2019年12月3日火曜日

“THE PRIZE: The Epic Quest for Oil, Money & Power”

“THE PRIZE: The Epic Quest for Oil, Money & Power”を読みました。Daniel Yerginが1990年に出した本です。日本でも「石油の世紀」のタイトルで1991年に出版されました。ピュリッツァー賞を取った超有名な本です。

ペーパーバックで928ページある長い本。以前、「長いなぁ」と思った”The Sleepwalkers”が736ページですから、おそらく英語の本として自己新記録です。読み終わるのに9カ月を要しました。

ただ、めちゃくちゃ面白いです。今まで読んでなかったのが恥ずかしくなるぐらい。未読の人は今すぐ読んだ方がいい。米国で初めて商業用途で石油の開発が始まった1850年代から、湾岸戦争が始まった1990年ごろまでの石油産業の歴史をたどった本です。それをただ単に時系列でたどるのではなく、石油産業の開発に関わった様々な人物の面白エピソードを交えながら綴っていくという形式で非常に読みやすい。

一言でまとめると、1850年代にアメリカで初めて見つかった原油が、インドネシアなんかでも開発されるようになり、灯りをとるための燃料から暖房や内燃機関に使われるようになり、そうした石油を運ぶための海運ルートが築かれ、それが第一次世界大戦の戦況を左右するにまでなって、中東やアフリカでの原油開発につながり、第二次世界大戦なんかでは日本なんかも原油を求めて南進したりして、戦後は原油ナショナリズムがますます強まり、原油を開発するメジャーと産油国政府の対立が激しくなり、北海での油田開発なんかが進んだり、OPECが作られたりしているうちに、Yom Kippur Warを機に第1次オイルショックが起こり、さらにはイラン革命きっかけで第2次オイルショックも起こり、そのうち資源保全とか環境とかの観点から脱原油を目指す動きも本格化してきて、原油価格が下がったりなんかもして、そんな中で、イラン・イラク戦争で勝ったサダム・フセインがアラブの盟主となるべくクウェートに侵攻したりなんかして、もうわやですわ、という話です。

で、こうしたストーリーの中で出てくる登場人物が滅茶苦茶多彩です。多彩すぎて書き出すのは無理なんですけど、日本のアラビア石油の創業者で「アラビア太郎」の異名で有名っちゃぁ有名な山下太郎も出てくるぐらいですから、かなりの範囲をカバーしているものと思われます。日本の満州進出から太平洋戦争に至るまでの経緯もかなり詳しく書かれています。

面白かったです。もう一度読みたい。