrudentialなんていう会社だったわけですが、Jonesはもっとアグレッシブな運用をしたというわけですね。Jonesの運用は他を圧倒していた。例えば、1965年までの5年間のJonesのリターンは325%。他のファンドは最高でも225%だったそうです。

Jonesの戦略のキモは、空売りとレバレッジ。これらの手法は大恐慌前の1920年代にもあったんだけど、Jonesはそれをリスクコントロールのために使った。上げ相場のときに株を買うだけでなく、価格下落のリスクを空売りでヘッジしながら買いを入れることで、より大きなポジションをとることができる。

とまぁね、こんな話から次から次へと出てくる本です。Jones以外にも、コンドラチェフ波動を投資分析に取り入れたMichael Steinhardt (Steinhardt, Fine, Berkowitz & Company)、ココア市場の分析からefficient-market theoryを否定したHelmut Weymar (Commodities Corporation)、チャート分析から投資家心理を読み取ったMichael Marcus (Commodities Corporation)、ファンダメンタル分析とチャート分析を使い分けり、キャリートレードを始めたりしたBruce Konver (Commodities Corporation)なんていうところから始まって、George Soros (Quantum Fund) とか Julian Robertson (Tiger Management)、 Paul Tudor Jones (Tudor Investment Corporation)とか、LTCMとかルネサステクノロジーとか。あと最近のジョン・ポールソンも。いちいち読み返すのが面倒くさくなってきましたが、いろんな人が登場します。多分、普通の人が知っているような人は全員でてくる。

もともとはソロスがポンドを売り崩したという話が知りたくて、この本を読もうと思ったわけですが、そういう話の本ではなかった。肝心のソロスとポンドの話は、もともとEurope's exchange-rate mechanismという各国通貨の為替レートを安定させる仕組みがあったところに、東西ドイツの統合でドイツ国内での需要拡大がインフレ・金利上昇を生んで、マルク高ポンド安のトレンドになった。イギリスはポンド安を阻止するために金利を引き上げたいんだけど、国内景気が悪いもんだから金利引き上げを見送り。イギリスはそれでも為替は安定させなければならないから無理なポンド買い介入を続けていたんだけど、ドイツのブンデスバンク総裁のHelmut Schlesingerが「欧州各国の通貨制度を見直すべき」と発言したと伝えられて一気にポンド安のトレンドが加速。ソロスはポンド売りを仕掛けて、仕掛けて、徹底的に仕掛けて、大もうけした。とかいう話でした。1992年の話だったと思う。

ちょっと長すぎる本でしたが、これを機に個別の人物にテーマを絞った本を読んでみたりするのもいいかもしれないと思わないこともないこともないです。

ちなみにタイトルにある"God"というのは、JPモルガンさんのことだったと思います。