2016年6月17日金曜日

"Stories of Your Life and Others"

"Stories Of Your Life and Others"を読んだ。テッド・チャンのSF短編集です。随分と前に日本で話題になったころ、日本語で読んだことがあります。ケン・リュウさんが"The Paper Menagerie and other stories"の後書きで、"The Man Who Ended History: A Documentary"は、テッド・チャンの"Liking What You See: A Documentary"を読んで着想を得たと書いていたので、「どんな話だったかなぁ」と思って読み直してみることにしました。

SFはあまり読まないので、日本語で読んだとき「SF作家っていうのはすごいことを考えるもんだなぁ」と感心したのを覚えています。なかなか難解なところもあったので、英語できちんと読めるものかどうか不安だったのですが、英語でも楽しむことができました。まぁ、日本語で一度読んだことがあるから、当たり前っちゃぁ当たり前ですが。

収録作品は、

Tower of Babylon(バビロンの塔)
Understand(理解)
Division by Zero(ゼロで割る)
Story of Your Life(あなたの人生の物語)
Seventy-Two Letters(七十二文字)
The Evolution of Human Science(人類科学の進化)
Hell is the Absence of God(地獄とは神の不在なり)
Liking What You See: A Documentary(顔の美醜について:ドキュメンタリー)

の8本。日本語版と同じです。

いずれも面白いですが、やっぱり"Story of Your Life"が面白いですね。「SF作家っていうのはすごいことを考えるもんだなぁ」と思ったのはこの作品で、異星人との交流、人類とは全く異なる思考方法といったテーマを言語学の知識を元にして書かれています。あと、信仰を扱った"Hell is the Absence of God"も好きです。"Seventy-Two Letters"は遺伝子とかオートマタとかを扱った作品ですが、これはフィクション上の設定を理解するのが難しかった。"Understand"は特殊なホルモンの効果で頭脳がめちゃくちゃハイスペックになった男性の話。最終的にはサイキックバトルになります。"Liking What You See: A Documentary"は顔の美醜を判断できなくなる脳への措置が現実になった世界の話。外見至上主義"Lookism"への批判から、こうした技術が導入されようとしているっていう設定で、面白いんですが、「まぁ、そんなに真剣に考えるほどのことでもないかな」とも思いました。

チャンさんはニューヨーク州生まれの中国系米国人。中国生まれのリュウさんとはバックグラウンドが違います。リュウさんのような漢字とか東アジアの歴史をモチーフにした作品はありません。本業はテクニカルライターだそうです。書くべき題材が見つからなければ小説は書かない主義で、寡作だとのこと。そりゃ、面白い話ばかりになりますわな。

"Story of Your Life"は"Arrival"というタイトルで映画化が進んでいます。英国では11月に公開。米国は未定なのでしょうか。(参照)例の"Heptapod B"をどう表現するんでしょうかね。