2018年1月23日火曜日

How To Be Black

"How To Be Black"という本を読んだ。Baratunde Thurstonという黒人のブロガーが、黒人のあるべき生き様についてユーモアを交えて書いたエッセイです。前に読んだ"Let's Pretend This Never Happened (A Mostly True Memoir)"のJenny Lawsonが、面白い本だとして言及していたので読んでみた。

まぁ、面白いですが、説教くさいです。ローソンさんの本の方が純粋にバカで面白い。

ちょっと長い中断を挟んで読んだので、内容を正確に記憶しているわけじゃないですが、この本は"the ideas of blackness, how those ideas are changing, and how they differ from the popular ideas promoted in mainstream media and often in the black community itself"について書いた本です。面白い内容ではあります。

例えば、黒人には「熱狂的なオバマ支持者」というイメージを持ちがちですが、黒人の側からすればそういうステレオタイプなイメージをもたれること自体がなんか不愉快だったりするんだそうです。職場で白人の同僚から「オバマ大統領って素晴らしいよね」なんて話かけれたりすると、「お前、俺が黒人だから当然オバマを支持しているっていう前提で話かけているだろう?」なんて思うわけです。この同僚は白人に対しては不用意にそんな問いかけはしないはず。白人のなかにはオバマ嫌いな人もいることはよく知られた事実だからです。でも、この同僚は「黒人は全員オバマ支持者」だと決めつけている。もちろんオバマ支持の黒人は多いわけですが、黒人からすればオバマ支持者だと決めつけられるのもなんか嫌っていうわけですね。

また、サーストンさんはこの本で、自分以外の黒人の視点も紹介するため、複数の友人にもインタビューして体験談を集めています。黒人が子供時代に初めて黒人であることを意識する瞬間なんていうエピソードとか具体的で面白いです。

黒人の間でも「いかに黒人であるか、あるべきか」という問題について意識の温度差があることについても、たくさんのエピソードが出てきます。黒人の人権運動の指導者なんかは「黒人が歴史的に負わされてきた重荷」について語るわけですが、そこまで熱くなれない黒人もいる。でも、そういう態度をとっていると「勉強不足だ」と糾弾されかねない雰囲気もあったりするらしい。あと、母親のことを"mother"と表現したりすると、親戚のおじさんから「どうして白人みたいな話し方をするんだ」と言われたりする。以前読んだ"Please Stop Helping US"にも似たようなエピソードがありました。

さらにややこしいのは黒人の間での出自に関する連帯感というか阻害意識といったものです。サーストンさんのファーストネームの「Baratunde(バラトゥーンデイ)」というのはナイジェリア系の名前なんですが、ナイジェリアでよくある"Babatunde"とはちょっと違う。そんなわけで生粋のナイジェリア系の黒人から、「ナメた名前してんじゃねーぞ」ぐらいの雰囲気でからまれることもあるそうです。われわれ部外者は「黒人は黒人同士でみんな仲良し」ぐらいに思っているわけですが、意識の違いはいくらでもあるわけです。

ちなみに著者のサーストンさんはワシントンDCで育ち、父親はドラッグがらみの犯罪で射殺されたそうです。でも、チェルシー・クリントンやオバマ大統領の娘たちも通っていた(る)私立学校Sidwell Friends Schoolからハーバードに進学した高学歴の持ち主でもあります。そんな白人社会での育った経験から、「黒人と白人の相互理解を深めるには、黒人は白人の友人を作ることが大切だけど、あまり白人と仲良くなりすぎると黒人から批判されるので微妙なバランス感覚が重要だ」とか「二人目の黒人大統領を目指すなら、人種問題を強調しすぎると白人からの支持は得られない。黒人の経済問題は『都市部の経済問題』と言い換えるぐらいの気配りが必要」なんてことも書いてある。

そして「二人目の黒人大統領こそ実際は最初の黒人大統領だ!」とも言っている。その理由は、オバマが大統領になったことで多数派である白人の「黒人に支配されることへの恐れ」が顕在化して、二度と黒人大統領が誕生しない可能性だってあるからです。二人目の黒人大統領が誕生しなければ、オバマ大統領誕生は「単なるまぐれ」だったってことになりかねない。

とまぁ、そんなことが書いてある本です。基本的には黒人の読者を想定しているようなので、私のような東アジア人からすれば「世の中には黒人と白人しかないような世界観で話してんじゃねーよ」っていう気分にもなりますが、まぁそれは、この本を選んだ私の責任だとも思います。

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