"Churchill"という本を読んだ。ポール・ジョンソンという英国の作家が2010年に書いた本です。
このところ第一次世界大戦ごろからの欧州の歴史に関する本を読んできて、やはり英国のことを知っておいた方がいいだろうと、ひいてはチャーチルを中心として英国史を解説してくれる本があれば分かりやすいんじゃないかと思って読んでみました。
ただ、ちょっと弱気になって「チャーチルの本なんて山ほどあるだろうから、まずは初心者向けの短いやつでも」と思って選んだ本です。192ページ。そしたらイマイチでした。ちょっとあっさりしすぎという感じ。チャーチルの人柄なんかについては詳しいのですが、歴史的な経緯についてもうちょっと丁寧に解説してくれる本が良かったです。
でもまぁ、ざっとした話は分かりました。
チャーチルが初めて首相になったのは1940年5月10日。ドイツがフランス侵攻を始めた直後のことだったそうです。前任のチェンバレン首相は1938年のミュンヘン会議でズテーテン割譲を認めるなどドイツに宥和的な政策をとってきましたが、ドイツの軍事的な拡大を招いてしまったという状況でした。
英国議会で後任候補にあがったのは、First Lord of Admiralty(海軍大臣)だったチャーチルと、外務大臣だったハリファックス伯爵。しかしハリファックス伯爵は首相になることを辞退し、チャーチルが首相に選ばれたという経緯だったそうです。チャーチルはチェンバレン内閣の一員でしたが、ミュンヘン会議などの対独宥和策には反対してきました。
チャーチルは第一次世界大戦後の1919年にSecretary of State for Warに就任し、空軍力の強化を進めるなど軍事には詳しかった。チャーチルは首相としてもさらに空軍力にこだわり、1940年末には戦闘機の性能でも生産能力でもドイツを上回るようになった。ドイツは英国への空爆で英空軍の拠点を破壊しようと試みますが、英国の空軍はこれを阻止。この”Battle of Britain”が第二次世界大戦の重要な転換点になったそうです。
あと、チャーチルは第一次世界大戦当時にも海軍大臣を務めていて、艦船の燃料を石炭から石油に切り替えていくことにも注力した。軍事通だったんですね。
まぁ、そんな感じです。
雄弁で茶目っ気があって、国民に愛された政治家。さらに戦後には全6巻の”The Second World War”を書いて、ノーベル文学賞までとってしまう。この本は第二次世界大戦当時の機密文書をチャーチル個人の所有物として政府に認めさせて書いたそうです。ヒトラーもムッソリーニもFDRも死んでしまい、スターリンは回想録を残さなかった。こうした中、チャーチルは戦後生き残った唯一の指導者として「正史」を書き切ったということなんだそうです。
ジョンソンさんはこう書いています。
“By giving his version of the greatest of all wars, and his own role in it, he knew he was fighting for his ultimate place in history. What was at stake was his status as a hero. So he fought hard and took no prisoners. On the whole he won the war of words, as he had earlier won the war of deeds.”
とんでもないオッサンですね。
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