"The Ax"という小説を読んだ。Donald Westlakeが1997年に書いた作品です。ウエストレイクはエドガー賞を3度獲ったほどの著名作家です。私は全然知りませんでしたが。
私はもともとミステリーが好きで、これまでJ.A. Konrathの本を読んでいたのですが、どうもこの人の本はジョーク満載で面白いんだけど、描写がグロいところがあって、なんか食傷気味になってきたところでした。
そこで、以前読んだ本のなかで、Konrath自身が好きだと書いていた作家をピックアップして、そのなかから、私が気に入るような作家を捜してみようと思ったのです。
Konrathが好きだと書いていた作家は6人。
Janet Evanovich
Rovert Parker
Lawrence Block
Robert Crais
Donald Westlake
Ridley Pearson
一人も読んだことがないので「このミステリーがすごい!」の過去のランキングを調べてみたところ、このうち、ローレンス・ブロックと、ウエストレイクは過去に何度もトップ10に入っています。
2013年10位のローレンス・ブロック「償いの報酬」A Drop of the Hard Stuff (Matthew Scudder 17)
2004年5位のドナルド・ウエストレイク「鉤」The Hook(2000, シリーズなし)
2002年4位のドナルド・ウエストレイク「斧」The Ax(1997, シリーズなし)
1998年9位のドナルド・ウエストレイク「天から降ってきた泥棒」Good Behavior (1985, Dortmunder)
1995年3位のドナルド・ウエストレイク「踊る黄金像」Dancing Aztecs(1976, シリーズなし)
1994年6位のローレンス・ブロック「倒錯の舞踏」A Dance at the Slaughterhouse (Matthew Scudder 9)
1993年2位のローレンス・ブロック「墓場への切符」A Ticket to the Boneyard (Matthew Scudder 8)
じゃぁ、このなかからどれを読むかということですが、シリーズものじゃない、比較的新しいという基準で"The Ax"を選んだ。"The Hook"を選ばなかった理由は忘れた。
で、肝心の読んでみた感想ですが、Konrathの作品とは正反対で「ジョークは一切無く、グロさもほとんどない」といった作風です。1990年台半ばのコネチカット、ニューヨーク、マサチューセッツを舞台にして、製紙メーカーをリストラされた男が殺人を繰り返すという話。一貫して犯人の視点で書かれているので、ミステリーではありません。本当に淡々と話が進んでいきます。
じゃぁ、面白くないかというと、そうではなくて、なかなか読ませます。リストラされた男が殺人を始めるまでの屈折した心理とか、家族との関係とか、ターゲットに対する心情とか、だんだんと犯罪慣れしていく様子とかが詳細に描かれていきます。描写がグロいわけじゃないですが、犯人の身勝手な理屈はなかなかにグロテスクです。また、この男をリストラした会社はコネチカットの工場を閉めて、カナダに製造拠点を移したという設定になっています。NAFTA(1994年発効)なんかも言及されていて、今日的な話題である「米国における製造業の衰退」なんていうテーマも重ね合わせてしまいますね。
淡々と話は進みますが、ラストにどうなるかは最後まで分かりません。そういった意味でも面白い。
ウエストレイクは多作な人みたいなので、しばらく楽しめそう。
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