Foreign Affairsのサイトを眺めていたら、「イランはまだ核開発にもたついている」(Iran Is Still Botching the Bomb)という記事を見つけた。(参照) それによると、イランが核爆弾を持つことになるのは早くても2015~16年ぐらいだという報道が1月下旬に出ていたらしい。知らんかった。
イランといえば、昨年9月にイスラエルのネタニヤフ首相が「イランは2013年夏ごろには核爆弾製造に向けた最終段階に入るので、しっかりとレッドラインを引いて対応せねばならない!」と熱弁をふるったわけですが、その分析は間違っていたというわけです。へぇ。
ということで、元記事をみてみたら、McClatchyという米カリフォルニア州サクラメントを拠点とするメディアグループのサイトで、そこの取材によると、
Intelligence briefings given to McClatchy over the last two months have confirmed that various officials across Israel’s military and political echelons now think it’s unrealistic that Iran could develop a nuclear weapons arsenal before 2015. Others pushed the date back even further, to the winter of 2016.
ということらしいです。Intelligence briefingsって何だよという気はしますが、まぁ、2015年より前に核兵器を持つことは非現実的で、一部には2016年冬になるだろうという人もいるらしい。
さらにはイスラエルでは、「西側やIAEAは、『イランは核開発は継続しているんだけど、後戻りできないような状態にならないようにゆっくり進めている』と考えている」という報道もあるということです。
Writing in Israel’s Hebrew-language daily newspaper Yediot Ahronot, military correspondent Alex Fishman said, "Officials responsible for assessing the state of the Iranian nuclear program, both in the West and in the International Atomic Energy Agency, believe that while the Iranians have continued to pursue their nuclear program, they have been doing so cautiously and slowly, making sure not to cross the point of no return."
イスラエルの外交筋が「経済制裁が効いているから、核開発をゆっくり進めているんだ」と分析しているという記述もあります。
で、この記事を元にして、Foreign Affairsでは、南カリフォルニア大学のJacques Hymans准教授が核開発の遅れの理由について、
・経済制裁でダメージを受けたイランが意図的に開発のスピードを遅らせたというのなら、イラン側がその見返りを要求しないとおかしい。
・ネタニヤフ首相が今年1月の選挙を意識して、意図的にイランの核開発のスピードを速めに見積もって危機感をあおり、自らへの支持を集めようとしたんだいう説もあるかもしれないが、イスラエルがイランの核開発のスピードを速く見積もるというのは今に始まった話ではない。
・一番可能性が高いのは、イスラエルや米国の諜報機関の分析が失敗していたということだ。イランのような国にはまともに計画通りに核兵器を開発できるような体制がとれないという現実を把握すべきだ。
なんていう風に分析しています。
で、そのうえで、
イランの核開発は挑発的で、戦争の危機は現実にあるわけだから、イスラエルはきちんと状況を分析して発信せねばならない。いつもいつも「オオカミが来るぞ!」と騒いでいたら、信頼を失ってしまいますよ。
といったことを書いています。
Hymans氏によると、1992年にはイスラエルのペレス外相が「イランは1999年までに核兵器を持つだろう」なんていう風に言ったこともあったらしい。あと、米国のイラク攻撃の理由となった「イラクは大量破壊兵器を持っている」という説は間違いだったことが明らかになっている。諜報機関の分析が間違っているっていうのは珍しいことではないのかもしれません。
ただ、ちょっと前には、IAEAが「イランがIR-2mと呼ばれる遠心分離機を設置した。核開発のスピードが格段に上がる可能性がある」という内容の報告書を発表しているわけで(参照)、元記事の信憑性がどうなのかなという気もします。米国がイラクを攻撃したという事例は、「イランの核開発がどの段階であろうとも、攻撃されるときは攻撃される」という話なのかもしれません。
画像はハインマンス准教授のサイトにアップされていたもの。画像のファイル名の最後が"harajuku%20girls.jpeg"となっているので、原宿で撮影したもののようです。おもしろい人なんでしょうか。
アメリカ人のハイマンス教授が原宿でこんな写真撮ってアップしても、「学者ぶってなくてカッコいい」とかなりますけど、日本人教授がやると「若者に媚を売っている」とか、あるいはメディアや学会でキワモノ扱いされるだけに違いない。たとえ将来教授になれたとしても、自分がただのチビな日本人であることを忘れず調子に乗らないことをここで宣言します!
返信削除まぁねぇ。日本人がやると森永拓郎っぽくはなるわな。ハインマンス教授がカッコいいかどうかはあやしいけど。
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