2012年11月26日月曜日

Pivot to Asia

オバマ政権はアジアシフトを志向しているとかいうんだけど、なんでそんなことをしているのかよく知らない。TPPなんかは成長著しいアジア市場向けの輸出を増やして景気を回復させようっていうことらしいけど、それだけが理由なのか不安なので調べておいた。

クリントン国務長官がForeign Policyの2011年11月号のに寄稿した論文"America's Pacific Century"によると、米国はこれまでイラクとかアフガンにリソースをつぎ込んできたけど、イラクの戦争は落ち着いて、米軍はアフガニスタンから撤退することになった。そこでこれからはリソースを効率的に使っていかなければならないんだそうです。その意味で、アジア太平洋地域に、外交面でも経済面でも関与していくことが大事だという判断らしい。

As the war in Iraq winds down and America begins to withdraw its forces from Afghanistan, the United States stands at a pivot point. Over the last 10 years, we have allocated immense resources to those two theaters. In the next 10 years, we need to be smart and systematic about where we invest time and energy, so that we put ourselves in the best position to sustain our leadership, secure our interests, and advance our values. One of the most important tasks of American statecraft over the next decade will therefore be to lock in a substantially increased investment -- diplomatic, economic, strategic, and otherwise -- in the Asia-Pacific region.

なんでアジアが大事かというと、アジア市場への参入によって米国の輸出が増やすことができるからです。だからアジア太平洋地域の安全を確保することが重要になる。南シナ海の航行の自由の確保や、北朝鮮の核開発を阻止、アジア太平洋地域における軍事活動の透明性を高めることが大切なわけです。

Harnessing Asia's growth and dynamism is central to American economic and strategic interests and a key priority for President Obama. Open markets in Asia provide the United States with unprecedented opportunities for investment, trade, and access to cutting-edge technology. Our economic recovery at home will depend on exports and the ability of American firms to tap into the vast and growing consumer base of Asia. Strategically, maintaining peace and security across the Asia-Pacific is increasingly crucial to global progress, whether through defending freedom of navigation in the South China Sea, countering the proliferation efforts of North Korea, or ensuring transparency in the military activities of the region's key players.

なんかそのまんまですね。アメリカは財政的に厳しくて、Budget Control Actなんかでは国防費も含めて一律削減ってこともありえる。米国内では「海外に関与すべきじゃない」という声もあるわけですが、それでもヒラリーは「関与しないわけにはいかない」(we cannot afford not to)としています。その理由は、やっぱり、米国企業にとって新しい市場を開拓し、核拡散を防止し、商取引や航行のためにシーレーンの安全を確保することが米国の繁栄と安全の確保にとって重要だからです。

With Iraq and Afghanistan still in transition and serious economic challenges in our own country, there are those on the American political scene who are calling for us not to reposition, but to come home. They seek a downsizing of our foreign engagement in favor of our pressing domestic priorities. These impulses are understandable, but they are misguided. Those who say that we can no longer afford to engage with the world have it exactly backward -- we cannot afford not to. From opening new markets for American businesses to curbing nuclear proliferation to keeping the sea lanes free for commerce and navigation, our work abroad holds the key to our prosperity and security at home. For more than six decades, the United States has resisted the gravitational pull of these "come home" debates and the implicit zero-sum logic of these arguments. We must do so again.

だからこそ、安定化してきたイラクやアフガニスタンから、今後重要性が増してくるアジア太平洋にリソースを移していこうということです。南シナ海では中国が周辺国と領有権争いをしているし、東シナ海では日本との尖閣問題もあるわけですしね。


でも、こうしたアメリカのスタンスは間違っているんじゃないのという指摘もあります。Foreign Affairsの2012年11・12月号にボストン大学のローバト・ロス(Robert Ross)教授のThe Problem Wiht the Pivotという文書が載っていますが、これは、中国が南シナ海や東シナ海で軍事活動を活発化せているのは国内のナショナリズムを落ち着かせるためで、中国の軍事的な野心や脅威が高まっているわけではないのに、アメリカが軍事力のアジア太平洋シフトを加速させてしまった結果、かえって中国との緊張関係を強めてしまっているという内容です。

Beijing’s tough diplomacy stemmed not from confidence in its might -- China’s leaders have long understood that their country’s military remains significantly inferior to that of the United States -- but from a deep sense of insecurity born of several nerve-racking years of financial crisis and social unrest. Faced with these challenges, and no longer able to count on easy support based on the country’s economic growth, China’s leaders moved to sustain their popular legitimacy by appeasing an increasingly nationalist public with symbolic gestures of force.

Consider China’s behavior in such a light, and the risks of the pivot become obvious. The new U.S. policy unnecessarily compounds Beijing’s insecurities and will only feed China’s aggressiveness, undermine regional stability, and decrease the possibility of cooperation between Beijing and Washington. Instead of inflating estimates of Chinese power and abandoning its long-standing policy of diplomatic engagement, the United States should recognize China’s underlying weaknesses and its own enduring strengths. The right China policy would assuage, not exploit, Beijing’s anxieties, while protecting U.S. interests in the region.


中国と米国の動きとして挙げられている具体例はこんな感じです。

■中国の実力とナショナリズム抑制のための対外強硬姿勢
・中国はこの10年、米国の脅威となるような艦船を配備していない。中国がアメリカに対抗する手段は1990年半ば以降に配備されたディーゼル潜水艦ぐらいのものだ。

・中国の陸軍、空軍の装備のうち現代的といえるものは30%未満。潜水艦でも55%しか現代的といえない。中国軍は米軍には対抗しえない。

・中国はリーマンショック後の世界経済の低迷と無縁ではない。

・中国国内の暴動は2008年の12万件から、2010年には18万件に増えている。

・中国政府はこうした中国の実力や問題点を認識しているが、多くの中国人はこれまでの経済成長で西側に対抗できるという自信を深め、ナショナリズムが高まっている。

・2010年1月に米国が台湾に武器を売った際、中国はこの取引に関連する米国企業に経済制裁を実施した。

・2010年9月の尖閣諸島周辺で中国漁船が海保の船に衝突した際も、反日活動が強まった。

・こうした対外的な強硬姿勢はナショナリズムを抑えることを目的としている。


■中国の対外強硬姿勢に対する米国の対応
・米国は1997年に初めて潜水艦をヨーロッパからグアムに移したときからアジア太平洋シフトを進めている。

・2009、10年の中国の対外強硬姿勢で、アジアの国々は「米国は中国に対抗できるのか」と疑問に思い始めた。

・オバマ政権は過去の政権によるアジア太平洋シフトを加速させた。例えば、日本との合同演習の拡大、フィリピンへの武器売却、オーストラリアへの海軍配備、インドネシア、ニュージーランドとの協力関係の改善とか。

・これまでの政権は、米国が航行の自由を重視することを明確にするだけでアジア太平洋の紛争悪化を抑制できたけど、クリントン国務長官は2010年にハノイで、フィリピンやベトナムをサポートすることを宣言した。

・ブッシュ政権は在韓米軍の40%を引き上げるなど、韓国の米軍を縮小したけど、オバマ政権は韓国との軍事演習の拡充や新たな防衛協定の締結、在韓米軍の増強などの対応をとっている。

・米国はこれまで中国を刺激しないためにベトナムとの協力関係拡大には慎重だったが、オバマ政権はベトナムとの軍事演習や防衛協定締結の動きを進めている。


■米国の対応への中国の反応
・こうした米国の動きを中国政府は快く思っていない。

・その結果、中国は北朝鮮の非核化に消極的になり、北朝鮮への経済支援を強めるようになった。

・2011年、中国はベトナムによる海底調査を妨害した。

・中国は南シナ海での原油採掘を発表している。

・中国は2006年~10年の間、国連安保理での対イラン制裁決議に賛成しているが、2012年の決議では拒否権行使をちらつかせ、日米欧がイランへの経済制裁を強めるなか、イランとの間で新たなイラン産原油購入契約を結んだ。


こういう分析が的を得たものかどうかは分かりませんが、こんな風に考える人もいるということで。

写真はクリントン国務長官。最近、三輪明宏化している気がします。

2012年11月23日金曜日

1993年07月17日(9日目) シベリア鉄道

1993年07月17日(9日目) 晴れ

Jにシャーペンを借りる。朝から何もすることがなく、通路に出るとコワイにーちゃんもいるし、どーしようもなく、ひたすら経ゼミを読む。

食堂車に昼食をとりに行くと、何故か青シャツのおじさんと相席するようにウェイトレスに言われて、おじさんの前に座る。何とかボイルドチキンとサラダとジュースを頼んだが、このチキンがまだ生でかたくて味がない。フォークが曲がってしまうほどである。しばらくすると、コワイにーちゃんの1人、指なしの男がなぜかおじさんの隣に座る。Jがズドラーストビーチェをかますと、にーちゃんは3人に握手を求めてきた。日本人2人はわけが分からなかったが、おじさんは非常に嫌な顔をしていた。中途半端な昼飯を終え、コンパートメントに戻る。その後、お昼寝。

止まった駅でアイスクリームを買おうとするが、5万ルーブルで200ルーブルのアイスを買おうとするおっさんに阻まれて玉砕。腹を立てる。なんだかんだで晩飯のフライドエッグとボルシチを食った。あと、中国の予定を立てたりして討論会に入る。ガンの告知からマスコミのあり方まで幅広い議論であったが、結局、「悪いことはしない」ぐらいである。国連だってガリの思惑で動いたりするんだから、誰も信じられないではないか。一人ひとりが良く生きることが大事。そのことをみんなに知らせるべく生きる私だ。うーん、かっこいい。イェイ。


★食堂車のくだりを読み返しながら、「何が起こるのか」とドキドキしましたが、結局何も起こらないという衝撃展開でした。
★最後の部分は、何がかっこいいのが自分でも分かりません。

1993年07月16日(8日目) バイカル湖、イルクーツク、シベリア鉄道

1993年07月16日(8日目) 晴れ

今日はNにボールペンを借りる。今日、朝起きて飯を食った後、バイカル湖を眺めながら歌ったりする。総曲数6曲。Fool On The Planet, Wonderful Tonight, Winter Comes Around, Lovin' You, はだかの気持ち、カルアミルクという豪華メドレーである。部屋に戻って、しばらくしてからロビーで絵ハガキを書いたのだが、面倒くさい。しかも綺麗な絵なハガキは手元においておきたいというジレンマにはまってしまい苦労する。

一時間遅れのバスに乗り込み、イルクーツクに向かうが、寝てしまう。インツリーストホテルで絵ハガキを出して食料を買い込むつもりが、6時に閉まるはずのPOST OFFICEが6時前に閉まっていて出せない。ロシア人は実にいーかげんで、ホテル内のキヨスクの売り子がすぐにいなくなってしまい、なかなか買えない。困る。

JがFAXを送って、お釣りをなかなかもらえないでいるうちに鉄道の時間が迫り、私なんぞ小心者だからビビってしまう。困ったもんだ。

列車に乗り込んでから、ホテルで買ったポテトスティックを食べるが、バター臭い。どーもバリバリの日本人である私は外国の食事が向かないらしい。困る。

更に困るのは隣のコンパートメントのおっちゃんはコワイ人らしい。Nの話では、3人で大声で話ながら吸い終わったタバコを窓に投げつけるような人らしい。しかも、イレズミだの、ブレスレッドだの、やたらと腕がにぎやかだ。前の列車のあたたかさが懐かしい。困ったもんだ。


★わざわざバイカル湖まで行って、歌って帰ってきただけのようです。ただ、このとき歌っていて非常に気持ちよかったことは覚えています。

2012年11月18日日曜日

アメリカはどうすんの?

オバマ政権の対応も調べてみた。

オバマ大統領は就任から半年経った2009年7月、カイロ大学で演説しています。(参照) ここでオバマ大統領は、イスラエルとパレスチナの双方の事情に理解を示しながらも、唯一の解決方法は、イスラエルとパレスチナが平和に暮らせる2つの国を作るべきだとしています。

For decades then, there has been a stalemate: two peoples with legitimate aspirations, each with a painful history that makes compromise elusive. It's easy to point fingers -- for Palestinians to point to the displacement brought about by Israel's founding, and for Israelis to point to the constant hostility and attacks throughout its history from within its borders as well as beyond. But if we see this conflict only from one side or the other, then we will be blind to the truth: The only resolution is for the aspirations of both sides to be met through two states, where Israelis and Palestinians each live in peace and security. (Applause.)

これを受けて行われたのが、前のエントリでまとめたネタニヤフの演説で、パレスチナの武装解除とかいろいろ条件を付けてはいるものの、two-state solutionを一応は支持しています。

In my vision of peace, there are two free peoples living side by side in this small land, with good neighborly relations and mutual respect, each with its flag, anthem and government, with neither one threatening its neighbor's security and existence.

ただし、パレスチナ側からみると、イスラエルがtwo-state solutionを支持しているとは思えない。アッバス大統領は9月の国連演説で、結局のところ、イスラエルはtwo-state solutionを拒絶しているのだと言っています。

There can only be one understanding of the Israeli Government's actions in our homeland and of the positions it has presented to us regarding the substance of a permanent status agreement to end the conflict and achieve peace. That one understanding leads to one conclusion: that the Israeli Government rejects the two-State solution.

パレスチナはtwo-state solutionとはオスロ合意に基づいて1967年の6日間戦争前の国境線を尊重するものであるとしています。そしてイスラエルが嘆きの壁とか聖墳墓教会とか岩のドームがある東エルサレムでの入植活動を続けていることを許すことができないということらしい。パレスチナは東エルサレムを首都として独立することを望んでいるとのことです。

The core components of a just solution to the Palestinian-Israeli conflict do not require effort to discover, but rather what is needed is the will to implement them. And marathon negotiations are not required to determine them, but rather what is needed is the sincere intention reach peace. And those components are by no means a mysterious puzzle or intractable riddle, but rather are the clearest and most logical in the world. This includes the realization of the independence of the State of Palestine, with East Jerusalem as its capital, over the entire territory occupied by Israel since 1967, and the realization of a just, agreed solution to the Palestine refugee issue in accordance with resolution 194 (III), as prescribed in the Arab Peace Initiative.

イスラエルは直近でも、東エルサレムでの入植活動を継続しています。(参照) イスラエルにすれば、東エルサレムを含むヨルダン川西岸は1947年の第1次中東戦争後はヨルダン領だったけれど、6日間戦争の結果、イスラエルがヨルダン川西岸を占領して、その後、1994年のイスラエル・ヨルダン平和条約でイスラエルとヨルダンの国境線がヨルダン川ということになったのだから、東エルサレムはイスラエルのものだということでしょう。一方、パレスチナにすれば、6日間戦争での占領地はオスロ合意で無効になっているのだから、東エルサレムはイスラエル領であるはずはないということでしょう。


で、アメリカなんですが、2011年5月にオバマ大統領が声明を発表して、1967年の国境線が交渉の土台となるべきだとしています。パレスチナ寄りっぽいですね。ただし、"with mutually agreed swaps, so that secure and recognized borders are established for both states"としているので、東エルサレムをどうするとかいうことは交渉すればいいんじゃないのということかもしれません。

So while the core issues of the conflict must be negotiated, the basis of those negotiations is clear: a viable Palestine, a secure Israel. The United States believes that negotiations should result in two states, with permanent Palestinian borders with Israel, Jordan, and Egypt, and permanent Israeli borders with Palestine. We believe the borders of Israel and Palestine should be based on the 1967 lines with mutually agreed swaps, so that secure and recognized borders are established for both states. The Palestinian people must have the right to govern themselves, and reach their full potential, in a sovereign and contiguous state. (参照)

そしてイスラエルには自衛の権利があるとして、イスラエルのヨルダン川西岸からの撤退はパレスチナが非武装化されることが前提だとしています。このあたりはイスラエル寄りです。

As for security, every state has the right to self-defense, and Israel must be able to defend itself -– by itself -– against any threat. Provisions must also be robust enough to prevent a resurgence of terrorism, to stop the infiltration of weapons, and to provide effective border security. The full and phased withdrawal of Israeli military forces should be coordinated with the assumption of Palestinian security responsibility in a sovereign, non-militarized state. And the duration of this transition period must be agreed, and the effectiveness of security arrangements must be demonstrated.

エルサレムの将来とパレスチナ難民の扱いについては協議のなかで解決すればいいということのようです。

These principles provide a foundation for negotiations. Palestinians should know the territorial outlines of their state; Israelis should know that their basic security concerns will be met. I’m aware that these steps alone will not resolve the conflict, because two wrenching and emotional issues will remain: the future of Jerusalem, and the fate of Palestinian refugees. But moving forward now on the basis of territory and security provides a foundation to resolve those two issues in a way that is just and fair, and that respects the rights and aspirations of both Israelis and Palestinians.

つまり、とりあえず1967年の国境線を前提とすることと、パレスチナの非武装化とヨルダン川西岸からの撤退について合意する。そのうえで、東エルサレムとパレスチナ難民については協議しましょうと呼びかけているわけですね。


最近のイスラエルによるガザ攻撃に関しては、ネタニヤフ首相に対して「自己防衛の権利」を認めるとともに、事態を悪化させないための方策についても協議しています。(参照) ただし、事態を悪化させない云々は、ハマスが攻撃を止めることを条件としてということのようで、これも2011年5月の声明の内容に沿ったものだといえる気がします。

MR. RHODES: Yes. Yesterday the President spoke with Prime Minister Netanyahu. He’s spoken with him each [nearly every] day since this situation unfolded. He reaffirmed again our close cooperation with the Israelis. They discussed the Iron Dome system, which the U.S. has funded substantially over the last several years, and which has been successful in stopping many of the rockets that have been fired out of Gaza. They also addressed the fact that they’d like to see a de-escalation provided that, again, Hamas ceases the rocket fire, which precipitated this conflict.(参照)

イスラエルは根にもっている

では、なんでイスラエルはヨルダン川西岸から撤退しないのか。以前のエントリイランといえばイスラエルでまとめたネタニヤフ首相の2012年の国連演説では、「パレスチナは武装解除したうえで、イスラエルをユダヤ人の国だと認めなければならない」と言っていたぐらいだったので、調べてみたところ、ネタニヤフ首相は2009年にバル=イラン大学で行った演説というのを見つけた。(参照)

これによると、どうもイスラエルは建国直後にアラブ諸国から総攻撃を受けたことを根にもっているらしい。イスラエルはなんだかんだでアラブ5カ国を撃退したわけですが、心には深いトラウマが刻まれていたのです。なんて可哀想な子。さらに1967年の第3次中東戦争(6日間戦争)も、他の国がイスラエルを締め付けた結果だとしています。

In 1947 when the United Nations proposed the Partition Plan for a Jewish state and an Arab state, the entire Arab world rejected the proposal, while the Jewish community accepted it with great rejoicing and dancing. The Arabs refused any Jewish state whatsoever, with any borders whatsoever.

Whoever thinks that the continued hostility to Israel is a result of our forces in Judea, Samaria and Gaza is confusing cause and effect. The attacks on us began in the 1920s, became an overall attack in 1948 when the state was declared, continued in the 1950s with the fedaayyin attacks, and reached their climax in 1967 on the eve of the Six-Day War, with the attempt to strangle Israel. All this happened nearly 50 years before a single Israeli soldier went into Judea and Samaria.

で、エジプトとヨルダンはイスラエルと平和条約を結んだから友好的な付き合いができるようになった。でも、パレスチナはそうじゃないんだと。

また、イスラエルがヨルダン川西岸から撤退すれば、パレスチナだって友好的になるんだよという指摘に対しては、「何度も撤退しようとしたけど、その度にイスラエルに対するテロが増えるじゃないか」と反論します。「2005年にガザから撤退して、入植地も引き上げたけれど、結局、ガザではハマスが勢力を増して、イスラエルにロケット弾を撃ち込んでくることになったじゃないか」などと言っています。

A great many people are telling us that withdrawal is the key to peace with the Palestinians. But the fact is that all our withdrawals were met by huge waves of suicide bombers.

We tried withdrawal by agreement, withdrawal without an agreement, we tried partial withdrawal and full withdrawal. In 2000, and once again last year, the government of Israel, based on good will, tried a nearly complete withdrawal, in exchange for the end of the conflict, and were twice refused.

We withdrew from the Gaza Strip to the last centimeter, we uprooted dozens of settlements and turned thousands of Israelis out of their homes. In exchange, what we received were missiles raining down on our cities, our towns and our children. The argument that withdrawal would bring peace closer did not stand up to the test of reality.

だから、パレスチナは「イスラエルがユダヤ人の国である」ということも認めてないんでしょ? となる。ここで聴衆からは拍手です。

Even the moderates among the Palestinians are not ready to say the most simplest things: The State of Israel is the national homeland of the Jewish People and will remain so. (Applause)

あと、パレスチナ難民はイスラエルから出て行ってもらいたい。だって、イスラエルはユダヤ人の国なのだから。難しい問題かもしれないけれど、イスラエルは世界中から数十万人のユダヤ人を受け入れてきたんだから、アラブ諸国にも同じことができないわけがないとも言っています。

さらにネタニヤフ首相は「パレスチナの武装解除」も求めている。そうしないと、ガザで実際に起こったようにハマスみたいなグループがパレスチナを支配する可能性があるからです。イスラエルはパレスチナの武装解除が確実に行われない限り、パレスチナ国家に同意することはないと断言しています。

We cannot be expected to agree to a Palestinian state without ensuring that it is demilitarized. This is crucial to the existence of Israel - we must provide for our security needs.

そうなれば、イスラエルとパレスチナが仲良く暮らせる日がくる。別にパレスチナをイスラエルの支配下に置こうとしているわけじゃないんだそうです。

But, friends, we must state the whole truth here. The truth is that in the area of our homeland, in the heart of our Jewish Homeland, now lives a large population of Palestinians. We do not want to rule over them. We do not want to run their lives. We do not want to force our flag and our culture on them. In my vision of peace, there are two free peoples living side by side in this small land, with good neighborly relations and mutual respect, each with its flag, anthem and government, with neither one threatening its neighbor's security and existence.


もの凄く強い軍隊を持っていて、核兵器も持っているだろうとされているイスラエルが涙ながらに、「お前らが俺のことを嫌っているから、俺だってお前らを嫌いなんだ」と訴えてるような、深いトラウマを背負った不良少年のような、そんなイメージですかね。それもこれも誕生直後に受けた虐待のせいです。難しい子だなぁ。

ヨルダン川西岸もややこしいぞ

ヨルダン川西岸地区について調べるために、イスラエル建国から遡ってみた。

イスラエルの建国前はイギリスの二枚舌外交とか三枚舌外交とかそういうのがあったのだと思う。でも、なんだかんだいって、1947年に国連決議181が採択される。これはイギリスが統治していたパレスチナのうち、56%をユダヤ人の土地、42%をパレスチナ人の土地と定め、エルサレムは国連の統治下に置くという内容です。

で、これをユダヤ人は歓迎して、1948年5月、国連決議181に基づいてイスラエルの建国が宣言されます。

ACCORDINGLY WE, MEMBERS OF THE PEOPLE'S COUNCIL, REPRESENTATIVES OF THE JEWISH COMMUNITY OF ERETZ-ISRAEL AND OF THE ZIONIST MOVEMENT, ARE HERE ASSEMBLED ON THE DAY OF THE TERMINATION OF THE BRITISH MANDATE OVER ERETZ-ISRAEL AND, BY VIRTUE OF OUR NATURAL AND HISTORIC RIGHT AND ON THE STRENGTH OF THE RESOLUTION OF THE UNITED NATIONS GENERAL ASSEMBLY, HEREBY DECLARE THE ESTABLISHMENT OF A JEWISH STATE IN ERETZ-ISRAEL, TO BE KNOWN AS THE STATE OF ISRAEL.(参照)

ところが、これを他のアラブ諸国は認めなかった。まさに独立を宣言したその日に、レバノン、シリア、トランスヨルダン、イラク、エジプトの5カ国がイスラエルに対して宣戦を布告します。ところが生まれたばかりのイスラエルは、この5カ国をやっつけてしまう。恐ろしい子です。その結果、イスラエルはパレスチナの80%を領有することになった。あと、ヨルダン川西岸地区(東エルサレムを含む)はトランスヨルダンのもの、ガザ地区はイスラエルのもの。このとき引かれたグリーンラインが、今でも地図とかで見かけるイスラエルとパレスチナ自治区の境界線になります。

アラブ側は1964年にパレスチナ解放機構(PLO)を設立。イスラエルへのゲリラ闘争を始めます。これに対してイスラエルは1967年6月、エジプト、ヨルダン、シリア、イラクに攻撃を加えて、たったの6日間でヨルダン川西岸、ガザ、シナイ半島、ゴラン高原を占領してしまう。強い軍隊っていうものはあるもんです。

ところがこれには当然、国際社会が大反発しまして、1967年11月に国連安保理決議242が採択される。イスラエルに対して、直近の紛争で占領した地域から撤退せよという内容です。しかし、このうちシナイ半島は1978年にエジプトに返還されましたものの、その他のヨルダン川西岸、ガザ、ゴラン高原ではイスラエルによる占領が続いた。ここから先は、2つ前のエントリ「ガザとハマスとイスラエル」の内容で、1993年のオスロ合意でイスラエルはヨルダン川西岸とガザをパレスチナの領地として認めたけれど、ガザ地区の占領は2005年まで続いた。

で、暢気な私は「ヨルダン川西岸からはイスラエル軍は撤退していないの? オスロ合意ではパレスチナの土地だと認めたんでしょ?」なんて思ったわけですが、これはもう当然、撤退していないわけです。今年9月にパレスチナ自治区のアッバス大統領が国連で行った演説によると、ヨルダン川西岸を占領しているイスラエルは、ユダヤ人の入植をどんどん進め、移動の自由を制限し、自治政府による市民へのサービス提供を妨害し、農地の耕作や灌漑も邪魔しているらしい。ヨルダン川西岸の60%の地域は、イスラエルによる絶対的な支配にさらされている。

At the same time, the occupying Power continues to tighten the siege and impose severe restrictions on movement, preventing the Palestinian National Authority (PNA) from implementing vital infrastructure projects and providing services to its citizens, who are also being prevented from cultivating their land and deprived of water for irrigation. It is also obstructing the establishment of agricultural, industrial, tourism and housing projects by the private sector in vast areas of the Occupied Palestinian Authority, which are classified as areas subject to the absolute control of the occupation, which encompasses approximately 60% of the West Bank. The occupying Power continues to deliberately demolish what the PNA is building, projects funded by donor brethren and friends, and destroying PNA projects involving the building of roads, simple homes for its citizens and agricultural facilities. In fact, over the past 12 months, the Israeli occupying forces demolished 510 Palestinian structures in these areas and displaced 770 Palestinians from their homes. These illegal measures have caused great damage to our economy and impeded our development programs and private sector activity, compounding the socio-economic difficulties being endured by our people under occupation, a fact confirmed by international institutions.

なんか非道の限りを尽くしているという感じですね。「西岸地区は平和なんですかね」なんて言って申し訳なかった。すまん。

2012年11月16日金曜日

上院は55対45

大統領選と同時に行われた上院選で、メーン州から立候補して当選していた無所属で新人のAngus King上院議員が民主党と連携することを決めました。もう一人の無所属候補であるバーモント州のBernie Sanders上院議員は以前から民主党と連携していますから、上院の勢力図は民主党55(うち民主系無所属2)対、共和党45ということになります。

キング上院議員は民主党とも共和党とも連携を表明しないことも考えたらしいですが、そうなると委員会のメンバーに入れなかったりする可能性もあるので、民主党との連携を表明したとのこと。ただしあくまで独立派であるとの立場も崩しておらず、「共和党の政策に自動的に反対するというわけじゃない」としてます。(参照、APの記事@WP)

ガザとハマスとイスラエル

イスラエルがパレスチナ自治区のガザ地区に攻撃を加えています。なんだかよくわからないので調べておいた。大きな流れは外務省のサイトから。

ガザ地区は1993年9月に調印されたオスロ合意で、ヨルダン川西岸地区とともにパレスチナ自治政府の管轄化におかれた地域です。この合意は、イスラエルとパレスチナがお互いを承認したうえで、5年以内にヨルダン川西岸地区とガザ地区に暫定的なパレスチナ自治政府と評議会(elected Council)を設立することが目的です。1994年5月にはカイロ協定が結ばれて、暫定自治期間は1999年5月までであることを確定。1996年1月に両地区でパレスチナ自治政府長官選挙が行われた。しかしこの年の6月にイスラエルでリクードのネタニヤフ政権が発足すると、イスラエル軍の撤退は遅れがちになって、結局、暫定自治期間が終わってしまう。

1999年5月にイスラエルで労働党のバラク政権が発足して和平プロセスが前進するかに思えたが、リクードのシャロン党首がイスラム教の聖地でもあるエルサレムの神殿の丘を訪問したことをきっかけに、イスラエルとパレスチナの間に大規模な衝突が起こった。このときシャロンを警備するために数百人の武装警官が配備されており、それに対して一部のパレスチナ人が石を投げたことがきっかけだったらしい。(参照、NYT) 2001年にそのシャロンが首相になると、イスラエルとパレスチナの紛争は激化。2002年にはイスラエルがパレスチナ過激派の侵入を阻止するために西岸地区を取り囲むように壁を作ることを決めた。

2004年に死亡したアラファト・パレスチナ自治政府長官の後を継いだマフムード・アッバースは、2005年1月にパレスチナ自治政府の大統領に就任し、和平実現に向けて動き出す。この年の2月には、エジプトのムバラク大統領、ヨルダンのアブドラ国王、パレスチナ自治政府のアッバース大統領、イスラエルのシャロン首相による首脳会談で軍事活動の停止が合意され、9月にはイスラエル軍がガザから撤退した。

しかし2006年1月のパレスチナ立法評議会選挙では、イスラエルへの武力闘争継続を掲げるハマスが多数を占め、ハニーヤ首相が就任。ガザ地区でイスラエル兵士が拉致される事件が起きた。イスラエルのオメルト政権はこれを機にガザ地区に侵攻。さらにパレスチナ内部でもファタハとハマスの抗争が激しくなり、2007年3月にアッバース大統領主導でハマスのハニーヤ首相による非ハマス系の閣僚を登用した挙国一致内閣が発足するが、6月にはハマスがガザ地区を武力で制圧。アッバース大統領はハニーヤ首相を罷免して、ファイヤード首相が任命された。


で、そんなハマス主導のガザ地区とイスラエルの間ではずっと争いが続いていた。2008年12月から翌年1月には、ハマスによるロケット弾攻撃への報復としてイスラエルが空爆、地上侵攻を実施。1400人のパレスチナ人が死んだ。イスラエルでは2009年、リクードのネタニヤフ氏が首相として連立政権を運営しています。

今回、イスラエルによるピンポイント爆撃で死亡したハマス軍事部門最高幹部のジャバリ氏は、対イスラエル攻撃をとりしきっていた人で、2006年のイスラエル兵士拉致事件も主導したらしい。今年だけでもガザからイスラエル南部には750ものロケット弾が打ち込まれていたそうで、選挙を前にしたネタニヤフ首相は強硬姿勢をみせる必要があったという分析がなされています。(参照、NYT)

イスラエルにもパレスチナにも和平を実現したい人は決して少なくないみたいですが、「徹底的に戦いたい」と思っているらしい人たちもいるもんだから、いつまでたっても紛争は終わらないという感じでしょうか。2005年9月のイスラエル軍のガザ撤退で、丸く収まればよかったのに、ハマスみたいな人たちが出てくるんですよね。ハマスにはハマスの理屈があるのかもしれませんけど。あと、みんな武器を持ってるんだよな。

ところで西岸地区は平和なんですかね。何かあったら調べておきます。


写真はイスラエル軍の攻撃を受けるガザ地区。

2012年11月15日木曜日

オバマ会見

オバマが14日に会見してます。大統領就任後としては初めてです。(参照)

Fiscal Clifff(財政の崖)については、これまで通り、すでに上院を通過しているMiddle Class Tax Cut Actを共和党多数の下院が通過させれば、とりえあずは年間所得25万ドル以下の世帯への減税は実現できるとしています。

で、25万ドル以上の世帯に対してどうするかについて、記者から「クリントン時代の税率(最高税率で39.6%)にする以外の選択肢は考えていないのか?」という趣旨の質問があったのですが、それに対しては、「新しいアイデアにたいしてはオープンだ」と答えています。

With respect to the tax rates, I just want to emphasize I am open to new ideas. If Republican counterparts or some Democrats have a great idea for us to raise revenue, maintain progressivity, make sure the middle class isn’t getting hit, reduces our deficit, encourages growth, I’m not going to just slam the door in their face. I want to hear ideas from everybody.


共和党のマケイン上院議員とグラハム上院議員が、スーザン・ライス国連大使がリビアの領事館襲撃テロ後の会見で「襲撃はテロではなく、暴動が偶発的に領事館への襲撃につながった」という趣旨の説明していたことを理由に、国務長官への就任に反対すると表明していることについては、人事はまだ決まっていないとしたうえで、「ライス国連大使は当事手元にあった情報に基づいて会見しただけで、それを理由に彼女の評判を貶めるのはとんでもないことだ」と答えています。「襲撃の経緯の分析について文句があるなら、彼女のところじゃなくて、俺んところに来い」「彼女がeasy targetだと思ってんだろう、ゴルァ」的なことも言っています。かっこいいですね。で、ライス国連大使が最適な人材だと判断すれば、国務長官に任命するんだそうです。

As I’ve said before, she made an appearance at the request of the White House in which she gave her best understanding of the intelligence that had been provided to her. If Senator McCain and Senator Graham and others want to go after somebody, they should go after me. And I’m happy to have that discussion with them. But for them to go after the U.N. Ambassador, who had nothing to do with Benghazi, and was simply making a presentation based on intelligence that she had received, and to besmirch her reputation is outrageous.

(中略)

But when they go after the U.N. Ambassador, apparently because they think she’s an easy target, then they’ve got a problem with me. And should I choose, if I think that she would be the best person to serve America in the capacity of the State Department, then I will nominate her. That's not a determination that I’ve made yet.


イランの核開発問題については、外交的な解決が一番だとしています。この数カ月のうちに、イランと国際社会の対話をもって、問題解決を目指したいとのこと。

With respect to Iran, I very much want to see a diplomatic resolution to the problem. I was very clear before the campaign, I was clear during the campaign, and I’m now clear after the campaign -- we’re not going to let Iran get a nuclear weapon. But I think there is still a window of time for us to resolve this diplomatically. We’ve imposed the toughest sanctions in history. It is having an impact on Iran’s economy.

There should be a way in which they can enjoy peaceful nuclear power while still meeting their international obligations and providing clear assurances to the international community that they’re not pursuing a nuclear weapon.

And so, yes, I will try to make a push in the coming months to see if we can open up a dialogue between Iran and not just us, but the international community, to see if we can get this things resolved. I can’t promise that Iran will walk through the door that they need to walk through, but that would be very much the preferable option.


気候変動問題についての質問も出ています。温室効果ガスの排出量増加が気候変動に影響を与えていることについては確信をもっているそうですが、雇用や経済成長を無視するような気候変動対策には賛成できないそうです。

And I am a firm believer that climate change is real, that it is impacted by human behavior and carbon emissions. And as a consequence, I think we've got an obligation to future generations to do something about it.

(中略)

I don't know what either Democrats or Republicans are prepared to do at this point, because this is one of those issues that's not just a partisan issue; I also think there are regional differences. There’s no doubt that for us to take on climate change in a serious way would involve making some tough political choices. And understandably, I think the American people right now have been so focused, and will continue to be focused on our economy and jobs and growth, that if the message is somehow we're going to ignore jobs and growth simply to address climate change, I don't think anybody is going to go for that. I won't go for that.


シリアの反体制派が統一組織である「シリア国民連合」を結成して、フランスがシリアの代表として承認したことについては、オバマはシリア国民連合をシリアの人々の望みを代表するものだとは認めるけれど、亡命政府としてはまだ認めないつもりだそうです。イスラム過激派がシリアの反体制派に加わっているという話もあるので、そう簡単には判断できないようです。

We consider them a legitimate representative of the aspirations of the Syrian people. We’re not yet prepared to recognize them as some sort of government in exile, but we do think that it is a broad-based representative group. One of the questions that we’re going to continue to press is making sure that that opposition is committed to a democratic Syria, an inclusive Syria, a moderate Syria.

We have seen extremist elements insinuate themselves into the opposition, and one of the things that we have to be on guard about -- particularly when we start talking about arming opposition figures -- is that we’re not indirectly putting arms in the hands of folks who would do Americans harm, or do Israelis harm, or otherwise engage in actions that are detrimental to our national security.

2012年11月14日水曜日

不倫将軍ペトレイアス

CIA長官を辞任したペトレイアスさんの不倫問題がややこしいのでまとめておく。タイトルは書いてみたかっただけで、ペトレイアスさんのことを「将軍」と呼ぶかどうかは定かでありません。

事が露見した発端は、フロリダ州タンパに住むジル・ケリーさんが脅迫メールを受け取ったことにあります。ケリーさんは5月に友人のFBI職員に相談。このFBI職員はFBIのサイバー犯罪を担当するチームに事件を持ち込んで、捜査が始まります。

The FBI agent who started the case was a friend of Jill Kelley, the Tampa woman who received harassing, anonymous emails that led to the probe, according to officials. Ms. Kelley, a volunteer who organizes social events for military personnel in the Tampa area, complained in May about the emails to a friend who is an FBI agent. That agent referred it to a cyber crimes unit, which opened an investigation.(参照、WSJ)

この捜査から脅迫メールの送り主はペトレイアス氏の伝記の著者として知られるポーラ・ブロードウェルさんであることが判明。ケリーさんは夫のスコットさんとともにペトレイアス氏夫婦と家族ぐるみの付き合いがあったのですが、ブロードウェルさんはケリーさんとペトレイアス氏が交際していると思ったらしい。で、「なんでブロードウェルさんが怒るの?」と調べてみたところ、ペトレイアス氏とブロードウェルさんが不倫関係にあることが分かった。

この不倫関係はペトレイアス氏もブロードウェルさんも認めています。軍関係者の不倫(adultery)は内規(Uniform Code of Military Justice)によって禁じられています。不倫をしていると、敵対国のスパイとかから、「不倫を家族にばらされたくなければ、機密情報をわが国によこせ」みたいな脅迫を受ける可能性があるからだそうです。

で、ペトレイアス氏がブロードウェルさんに機密情報を漏らしていたかという点なんですが、FBIは早々に「情報漏洩はなかった」と結論づけた。ブロードウェルさんのパソコンから機密情報にあたる可能性のある文書が見つかっているのですが、ペトレイアス氏は「俺から漏れたんじゃない。べつの奴からじゃないの」と言っているらしい。

FBI agents contacted Petraeus, and he was told that sensitive, possibly classified documents related to Afghanistan were found on her computer. He assured investigators they did not come from him, and he mused to his associates that they were probably given to her on her reporting trips to Afghanistan by commanders she visited in the field there. The FBI concluded there was no security breach.(参照、APの記事@シカゴトリビューン)

ただ、ブロードウェルさんが機密情報を握っていた可能性はある。ブロードウェルさんは10月にデンバー大学で行った講演で、9月11日のリビアでの領事館襲撃テロについて、「CIAは領事館でリビアの武装勢力のメンバーを拘束していた。襲撃の目的は彼らを解放することにあった」と話している。CIA側は「そんなことしてないしー」とコメントしていますが、もしかしたら機密情報を知りえるブロードウェルさんの言っていることが正しくて、情報漏洩や領事館警備のまずさを認めたくないCIAが虚偽のコメントをしているのかもしれない。

"I don't know if a lot of you have heard this, but the CIA annex had actually taken a couple of Libyan militia members prisoner and they think that the attack on the consulate was an effort to get these prisoners back," Broadwell said.

A senior intelligence official told CNN on Monday, "These detention claims are categorically not true. Nobody was ever held at the annex before, during, or after the attacks."(参照、CNN)

ペトレイアス氏の辞任は9日。15日にはリビアでの領事館襲撃事件について上院で証言する予定だった。やましいところがあるペトレイアス氏は議会で証言したくなかったんでしょう。

で、事の発端となったケリーさんなんですが、この方もアフガニスタン駐留国際治安支援部隊(ISAF)のアレン司令官と不適切なメールを交換していたことが分かっています。なんか2万から3万ページ分の情報を交換していたとのことで、国防省による捜査が始まっています。ケリーさんは軍関係のボランティアイベントでアレン氏とペトレイアス氏と知り合った。両氏はケリーさんと家族ぐるみの付き合いで、ケリーさんのtwin sisterが関わった親権争いで証言するほどだったそうです。

Kelley had gotten to know both Petraeus and Allen as a volunteer setting up social events at MacDill Air Force Base outside Tampa, headquarters of U.S. Central Command.

The relationship was evidently close enough that both men intervened in a child custody battle involving Kelley's twin sister, Natalie Khawam.(参照、ロイター)

この不適切な交信問題の結果、アレン氏は北大西洋条約機構(NATO)欧州連合軍最高司令官への転出が凍結された。ISAF司令官には留任。

あと、FBIによる捜査が少なくとも夏には始まっていたのに、議会に対する正式な通告が大統領戦後までなかったことに議会が怒っています。CIA長官の不倫は機密情報の漏洩につながる恐れがある重大案件なのだから、捜査でペトレイアス氏の名前が浮かんだ時点で議会に報告すべきだというわけです。一方、FBIは「早い段階で情報漏洩はなかったと分かったので、議会には報告しなかった」としています。

上院のIntelligence Committeeのダイアン・ファインスタイン(Dianne Feinstein)委員長は、ペトレイアス氏に議会証言させるように求めるとともに、FBIが捜査を通告しなかったことに憤っています。(参照、CNN)

ちなみに、最初にケリーさんから相談を受けたFBI職員は捜査自体からは外された。で、FBIの上層部が事件を闇に葬り去ろうとしているんじゃないかと恐れて、共和党のデービッド・ライカルト(David Reichert)下院議員に情報提供しています。ライカルト下院議員はFBI職員に、下院の多数党院内総務のエリック・カンター(Eric Cantor)下院議員に電話するようにアレンジしています。10月27日のことです。でも、カンター院内総務は自分のスタッフにFBIに連絡するように言っただけで、「情報源が確かではない」として、ジョン・ベイナー(John Boehner)下院議長らには連絡しなかった。(参照、ABC)

大統領選の最中にFBI職員がCIA長官のスキャンダルを捜査しているんですよ。で、FBI上層部から捜査から外れるように言われる。なんとか捜査を進めたいとして議員に接触するんだけれど、議員がバカで反応してくれない。ハリウッド映画なら、どんな展開になったでしょうね。っていうか、このFBI職員って、めちゃくちゃヒーロー気分になったんじゃないだろうか。

まだまだ事件は進行中ですが、これまでのタイムラインが、CNNのサイトにあります。

2012年11月12日月曜日

ブッシュ減税終了とバフェットルール


オバマ大統領が再選されて、次はFiscal Cliff(財政の崖)への対応です。ブッシュ減税の終了による消費の下押しと、Budget Control Actで定められた予算規模の自動的なカットなどが景気を下押しすると予想されているわけですが、オバマとしてはどうしようとしているのか調べておいた。歳出カットの方はよく分からないので、ブッシュ減税の終了なんかについて。

まずブッシュ減税とは何ぞやということですが、これは2001年のTax Relief, Unemployment Insurance Reauthorization, and Job Creation Act(EGTRRA)と、2003年のJobs and Growth Tax Relief Reconciliation Act(JGTRRA)で実施された減税措置で、所得税やキャピタルゲイン課税と配当課税の税率が引き下げられ、所得税の最高税率は35%、キャピタルゲイン課税の最高税率は15%になった。2012年末にこのブッシュ減税が失効すると、所得税の最高税率はブッシュ減税前の39.6%、キャピタルゲイン課税の最高税率は20%に戻ってしまいます。配当課税は普通の所得としてカウントされることになる。

で、オバマとしては選挙中から中間層への減税は続けて、年間所得25万ドル以上の世帯には増税しますよと約束してきた。(参照) ということで11月9日の演説では、「とりあえず25万ドル未満の世帯には減税を延長することには異論はないはずでしょ?」と共和党に呼びかけています。

民主党はすでに7月25日、25万ドル未満の世帯への減税を延長するMiddle Class Tax Cut Act(参照1)(参照2)を上院で通しています。tax bracketを修正して、25万ドル未満の減税を継続、25万ドル以上は増税しようという内容です。だからオバマは11月9日の演説では、「共和党さえ賛成してくれれば、協議に時間はかからないよね」と言っています。ちなみに、このMiddle Class Tax Cut Actの採決は51対48。民主党のJim Webb(D-VA)と民主党系無所属のJoseph Lieberman(I-CN)が共和党とともに反対しています。

あと、先ほどのオバマの公約では25万ドル以上の世帯への増税のほか、Buffet Rule(バフェットルール)についても書かれています。バフェットルールは、年収100万ドル超の世帯のなかに、所得税とpayroll taxを合わせた実効税率が年収25万ドル未満の中間所得層の実効税率よりも低い世帯があるということを問題視したもので、「年収100万ドル超の世帯の実効税率を30%以上にしよう」というルールです。

ホワイトハウスの資料によると、年収5万ドル~10万ドルの世帯の実効税率は平均13%、10万ドル~25万ドルの世帯では18%。100万ドル以上の世帯だと平均で20~26%ということですから、25万ドル未満の世帯よりも高いわけです。でも100万ドル超を稼いでいる世帯のうち2万2000世帯では実効税率が15%未満になっていたりすることもある。ヘッジファンドのマネジャーが、収入を「キャピタルゲイン」として申告して、税率を15%にしたりしているかららしいです。バフェットルールが成立すると、2012~22年の税収は$46.7 billion増えると試算されています。(参照、このメモの冒頭にブッシュ減税の簡単なまとめがあります)

ちなみに民主党はバフェットルールについて定めたPaying a Fair Share Actを上院に提出し、4月16日に51人の賛成を得ていますが、共和党がフィリバスターでブロックしています。共和党は何がなんでも増税反対の姿勢をとっているというわけです。

2012年11月9日金曜日

懐かしの骨ブログ

先ほどの低所得から高所得への移動について留学時代のブログに書いてあるかと思って調べてみたら、どうも書いていなかったっぽい。骨とか若奥様とかバスケットボールのことは書いてあるけど、肝心なことは書いてないや。ちぇっ。

留学時代に使っていたパソコンにはいろいろとデータが残っているはずです。ただ、このパソコンは故障して電源が入らなくなっているんですよね。修理した方がいいかなぁ。

でもその代わりにオバマケア法案について書いたエントリを見つけた。(参照) 当時は民主党がマサチューセッツの上院補選で破れて59議席になったばかりで、共和党によるfilibusterが可能になった時期だったんですね。このころ共和党はノリノリだったみたいです。

ちなみにこのときにマサチューセッツで勝った共和党のブラウンさんは、今回の選挙で民主党のElizabeth Warrenさんに負けています。

マイノリティの支持、マジハンパねぇ


大統領選はなんだかんだで現職オバマ大統領の完勝という結果でした。選挙人は303以上。接戦州として挙げられていた11州のうち、ノースカロライナを除く9州で勝利を収めた(フロリダはまだ結果が出ていない)。「投票人が同数になったらどうしよう」なんて心配して損しました。バカみたい。

失業率を回復させられない「弱い現職」と、金持ちイメージのいけすかない「弱い対立候補」の対決で、なんでオバマが完勝できたかについてはいろいろと解説もありますが、なんだかんだで「オバマは選挙が上手かった」というものをよく見かける。ウォールストリートジャーナルのこの記事(原文の見出しは、Big Bet Six Months Ago Paved Way for President)なんか読むと、よくもまぁやるもんだと思います。ちなみにこのWSJ日本語版の記事は日本の新聞に載せるとすると、12字×525行あります。なげぇ。

あと選挙戦の結果について「アメリカは分断されているんだ」と分析する話もよく見ます。でも、アメリカの何がどう分断されているのかよく分らないので、米メディアによる共同出口調査の結果をみてみた。CNNのこのページがすごく分りやすい。

まず、Vote by Raceのところで驚くのは、白人だけでみると59%がロムニー支持であること。ロムニー完勝じゃんって感じです。でも、黒人の93%、ヒスパニックの71%、アジア系の73%がオバマ支持。Vote by Gender and Raceのところでは、黒人女性の96%がオバマ支持。黒人のおばちゃんは熱狂的です。でも、「アメリカって白人の方が多いんだから、ロムニーが勝つんじゃないの?」って思っちゃうわけですけど、投票者の28%が非白人っていうことなんで、そこで圧倒的な支持を得ることができるオバマは最初から優位なわけです。

なるほど、このグラフをみると、「アメリカはここで分断されてます!」って線を引けるぐらいだな。このオバマに勝とうとするなら、共和党も黒人を候補者にすれば良かったのにね。

次に、Vote by Incomeのところをみても、「あぁ、ここで分断されているのかな」という気がする。世帯収入が5万ドル未満の人たちは60%がオバマ支持。逆に世帯収入5万ドル以上の人になるとオバマ支持は45%で、ロムニー支持が53%になる。投票者の割合では、5万ドル以上の方が多数派なわけですが、5万ドル未満の人たちのオバマ支持の水準が強いために、全体ではオバマが盛り返すという結果になる。

Most Important Issue Facing Countryなんかもそうで、アメリカが抱える最大の問題は経済だと考える人が59%で最多。この人たちの間ではロムニー支持の方が多い。財政赤字が問題だと考える人たちのなかでもロムニーの支持はかなり強い。ただ、ヘルスケアが問題だという人が投票者全体の18%いて、この人たちの75%がオバマを支持している。ここでもやはり、2割程度の人たちの熱狂的な支持がオバマを後押ししているわけです。

負けたロムニー陣営は悔しいでしょうね。多数派の支持はロムニーにあるわけですから。下院選挙では共和党が多数を占める背景にはこうした事情があるのでしょう。下院の候補者全員がオバマというわけじゃないです。また、マイノリティの圧倒的支持というゲタをはかせてもらっても、全体ではオバマの得票率が50%にすぎなかったということは、やはりオバマは「弱い現職」だったことの現れだと思います。

そういえば選挙前、職場の先輩に「やっぱロムニーは金持ちだから嫌われるんですかね」と尋ねてみたとき、「そんなことないよ。アメリカ人は金持ち好きなんだよ」っていう返事だったな。ロムニーが嫌われたわけじゃないけど、オバマ支持の熱狂がかろうじて上回ったって感じですね。


まぁ、アメリカが分断されているというイメージは分った気がする。じゃぁ次は「どうして分断されているのか」っていうことになるんですが、これは「有色人種は白人にはなれない」ってことに尽きるんですかね。オバマは黒人と白人のハーフですから、なんとか橋渡しをしたいという理想をもっているんでしょうけど、実態は有色人種からの圧倒的な支持での勝利であって、白人からの強い支持は受けられていない。

あと、「低所得者はどんなに頑張っても高所得者にはなれない」っていうのもあるかもしれない。このあたりの事情は「家族政策(Child and Family Policy)」の授業でやったな。確か、低所得者が高所得者になったり、低所得者の子供が高所得者になる割合が少なくなっているとかいう話だったような気がする。うろ覚えですけど。もしかしたら逆だったかもしれない。また調べておきます。

2012年11月5日月曜日

選挙人の「裏切り」もあるのか?

CNNで「大統領選がタイになった場合、どうなるか分らんよね」みたいなことを言っていた。え? ロムニーが勝ちなんじゃないの? と思ったもんだから調べてみた。

大統領選でいずれの候補も過半数に達しなかった場合、大統領の選任は下院に委ねられます。下院は共和党が優位なので、ロムニーが選ばれる可能性が高い。また前々回のエントリーで紹介した合衆国憲法修正12条の規定によると、副大統領は上院が選ぶことになります。上院は現在、民主党がわずかに優位ですから、ここではバイデンが副大統領に選ばれる可能性が高い。すると大統領ロムニー、副大統領バイデンというねじれ状況が生じることになります。

根が素直な私は「だって憲法で定められているんだから仕方無いじゃん」と思ってしまうわけですが、ところが実際はそうでもない。有権者が大統領選で投票しているのは、あくまでも「選挙人」に対してです。でも、選挙人が実際に想定通りの候補者に投票するかどうかは分らない。例えば、州レベルでは共和党を支持したオハイオの選挙人の一部が民主党に投票しちゃうとか、そういったこともあるかもしれない。

CNNの7月26日の記事によると、過去の選挙においても10%ぐらいの選挙人は「投票結果と違う候補に投票しよっかなぁ」と考えたりするものらしく、選挙人は一部の勢力からロビー活動を受けたりもしている。実際にワシントンDCの選挙人が投票を棄権したり、ミネソタの選挙人が違う候補に投票することもあったとのことです。

後者の例については、こんな記事があります。2004年の選挙でミネソタ州は大統領にジョン・ケリー、副大統領にジョン・エドワードを選んだにも関わらず、10人の選挙人のうちの1人が大統領と副大統領の両方にジョン・エドワードを選んで投票した。結局、この「大統領にジョン・エドワード」の投票は無効とされて、この大統領選の投票人総数は238ではなくて237になった。

まぁ、ミネソタのケースはミスで起こった事態のようですが、ロビー活動の結果、選挙人の裏切りが起こる可能性があることには変わりありません。「投票人が同数になるかもしれない」というような状況では、1人の選挙人が棄権したり、投票が無効になったりすることが結果を左右することになります。大統領と副大統領がねじれてしまうという事態を回避するという大義名分のもと、熾烈な工作活動が繰り広げられるのかもしれません。

投票人による投票は12月17日。同数になった場合の下院による大統領選出は2013年1月7日の見通しだそうです。

2012年11月4日日曜日

もしもそうなったらどうなのよ

で、今回の大統領選挙でもしも269対269になったらどうなるのか。

大統領を決める投票を行うのは現在の下院です。議席数は民主党190、共和党240、欠員5と、共和党が圧倒しているわけですが、もしかして「州単位で1票」という下院が大統領を決める際のルールによって、勢力が拮抗したりしているかもしれません。ということで、このページで調べてみた。

すると、州内の下院議員の数で共和党が多数派である州は全部で33州。民主党が多数なのは14州。同数なのは3州です。大統領選が269対269となった場合はロムニーが勝つ可能性が極めて高そうです。

ちなみにBattleground Statesをみてみると、

ペンシルバニア(D7、R12)
ウィスコンシン(D3、R5)
ミシガン(D6、R9)
ネバダ(D1、R2)
オハイオ(D5、R13)
アイオワ(D3、R2)
ニューハンプシャー(D0、R2)
コロラド(D3、R4)
バージニア(D3、R8)
フロリダ(D6、R19)
ノースカロライナ(D7、R6)

という具合です。Dは民主党、Rは共和党。


まぁ、要は共和党は2010年の下院選挙で大勝ちしているので、どこの州では共和党が多いわなというだけの話ですね。2010年の選挙では、選挙前の民主党255、共和党178、欠員2という情勢だったのが、現在の共和党圧倒の情勢にひっくり返ったわけだから。にも関わらず、大統領選で共和党が勝負を有利に進められないのは、やっぱりロムニーが弱い候補だからなんでしょう。

2012年11月3日土曜日

引き分けってあるのかよ

米大統領選の投票人の数は538人です。ですからオバマとロムニーが269対269で同じ人数になる可能性もあります。

で、先日のBattleground Statesの票をみてみると、ロムニーがバージニア、フロリダ、ノースカロライナを抑えて、コロラドをひっくり返して、さらにネバダとアイオワととると78人。すでに固めている191人と合せて269となります。もしかしてもしかするともしかしたら、両者が同人数になるかもしれない。ということで、その場合の手続きを調べておいた。

このあたりの規定は合衆国憲法の修正12条に定められています。

修正12条(1804年)

選出人は、それぞれの州で集会し、大統領及び副大統領を無記名投票で選出する。そのうち少なくとも1名は、選出人と同じ州の住民であってはならない。選出人は、無記名投票で大統領として投票する者を、そして別の無記名投票で副大統領として投票する者を指名する。選出人は、大統領として投票されたすべての者と副大統領として投票されたすべての者及びそれぞれの得票数の別個のリストを作成し、署名し認証した上で、封印を施して上院議長に宛て、合衆国政府の所在地に送付する。―――上院議長は、上院及び下院の議員の出席のもとで、すべての認証を開封し、投票を数える。―――大統領としての最大得票を得た者は、その数が選出された選出人の総数の過半数であれば大統領となる。過半数を得た者がいなかった場合には、下院は大統領として投票された者のリストの中から3名を超えない最多得票数の者の中から、直ちに投票によって大統領を選ぶ。ただし、大統領を選ぶ際には、投票は州を単位にして行われ、各州の議員団は1票を有する。この場合の定足数は、3分の2の州から1名以上の議員が出席していることであり、選出のためにはすべての州の過半数を要する。そして下院に選出する権利がありながら次の3月4日までに大統領を選出しなかった場合には、大統領が死亡した場合や他の憲法上の職務執行不能の場合と同様、副大統領が大統領として職務を行う。―――副大統領として最多数の得票を得た者は、その数が選出された選出人の総数の過半数である場合には、副大統領となる。過半数を得た者がいない場合は、上院がリストの最多数を得た2名のうちから副大統領を選ぶ。このための定足数は、上院議員の総数の3分の2であり、選出には総数の過半数を要する。しかし憲法上の大統領の職につく資格を欠く者は、合衆国副大統領の職につく資格を有しない。*修正20条第3節により修正



つまり、269対269で同点の場合や、候補者が3人いて268対267対3とかいう場合は、いずれの候補も過半数の270に達していない。そうなると下院が投票によって大統領を決めることになります。ただし、各議員が1票もっているというわけではなく、全50州が議員団として1票ずつ投じて、過半数の26をとった候補者が大統領に選ばれるというわけですね。

で、このページによると、こうした下院が大統領を選ぶという事例は過去に2度あるそうです。1度目は1800年のジェファーソンが当選した選挙。2度目は1824年のジョン・クィンシー・アダムズ大統領が当選した選挙です。

ただし1度目は修正12条ができる前ですから、合衆国憲法2条1節3項に基づいたものでした。条文はこのページで確認できますが、当時は選挙人は1人が2票持っていて、過半数以上の最多得票者が大統領、次点の者が副大統領になるという制度だった。で、当時の選挙人の総数は138。ジェファーソン様と副大統領候補のアーロン・バーが所属する民主共和党は過半数となる73人からの支持を集めたのですが、73人全員がジェファーソンとバーに投票したために、過半数を超える同数の得票者が出てしまった。その結果として、下院による大統領選出になったわけです。本来であれば、民主共和党は73人のうち72人はジェファーソンとバーに投票して、残りの1人がジェファーソンと「バーではない誰か」に投票して、ジェファーソン73票、バー72票とする計画だったのですが、手違いで同数になったらしい。

で、ここからもややこしいんですが、1800年の大統領選と同時に行われた下院選挙は、民主共和党が68議席、連邦党が38議席をとった。でも、当時の大統領と下院の任期は1801年3月4日からだったので、新しい大統領を選ぶのは1798年の選挙で選ばれた下院なわけで、議席配分は民主共和党46、連邦党が60だった。つまり、ジェファーソン、バー組の民主共和党は少数野党だったわけです。

で、この連邦党支配の下院が、民主共和党のジェファーソンかバーかを大統領に選ぶわけですが、連邦党の議員は民主共和党のリーダーであるジェファーソンを大統領に選びたくない。そこで当時の全16州のうち、連邦党優位の6州はバーに投票。民主共和党と連邦党の勢力が拮抗する2州は白票を投じた。ジェファーソンは8州からの支持を集めたものの、過半数の9州には届かないわけです。ということでこの下院での投票は1801年2月11~17日にかけて、36回の投票を繰り返した。最後の36回目では、これまで白票を投じていたメリーランド州とバーモント州がジェファーソンに投票して、10州からの支持を集めたジェファーソンが大統領に選出されたというわけです。

で、これはちょっとマズいだろうということで、1804年に合衆国憲法の修正12条が成立した。

で、1824年の選挙ですが、当時は連邦党が崩壊していて、民主共和党から4人が大統領選に立候補。誰も過半数を取ることができず、下院がこのうち上位3人から大統領を選ぶことになった。1825年2月9日に下院での投票が行われ、当時の24州のうち、アダムズが13州をとって大統領に選ばれた。このときに投票したのは1822年の選挙で選ばれた下院です。

2012年11月1日木曜日

Battleground States

アメリカ大統領選まであと1週間を切っています。ということで、RealClearPliticsで現状をチェックしておいた。

今のところ両者が接戦を演じているのは11州。この11州の選挙人146を両者で奪い合っている状況です。逆にこの11州を除いた39州はほぼ票が固まったといわれいて、選挙人の総数はオバマが201、ロムニーが191。つまりロムニーが逆転するには、11州の146票のうち79票を取らねばならない。

そこでこの11州をオバマ支持が強い順番にならべてみると、

ペンシルバニア(20)
ウィスコンシン(10)
ミシガン(16)
ネバダ(6)
オハイオ(18)
アイオワ(6)
ニューハンプシャー(4)
コロラド(9)
バージニア(13)
フロリダ(29)
ノースカロライナ(15)

という具合です。カッコ内は選挙人の数。

現状では下から3つ(バージニア、フロリダ、ノースカロライナ)がロムニー優勢で、選挙人の数は合計57。79までもっていくには、あと22票足りないという計算です。

となると、コロラド、ニューハンプシャー、アイオワの3州をひっくり返しても19票ですから、まだ3票足りない。ということは、オハイオまでひっくり返さないといけないんですね。なるほど、オハイオが重要な州だと言われるわけだ。

また、オハイオさえひっくり返してしまえば、あと6票でオバマを逆転できる。となると、6票をもぎとるのに一番手っ取り早いのは、もっともオバマ支持の割合が少ないコロラドをひっくりかえすこと。アイオワやニューハンプシャーはどうでもいいということになる。

ということでロムニー陣営的には、バージニア、フロリダ、ノースカロライナを守りつつ、オハイオ、コロラドを攻める。逆にオバマ陣営はこのうち一つでも確保すれば勝てるわけで、オハイオ、コロラドの地固めに入るという感じですかね。

コロラドのオバマ支持率はロムニー支持率をわずか0.6ポイント上回っているだけなので、これはどう転ぶか分らない。オハイオはオバマの2.3ポイントリードなので厳しいかも。


ちなみにこの11州の9月の失業率をみてみると、

ペンシルバニア(8.2)
ウィスコンシン(7.3)
ミシガン(9.3)
ネバダ(11.8)
オハイオ(7.0)
アイオワ(5.2)
ニューハンプシャー(5.7)
コロラド(8.0)
バージニア(5.9)
フロリダ(8.7)
ノースカロライナ(9.6)

失業率が高いほどロムニー支持が高かったりするかと思ったのですが、そうでもないです。ただ、ロムニー陣営がミシガンとコロラドをひっくり返して22票超を確保するパターンもあるかもしれません。ミシガンはオバマの3.0ポイントリードですが、失業率が低いオハイオよりも攻めやすいかも。

妄想は止まりませんな。あと、RealClearPoliticsは便利すぎ。