"The Curse of Cash: How Large-Denomination Bills Aid Crime and Tax Evasion and Constrain Monetary Policy"という本を読んだ。2016年にハーバード大学のケネス・ロゴフ教授が出した、100ドルとか1万円みたいな高額紙幣がいかに犯罪や脱税に使われていて、金融政策の足かせにもなっているかということを解説した本です。タイトルそのまんまですね。
ロゴフ教授といえば、"This Time is Different"という国家の財政破綻の歴史について書いた本で有名になった人です。留学中にとった授業で教科書に指定されていたことと、その授業でBをとってしまったことが懐かしい。バーマン教授には心から御礼申し上げます。
で、この本でいわんとすることはさきほど書いた通りです。実際には高額紙幣がどのぐらい使われていて、それがどのぐらい犯罪や脱税に関わっているかなんていうことはオフィシャルな統計で示せるわけではないのですが、ロゴフ教授は入手可能なデータを駆使して、さらにそこに色んな仮定を重ねて、自説を補強していきます。現金がいかに闇経済で使われているかというのは、以前に読んだExorbitant Privilegeでも触れられていました。まぁ、具体的な規模は分かりませんが、そりゃそうだろうなという気はします。
あと、金融政策については、マイナス金利政策の効果が高額紙幣によって損なわれると主張します。中央銀行は景気を刺激するために金利を引き下げるわけですが、政策金利がゼロにまで到達してしまうと、そこから先は金利を引き下げることはできない。そこで量的緩和政策なんていうのが発案されたわけですが、それがどのぐらい景気を刺激する効果があったかどうかはよく分からないわけです。そこで、日本や欧州はマイナス金利を採用するようになりました。ところが中央銀行がマイナス金利をかけて景気を刺激しようとしても、預金者が銀行口座のお金を現金化してしまえば、そこにはマイナス金利の影響は及ばないわけです。だから、大きなお金の金額の現金化のツールである高額紙幣が金融政策のあしかせになっているといえるという主張です。
ロゴフ教授はここから、だから高額紙幣は廃止するべきだ。各種カードによる電子決済が普及している先進国だったら十分に可能だし、それで犯罪を抑え込み、金融政策の効果も大きくなるんだったら、いいことじゃないかと話を進めます。
こういう主張をすると、中央銀行の通貨発行益(シニョレッジ)が失われるからだめだとか、低所得者はカードなんて持っていないんだから困るだろうとか、犯罪者は高額紙幣が廃止されたって別の抜け道を見つけるだろうとか、マイナス金利みたいな銀行から強制的にお金を巻き上げるようなことをしていいのかとか、いろんな反論が出るそうです。で、ロゴフ教授は、そうした反論の有効性をひとつひとつ検証して、やっぱり高額紙幣廃止によるメリットの方が大きいですよね、と結論づけます。
まぁ、それだけの本です。ハーバードの教授が高額紙幣を廃止したらいいんじゃないのと思いついて、自説の正しさを証明するために反論を丁寧につぶしていく。ただ、個人的には高額紙幣廃止で犯罪が抑制できるんだからそれでいいじゃないかと思うんですが、別にそこまで説明してくれなくてもいいよっていう感じもします。「電子決済が普及しているんで、高額紙幣はなくてもいいですよね」って一言だけ言ってくれれば、みんなそれで納得するんじゃないか。
ただしシヨレッジについて丁寧に説明してくれるのはありがたかったです。中央銀行は通貨を発行することで利益を得られるっていうのはいろんなところで見聞きするんですが、具体的にはどういうことが行われているのかよく分からなかったからです。「何か物が欲しいときに印刷機を動かして好きなだけ紙幣を作っているの?」なんていう風にも思えるわけですが、実際には以下のような手順を踏んでいるそうです。
1.政府が収入以上にお金を使って、それを賄うために債券(debt)を発行する
2.中央銀行が市中からdebtを買い取る。この際、electric bank reserve (which are the electric equivalent of cash)を発行する
3.bank reserveに対して中央銀行が払う利息よりも、debtから得られる利息の方が大きいので中央銀行には長期的に利益が出る
2のところがミソなんでしょうけど、中央銀行は市中からdebtを買い取るときに売り手である銀行に現金を渡すわけじゃなくて、銀行の当座預金の残高の数字を変更するだけなわけですね。これが現代における通貨の発行だというわけです。で、いつでも引き出し可能な当座預金につく利息は、政府が発行した債券につく利息よりも小さい。だから3のところで中央銀行に利益が出る。これがいわゆるシニョレッジ(通貨発行益)というわけです。
だから、高額紙幣が廃止されて、印刷機を動かせなくなっても、中央銀行は利益を出すことができます。ロゴフ教授は"even if paper money revenue disappeared completely, the central bank would still earn money from electronic reserves"と明言しています。
ちなみにこの通貨発行益は中央銀行から政府に納められます。結局、政府は一切損をしていないようにも思ってしまいそうですが、実際には当座預金についた利息分は政府の負担が生じているのだと思います。ここは私の勝手な理解です。
また、ロゴフ氏は高額紙幣を廃止する際には、政府・中央銀行は債券を発行して高額紙幣を買い取らねばならない(it will have to issue ordinary interest-bearing debt to buy back the currency it is retiring)と書いています。
ここのところは直感的によく分からなかったのですが、多分、こういうことです。
1.「高額紙幣を廃止するぞ」とのお達しに従って、銀行が金庫に入っている大量の1万円札を中央銀行に持ち込む
2.中央銀行は銀行から受け取った金額を銀行の当座預金に電子的に記入する
3.でも、この受け取った大量の1万円札は無効になったただの紙切れだから、現金としてはもう使えない
4.だから、中央銀行の損失を埋めるために、政府は債券を発行して資金を調達せねばならない
どうでしょう。これで正しいんでしょうか?
とまぁ、こんなことをつらつらと説明している本です。
This time is differentのときは「そうか。やっぱり政府が負債を積み上げすぎるのは問題だな」という気がしましたが、今回は「知らんがな」という感は否めません。
2017年8月30日水曜日
2017年8月17日木曜日
"The Healing of America"
"The Healing of America: A Global Quest for Better, Cheaper, and Fairer Health Care"という本を読んだ。T. R. Reidという、慢性的な肩の痛みを抱えるジャーナリストが世界各国の医者にかかりながら、各国の医療制度について探求し、米国の医療保険制度の問題点をあぶり出すという内容です。2010年8月出版。オバマケア関連法案成立して間もないころですね。
とても面白かった。American Sicknessよりも格段に読みやすい。米国医療がいかにしてダメになっていったかということはAmerican Sicknessでこれでもかと言わんばかりに書かれていたわけですが、こちらのThe Healing of Americaでは、他の国はどうしてダメになっていないのかということが書かれています。さらに、かつてはダメな制度だったのに改革に成功した、台湾とスイスのケースも紹介しています。なのでAmerican Sicknessよりも救いがあります。
書かれていることは単純。米国の医療制度をまともなものにするには、国民が「全員が医療保険に加入できるべきだ」という考え方で一致できるかどうかがキモだということです。世界の医療保険制度はいろんな仕組みがありますが、米国以外の先進国はすべてこの考え方に基づいています。
ところが米国ではこういう主張をすると、必ず「社会主義化された医療制度だ! ムダだらけで、革新も生まれない。国民の医療への選択肢も狭められる。自由を尊ぶ米国の理念に反する」という反発が出ます。そういった主張に、現在の医療保険制度で恩恵を受けている医療保険会社や医療機関、製薬会社が乗っかってロビー活動を展開するので、議会は動きがとれなくなります。オバマ大統領に上院60議席、下院過半数の議席を与えたって、問題は解決できなかったわけですからなかなか根深い問題です。
そこでリードさんは、こうした「社会主義化された医療制度だ!」という批判は的外れだと繰り返し説明します。
まず、他の先進国の医療制度は別に社会主義化されているわけではないという点です。
リードさんは先進国の医療制度を以下のように分類します。
ビスマルク型(ドイツ、日本など)=医療保険提供者が民間、医療サービス提供者も民間
ベバリッジ型(英国、北欧など)=医療保険提供者が国、医療サービス提供者も国
国民健康保険型(カナダ、韓国など)=医療保険提供者は国、医療サービス提供者は民間
まぁ、ベバレッジ型は国が全面的に関与していますから、バリバリの自由経済主義者からみれば「社会主義的」といえるかもしれません。でも英国を社会主義国だと思う人は多くはないです。あとビスマルク型や国民健康保険型は民間が関与していますから、社会主義ってわけじゃないですよね。
ただし、こうした民間が関与する仕組みでも規制はきついです。例えばビスマルク型として取り上げられている日本は、医療保険は主に企業別の医療保険組合が提供していて、医療サービスも民間がやっているわけですが、医薬品の価格なんかは政府がコントロールしているわけです。それは「すべての国民が医療保険に加入できるべきだ」との考え方から正当化されます。こうした厳しい規制のおかげで日本の医療費は国際的にみて安いですし、しかも患者は自由に医療機関を選べる。
ベバレッジ型は医療保険も医療サービスも国が主体です。そのおかげで患者は病院に行っても請求書を受け取ることはありません。それだったら患者が好きなだけ病院に行くことになって医療費が高騰しそうなものですが、「国はすべての人を保険でカバーするけれど、すべての医療行為をカバーするわけじゃない」という立場をとっているため、たいしたことのない病気であったりすれば病院にかかる前に行くことになる"general practitioner"のオフィスの段階で「病院に行かなくていいですよ。様子をみましょう」ということになる。また、すべての医療費は国民の税金で負担することになりますから、有権者や政治家も医療費の無駄遣いには敏感です。「94歳の女性への人工関節手術を認めるべきか」「50歳以上の男性すべてに前立腺がんの検査を認めるべきか」といった問題が、医学的なエビデンスの基づいて議論されたりします。
国民健康保険型も医療保険を国が提供するわけですから、どんな治療に対しても費用を払うというわけではないです。医療サービスは民間ですから、民間同士の競争がありますし、国がいくらでも医療費を払ってくれるわけじゃないので、コスト意識が働きます。
もちろん、それぞれの制度には問題点があります。日本なんかは「医療従事者の報酬が低い」なんていう問題点も指摘されます。ベバレッジ型の英国や北欧は米国に比べて税金が高いです。国民健康保険型のカナダなんかは、緊急性がない治療の場合は、受診までに数カ月~1年以上も待たねばならないという問題があります。
ただ、それだって米国の医療制度よりは格段にいいわけです。一人あたり医療費は安いし、健康を維持できる年齢も高い。どこの国だって「米国みたいにはなりたくない」と思っています。それなのに、どうして米国が現在の米国の医療制度にこだわる必要があるのかというわけです。
リードさんはさらに、米国内の「他の国の医療制度は自由を尊ぶ米国の理念に反する」という意見も的外れだとします。それは米国の医療制度のなかには、すでにこれらの仕組みが根を張っているからです。
例えば、高齢者向け公的医療保険のメディケアは国が医療費を負担して民間が医療サービスを提供していますから国民健康保険型です。退役軍人向けには専門の病院もありますから、これは医療保険も医療サービスも国が提供するベバリッジ型です。そのほかの企業が提供する医療保険に加入している米国人にとっては、ビスマルク型の医療保険制度が存在しているわけです。
ただ、米国には「全員が医療保険に加入できるべきだ」という理念がないために、どの制度からもこぼれてしまっている人たちがいます。メディケアに入れるほど年寄りではないし、低所得者向けのメディケイドに入れるほど所得が低いわけでもないし、医療保険を提供してくれる会社に勤めているわけでもないし、退役軍人でもないという人たちですね。この人たちは行き所がないです。利益目的の保険会社に高い保険料や高い自己負担額を強いられ、病院からも高い医療費を請求されて、生活を維持できなくなってしまうような人たちです。さらに医療保険を提供してくれる会社に勤めていたけど、病気で仕事を続けられなくなって退職したら、医療保険がなくなったなんていう事態も起きるわけです。
また、こうした医療保険制度のパッチワーク状態が余計なコストを生みます。オバマケアはこのパッチワークに拍車をかけました。
リードさんはこう書いています。
Facing an entrenched army of well-financed and powerful interests determined to preserve the status quo, Obama declared from the start that he would not seek to replace the existing health care system with a simpler, cheaper model. "We have to build on what we've got already," Obama said. The result was an enormously expensive and complicated piece of legislation ---the "Obamacare" bill runs to 2,400 pages of legalese ---that retains most of the structure of the U.S. system ....
もちろんリードさんはオバマケアが結果的に無保険者を大幅に減らすであろうことや、保険会社が病歴のある人の加入を断ることを禁じる制度を作ったことは高く評価しているわけですが、根本的な問題解決にはほど遠いということなんでしょう。
あと、リードさんは医療保険制度の抜本的な改革に成功した台湾やスイスの取り組みも詳しく取り上げています。どちらも、まず最初にリベラル側が「全員が医療保険に加入できるべきだ」と声を上げ、それを国民が熱狂的に支持し、保守側が人気とりのためにそれを受け入れたという展開だったようです。あと、どちらも経済が好調だったという背景もあるそうです。
米国では2016年に民主党の大統領候補指名争いで健闘したバーニー・サンダース上院議員が"single-payer"のシステムを目指しています。これは医療保険を国が提供するという意味です。オバマケアの失敗を踏まえたうえで、より抜本的な改革を実現させるということなのでしょう。
じゃあ、2020年の大統領選で79歳になったサンダース氏が当選。そのときには2018年の中間選挙と大統領選と同時に行われる議会選挙で、上下両院ともに民主党が過半数を握っていて、サンダース氏が訴える抜本的な医療保険制度改革をトランプ政権にこりた共和党も受け入れる。そんなシナリオはどうでしょうか。
どうでしょうか。米国人のみなさん。
とても面白かった。American Sicknessよりも格段に読みやすい。米国医療がいかにしてダメになっていったかということはAmerican Sicknessでこれでもかと言わんばかりに書かれていたわけですが、こちらのThe Healing of Americaでは、他の国はどうしてダメになっていないのかということが書かれています。さらに、かつてはダメな制度だったのに改革に成功した、台湾とスイスのケースも紹介しています。なのでAmerican Sicknessよりも救いがあります。
書かれていることは単純。米国の医療制度をまともなものにするには、国民が「全員が医療保険に加入できるべきだ」という考え方で一致できるかどうかがキモだということです。世界の医療保険制度はいろんな仕組みがありますが、米国以外の先進国はすべてこの考え方に基づいています。
ところが米国ではこういう主張をすると、必ず「社会主義化された医療制度だ! ムダだらけで、革新も生まれない。国民の医療への選択肢も狭められる。自由を尊ぶ米国の理念に反する」という反発が出ます。そういった主張に、現在の医療保険制度で恩恵を受けている医療保険会社や医療機関、製薬会社が乗っかってロビー活動を展開するので、議会は動きがとれなくなります。オバマ大統領に上院60議席、下院過半数の議席を与えたって、問題は解決できなかったわけですからなかなか根深い問題です。
そこでリードさんは、こうした「社会主義化された医療制度だ!」という批判は的外れだと繰り返し説明します。
まず、他の先進国の医療制度は別に社会主義化されているわけではないという点です。
リードさんは先進国の医療制度を以下のように分類します。
ビスマルク型(ドイツ、日本など)=医療保険提供者が民間、医療サービス提供者も民間
ベバリッジ型(英国、北欧など)=医療保険提供者が国、医療サービス提供者も国
国民健康保険型(カナダ、韓国など)=医療保険提供者は国、医療サービス提供者は民間
まぁ、ベバレッジ型は国が全面的に関与していますから、バリバリの自由経済主義者からみれば「社会主義的」といえるかもしれません。でも英国を社会主義国だと思う人は多くはないです。あとビスマルク型や国民健康保険型は民間が関与していますから、社会主義ってわけじゃないですよね。
ただし、こうした民間が関与する仕組みでも規制はきついです。例えばビスマルク型として取り上げられている日本は、医療保険は主に企業別の医療保険組合が提供していて、医療サービスも民間がやっているわけですが、医薬品の価格なんかは政府がコントロールしているわけです。それは「すべての国民が医療保険に加入できるべきだ」との考え方から正当化されます。こうした厳しい規制のおかげで日本の医療費は国際的にみて安いですし、しかも患者は自由に医療機関を選べる。
ベバレッジ型は医療保険も医療サービスも国が主体です。そのおかげで患者は病院に行っても請求書を受け取ることはありません。それだったら患者が好きなだけ病院に行くことになって医療費が高騰しそうなものですが、「国はすべての人を保険でカバーするけれど、すべての医療行為をカバーするわけじゃない」という立場をとっているため、たいしたことのない病気であったりすれば病院にかかる前に行くことになる"general practitioner"のオフィスの段階で「病院に行かなくていいですよ。様子をみましょう」ということになる。また、すべての医療費は国民の税金で負担することになりますから、有権者や政治家も医療費の無駄遣いには敏感です。「94歳の女性への人工関節手術を認めるべきか」「50歳以上の男性すべてに前立腺がんの検査を認めるべきか」といった問題が、医学的なエビデンスの基づいて議論されたりします。
国民健康保険型も医療保険を国が提供するわけですから、どんな治療に対しても費用を払うというわけではないです。医療サービスは民間ですから、民間同士の競争がありますし、国がいくらでも医療費を払ってくれるわけじゃないので、コスト意識が働きます。
もちろん、それぞれの制度には問題点があります。日本なんかは「医療従事者の報酬が低い」なんていう問題点も指摘されます。ベバレッジ型の英国や北欧は米国に比べて税金が高いです。国民健康保険型のカナダなんかは、緊急性がない治療の場合は、受診までに数カ月~1年以上も待たねばならないという問題があります。
ただ、それだって米国の医療制度よりは格段にいいわけです。一人あたり医療費は安いし、健康を維持できる年齢も高い。どこの国だって「米国みたいにはなりたくない」と思っています。それなのに、どうして米国が現在の米国の医療制度にこだわる必要があるのかというわけです。
リードさんはさらに、米国内の「他の国の医療制度は自由を尊ぶ米国の理念に反する」という意見も的外れだとします。それは米国の医療制度のなかには、すでにこれらの仕組みが根を張っているからです。
例えば、高齢者向け公的医療保険のメディケアは国が医療費を負担して民間が医療サービスを提供していますから国民健康保険型です。退役軍人向けには専門の病院もありますから、これは医療保険も医療サービスも国が提供するベバリッジ型です。そのほかの企業が提供する医療保険に加入している米国人にとっては、ビスマルク型の医療保険制度が存在しているわけです。
ただ、米国には「全員が医療保険に加入できるべきだ」という理念がないために、どの制度からもこぼれてしまっている人たちがいます。メディケアに入れるほど年寄りではないし、低所得者向けのメディケイドに入れるほど所得が低いわけでもないし、医療保険を提供してくれる会社に勤めているわけでもないし、退役軍人でもないという人たちですね。この人たちは行き所がないです。利益目的の保険会社に高い保険料や高い自己負担額を強いられ、病院からも高い医療費を請求されて、生活を維持できなくなってしまうような人たちです。さらに医療保険を提供してくれる会社に勤めていたけど、病気で仕事を続けられなくなって退職したら、医療保険がなくなったなんていう事態も起きるわけです。
また、こうした医療保険制度のパッチワーク状態が余計なコストを生みます。オバマケアはこのパッチワークに拍車をかけました。
リードさんはこう書いています。
Facing an entrenched army of well-financed and powerful interests determined to preserve the status quo, Obama declared from the start that he would not seek to replace the existing health care system with a simpler, cheaper model. "We have to build on what we've got already," Obama said. The result was an enormously expensive and complicated piece of legislation ---the "Obamacare" bill runs to 2,400 pages of legalese ---that retains most of the structure of the U.S. system ....
もちろんリードさんはオバマケアが結果的に無保険者を大幅に減らすであろうことや、保険会社が病歴のある人の加入を断ることを禁じる制度を作ったことは高く評価しているわけですが、根本的な問題解決にはほど遠いということなんでしょう。
あと、リードさんは医療保険制度の抜本的な改革に成功した台湾やスイスの取り組みも詳しく取り上げています。どちらも、まず最初にリベラル側が「全員が医療保険に加入できるべきだ」と声を上げ、それを国民が熱狂的に支持し、保守側が人気とりのためにそれを受け入れたという展開だったようです。あと、どちらも経済が好調だったという背景もあるそうです。
米国では2016年に民主党の大統領候補指名争いで健闘したバーニー・サンダース上院議員が"single-payer"のシステムを目指しています。これは医療保険を国が提供するという意味です。オバマケアの失敗を踏まえたうえで、より抜本的な改革を実現させるということなのでしょう。
じゃあ、2020年の大統領選で79歳になったサンダース氏が当選。そのときには2018年の中間選挙と大統領選と同時に行われる議会選挙で、上下両院ともに民主党が過半数を握っていて、サンダース氏が訴える抜本的な医療保険制度改革をトランプ政権にこりた共和党も受け入れる。そんなシナリオはどうでしょうか。
どうでしょうか。米国人のみなさん。
2017年7月21日金曜日
"An American Sickness"
"An American Sickness: How Healthcare Became Big Business and How You Can Take It Back"という本を読んだ。医師として働いたこともあるニューヨーク・タイムズの元記者、Elisabeth Rosenthalが米国の医療制度が抱える問題について書いた本です。2017年4月発売。
5月にニューヨーク・タイムズの書評で米国の医療制度を理解するための本として紹介されてたので、ちょっと読んでみた。聞き慣れない医療用語の多さとか、医療制度に関する基本的な知識の欠如もあって、なかなかスムーズには読めませんでした。でも考えさせられるところが多くて、面白かった。
米国の医療制度は悪名高いです。OECDのデータによると、2015年の米国の1人あたり医療費(実質、購買力平価ベース)は8748ドルで世界1位。2位のスイス(6493ドル)に大差をつけています。日本は4036ドルですから、米国は日本の2倍以上の医療費がかかっていることになります。
OECDのページ
医療費が高いと、医療保険の保険料は高くなります。そうなると医療保険に入れなかったり、入りたくなくなったりする人が出てきます。
そういう状況に対応しようとしたのが2010年に成立したオバマケアだったわけです。でもオバマケア後も米国の医療費は上がり続けています。オバマケアが2014年に個人に保険加入を義務づけるなどしてから無保険者は1900万人減っていますが、それは保険料を連邦政府として負担したからであって、米国の医療費が世界的にみて例外的に高いという根本的な問題を解決できたわけではありません。
で、この本はどうしてこんなことになっているのかを説明しようとした本です。ただ、話が話だけに事は単純ではありません。
エピローグの言葉を引用すると、
No one player created the mess that is the $3 trillion American medical system in 2017. People in every sector of medicine are feeding trough: insurers, hospitals, doctors, manufacturers, politicians, regulators, charities, and more.
とのことです。この本は医療費や保険料の高騰の背景を象徴するいろんなエピソードを紹介しながら進みます。だからまとまりはないです。ただし、ローゼンタールさんは冒頭で、米国の医療制度がまともに機能していないことを象徴する、米国の医療がこだわる10の原則なるものを示しています。
1.常に治療せよ。最初の選択肢は最も高価な治療法。
2.一生治療を続けることは、治癒することよりも好ましい。
3.治療そのものよりも、快適さやマーケティングが大切。
4.技術革新の時代において、医療価格は上がり続ける。
5.患者は常に言いなり。常に米国の医療を購入する。
6.医療では競合があっても価格はさがらず、むしろ上がる。
7.医療機関は規模が大きくなっても価格は下げない。ただ稼ぎを増やすだけ。
8.適正価格などない。無保険者が最も高い医療費を払う。
9.請求書に基準はない。あらゆるものにお金がかかる。
10.患者が負担するギリギリまで価格は上がる。
まぁ、なんとなく分かるような内容です。
そもそも医療というのは病気の人を相手にしているわけです。で、病気の人は働けないわけですから、お金なんかもっていない。だから本来、医者なんていう仕事は儲かるハズがない。ローゼンタールさんによると、100年ほど前には、そもそも医療というのは簡素なもので、安くて、多くの場合は宗教関係者によって運営されていました。病院というのは人々が死ぬための場所でもあったのです。
一方で、19世紀後半には、企業が従業員の医療費を負担する仕組みが生まれます。従業員が働けなくなることは、会社にとって損失だからです。1890年代、ワシントン州の木材会社は従業員が医師にかかる際に1カ月あたり50セントを負担したそうで、こうした仕組みが今の米国における企業負担型の医療保険のはしりだそうです。
現在の医療保険の元祖は1920年代までにテキサス州ダラスで生まれました。教職員組合の加入者を対象に、年間6ドルを払えば、21日分の入院治療が受けられるというものです。ただし保険の支払いは、最初に1日あたり5ドルの自己負担を1週間続けた後で発動されるという仕組みでした。21日という期間は、当時の医療水準では21日もあれば患者の多くは治るか、死ぬかのどちらになるという判断で決められました。
第二次世界大戦が終わると、企業は人手不足に陥ります。そこで企業は従業員に医療保険を提供することで人を集めようとします。連邦政府もこれを後押しして、従業員の医療費は非課税とすることにしました。すると1940年から1955年にかけて、米国の保険加入者は人口の10%から60%まで急増しました。保険を提供していたのはBlueCrossのようは非営利組織で、年齢や健康状態に関わらず、すべての加入者は同じ額の保険料を払っていました。
こんな風にして医療保険への需要が高まってくると、営利目的の保険会社が医療保険に参入してきます。こうした保険会社は年齢によって保険料を変えたり、カバーの範囲を変えたりして、より安い保険料を提示するようになります。1951年までにはAetnaやCignaがシェアを伸ばし、BlueCrossのようなすべての保険加入者を平等に扱う非営利組織は不利になっていきます。そして1994年、BlueCrossは営利組織になることを容認。社会的な使命を意識する保険会社が駆逐されてしまった形になりました。
1993年、保険会社は保険料の95%を医療費に使っていましたが、現在では80%近くまで下がっています。なかには64.4%なんていう保険会社もあるそうです。オバマケアは保険会社に対して、この比率(medical loss ratio)を80~85%にするよう求めました。ただ、高齢者向け公的医療保険のメディケアのmedical loss ratioは98%ですから、オバマケアは十分甘いともいえます。
つまり保険会社は公的な使命を忘れてしまっていて、オバマケアもそれを容認してしまったということです。
医療機関にも問題があります。そもそもほとんどの医療機関は非営利組織として運営されているため、利益を上げることができません。すると医療費として集めたお金が実際にかかったコストよりも大きくなると、余ったお金を無駄遣いする構造になっています。つまり節約するという意識がない。1960年代にメディケアが登場すると、65歳以下の世代でも保険加入が進みます。すると患者の方でも自分がいくら負担するかを気にしなくなってきて、医療機関は好き勝手な医療費を請求するようになります。1967年から1983年にかけて、メディケアの支払い額は30億ドルから370億ドルまで増えました。
メディケアも対応に乗り出します。1980年代の半ばにはdiagnosis related group (DRG)という仕組みを導入し、治療の種類に応じて支払い額を固定するよう決めました。一方、民間の保険会社はDRGでは医療費が高止まりする可能性があるとして、ケアマネジャーを雇って適正な医療費の価格をはじき出して、医療機関と交渉する仕組みを採用します。
すると、医療機関はメディケアや交渉力のある保険会社が手強くなってきたと判断し、小さな保険会社や無保険の患者に高い医療費を請求するようになります。さらに医療機関は収入を増やすためにコンサルタントを雇い、戦略的な医療費設定(strategic pricing)を始めます。コンサルタントは保険会社が支払いに応じないような品目での請求を止め、酸素吸入や処方薬のような保険会社が支払いに応じることが多い品目での請求を増やし、その結果、こうした品目として請求される医療費が実際の費用からかけ離れた高額になるといった事態が生じます。大手の医療コンサルタント企業は年間342億ドルもの売上を稼いでいるんだそうです。
さらに医療機関のなかには医師に対して固定給ではなく、行った治療の収益性に応じて報酬を払うケースもあります。治療や検査の複雑さを示すレベル1~5までの分類に応じて、医師が受け取る報酬が決まっているわけです。普通にひざの関節への注射をすれば1200ドルの収入になるけれど、その際に超音波で針を刺す場所を特定すればさらに300ドルの収入になる。ひざへの注射は特段難しいわけじゃないので、超音波による検査は必要ないんだけれど、医師は報酬を増やすために超音波を使うようになるといった具合で医療費が上がっていきます。
メディケアにまわされた請求を分析したところ、緊急治療室で治療を受けた患者のうちレベル4と5の治療を受けた患者の割合は2001年には4分の1ですたが、2008年には半分にまで増えていた。一方、レベル2の請求は15%まで半減。医療機関2400カ所のうち500カ所では、患者の60%に対してレベル4と5の治療が行われていました。
つまり医療機関は保険会社やメディケアなんかの監視の目をかいくぐるようにして、患者から医療費をむしりとっているという構図です。病院の経営者の収入は2011年から2012年にかけて24.2%増えました。オバマケア成立後のことです。医師の報酬も2009年以降、増え続けています。医師以外の職業ではみられない現象だそうです。ローゼンタールさんが医療現場で働いていた1990年台、医師たちは「時給で考えたら、配管工より給料が安い」なんて文句を言っていたそうです。でも、今はNBAのレブロン・ジェームズやゴールドマン・サックスの会長が比較の対象になっているようだと、ローゼンタールさんは書いています。
メディケアの方にも間抜けなところがあります。メディケアは地域ごとに支払い額を決めているのですが、その支払い額はその地域の医療機関による過去の請求額などを基準に決められています。しかし、ある地域で特定の治療を行う医療機関が少数であれば、それらの医療機関はお互いに競争するのではなく、そろって請求額を上げていこうという動機が生まれます。その結果、2014年段階で、ニューヨークのクイーンズでの胆嚢手術のコストは2000ドルであるにも関わらず、20マイル離れたロングアイランドのナッソー郡での胆嚢手術は2万5000ドルと計上される。そんなおかしな事態が起きています。
メディケアは1980年代に医療行為の時間や管理コスト、医師育成にかかるコスト、過誤によるコストをもとにしてrelative value units(RVUs)を算出。これをもとに医療機関への支払い額を決めるアルゴリズムを作ります。こうしたアルゴリズムは常にアップデートする必要があるわけですが、メディケアはこの任務をAmerican Medical Associationに委ねてしまします。医療行為の適正価格を医療機関自身に決めさせてしまうようなものです。AMAは3年に一度、Relative Value Scale Update Committeeを開いて見直しを進めるのですが、この委員会は各医療関連団体のロビーイング競争の場になっています。
もちろん製薬会社も無茶苦茶です。最近でも、安い値段で売られている薬の販売に関わる権利を買い集めて、一気に大幅に値上げするといった悪行がニュースになります。
かつて医薬品を開発した研究者は特許をとろうとはしませんでした。ポリオワクチンの開発に力を尽くしたJonas Salkeは「誰がポリオワクチンの特許を持っているのか」と問われて、"Well, the people, I would say. There is no patent. Could you patent the sun?"と答えたそうです。実際、当時の法制度では、多くの研究者が関わったポリオワクチンは特許をとることができないと判断されていたそうです。
しかし1980年のBayh-Dole Actで政府の資金援助を受けた研究から得られた成果でも特許を取ることが認められるようになりました。今ではひとつの医薬品に対して3.5件の特許がかかっています。1984年の別の法律改正(Hatch-Waxman)ではジェネリック医薬品の導入促進のための規制緩和が実現しましたが、同時に大手製薬会社を納得させるために、一部のケースで特許期間の延長を認めました。こうしたジェネリック企業と大手製薬会社の軋轢が法廷闘争に発展すると、その間はジェネリック医薬品の導入が遅れるケースも出ることになります。米国は欧州に比べて特許の力が強く、医薬品の価格にも規制がかかっていないため、多くの製薬企業が米国に投資するようになっています。
大手製薬会社は自社の医薬品が特許切れに寸前になると、わずかに仕様や成分を変えた医薬品を開発して新たに特許を取り直すという戦略も採ります。例えばワーナーチルコットは経口避妊薬Loestrin24 Feが特許切れになる前に、「噛めるタイプ」のMinastrin24 Feを販売。Loestrin24 Feの販売を取りやめます。新薬の方は旧薬よりも3割ほど高い価格設定ですが、まだジェネリックは出ていないので、利用者は新薬に乗り換えざるを得ません。
1994年に特許を得たスプレータイプの処方薬Flonaseの場合、2006年にジェネリック版が登場。Flonaseを販売していたグラクソスミソクラインは訴訟を起こすなどして抵抗しましたが、2010年にはジェネリック版が市販薬として20ドルの価格でドラッグストアの店頭に並ぶようになりました。処方薬であるFlonaseは医療保険の対象となる分、価格は高く設定されていますから、ジェネリック版に市場を奪われることは必至です。しかしそこでグラクソスミソクラインはFlonaseを市販薬に変更し、市場に投入。すると米国法では、同じ医薬品がひとつの市場で同時に売られることを禁じているため、ジェネリック版のメーカーは在庫を売り切って工場を閉鎖するよう要求されることになりました。さらに米国では、処方薬を市販薬に変更した場合には、3年間の市場独占期間が保障されていて、新規の参入もブロックすることができます。グラクソスミソクラインはこの市販薬版のFlonaseを40ドルで売ったとのことです。
とまぁですね、こんなややこしいエピソードが山ほど書かれている本です。ややこしいので、ここまでに書いた文章にも誤解があるかもしれません。このほか患者の側のかわいそうな話も満載です。
本の後半では、医療の消費者である患者の側はどのように対応すればいいかといった話も出てくるのですが、正直、これだけ根深い問題を見せられた後ではなかなか明るい希望は抱けません。多分、政策上とか理論上ではできることはいくらでもあるのでしょう。でも、政治の状況を考えれば、なんか絶望的です。
オバマケア(Affordable Care Act)についてこんな記述があります。
The ACA did little directly, however, to control run-away spending. President Obama had initially included several ideas in the bill that would have done so ---like national negotiation for pharmaceutical prices. To get a healthcare bill passed and to win support from powerful groups like PhRMA, the AMA, the American Hospital Association, and America's Health Insurance Plans, the administration had to cave on anything that would directly limit the industry's ability to profit.
医療業界によるロビイングは共和党だけでなく、もちろん民主党にも浸透しています。ハリー・リードとかチャック・シューマーのようないかにも悪そうな人たちだけならまだしも、エリザベス・ウォレンやエイミー・クローブシャーのような、いかにも「庶民の味方」といったイメージの議員まで医療業界の世話になっているようです。そんなことになっていたら、オバマ大統領だって法律を通そうと思えば、妥協せざるをえなかったということなのかもしれません。
トランプ大統領だったら、医療業界ごとぶっとばしてくれる。そんな期待もあるかもしれません。でもトランプ大統領だって法律を通すには議会の協力を得ねばなりません。予算編成で強い影響力を持つ上院財政委員会の委員長は医薬品業界とのつながりで有名なオリン・ハッチです。他の共和党議員だって、医療業界にお世話になっているだろうことは想像に難くありません。
まぁ、病気にならないように気をつけるしかないですかね。100年前と同じですね。
5月にニューヨーク・タイムズの書評で米国の医療制度を理解するための本として紹介されてたので、ちょっと読んでみた。聞き慣れない医療用語の多さとか、医療制度に関する基本的な知識の欠如もあって、なかなかスムーズには読めませんでした。でも考えさせられるところが多くて、面白かった。
米国の医療制度は悪名高いです。OECDのデータによると、2015年の米国の1人あたり医療費(実質、購買力平価ベース)は8748ドルで世界1位。2位のスイス(6493ドル)に大差をつけています。日本は4036ドルですから、米国は日本の2倍以上の医療費がかかっていることになります。
OECDのページ
医療費が高いと、医療保険の保険料は高くなります。そうなると医療保険に入れなかったり、入りたくなくなったりする人が出てきます。
そういう状況に対応しようとしたのが2010年に成立したオバマケアだったわけです。でもオバマケア後も米国の医療費は上がり続けています。オバマケアが2014年に個人に保険加入を義務づけるなどしてから無保険者は1900万人減っていますが、それは保険料を連邦政府として負担したからであって、米国の医療費が世界的にみて例外的に高いという根本的な問題を解決できたわけではありません。
で、この本はどうしてこんなことになっているのかを説明しようとした本です。ただ、話が話だけに事は単純ではありません。
エピローグの言葉を引用すると、
No one player created the mess that is the $3 trillion American medical system in 2017. People in every sector of medicine are feeding trough: insurers, hospitals, doctors, manufacturers, politicians, regulators, charities, and more.
とのことです。この本は医療費や保険料の高騰の背景を象徴するいろんなエピソードを紹介しながら進みます。だからまとまりはないです。ただし、ローゼンタールさんは冒頭で、米国の医療制度がまともに機能していないことを象徴する、米国の医療がこだわる10の原則なるものを示しています。
1.常に治療せよ。最初の選択肢は最も高価な治療法。
2.一生治療を続けることは、治癒することよりも好ましい。
3.治療そのものよりも、快適さやマーケティングが大切。
4.技術革新の時代において、医療価格は上がり続ける。
5.患者は常に言いなり。常に米国の医療を購入する。
6.医療では競合があっても価格はさがらず、むしろ上がる。
7.医療機関は規模が大きくなっても価格は下げない。ただ稼ぎを増やすだけ。
8.適正価格などない。無保険者が最も高い医療費を払う。
9.請求書に基準はない。あらゆるものにお金がかかる。
10.患者が負担するギリギリまで価格は上がる。
まぁ、なんとなく分かるような内容です。
そもそも医療というのは病気の人を相手にしているわけです。で、病気の人は働けないわけですから、お金なんかもっていない。だから本来、医者なんていう仕事は儲かるハズがない。ローゼンタールさんによると、100年ほど前には、そもそも医療というのは簡素なもので、安くて、多くの場合は宗教関係者によって運営されていました。病院というのは人々が死ぬための場所でもあったのです。
一方で、19世紀後半には、企業が従業員の医療費を負担する仕組みが生まれます。従業員が働けなくなることは、会社にとって損失だからです。1890年代、ワシントン州の木材会社は従業員が医師にかかる際に1カ月あたり50セントを負担したそうで、こうした仕組みが今の米国における企業負担型の医療保険のはしりだそうです。
現在の医療保険の元祖は1920年代までにテキサス州ダラスで生まれました。教職員組合の加入者を対象に、年間6ドルを払えば、21日分の入院治療が受けられるというものです。ただし保険の支払いは、最初に1日あたり5ドルの自己負担を1週間続けた後で発動されるという仕組みでした。21日という期間は、当時の医療水準では21日もあれば患者の多くは治るか、死ぬかのどちらになるという判断で決められました。
第二次世界大戦が終わると、企業は人手不足に陥ります。そこで企業は従業員に医療保険を提供することで人を集めようとします。連邦政府もこれを後押しして、従業員の医療費は非課税とすることにしました。すると1940年から1955年にかけて、米国の保険加入者は人口の10%から60%まで急増しました。保険を提供していたのはBlueCrossのようは非営利組織で、年齢や健康状態に関わらず、すべての加入者は同じ額の保険料を払っていました。
こんな風にして医療保険への需要が高まってくると、営利目的の保険会社が医療保険に参入してきます。こうした保険会社は年齢によって保険料を変えたり、カバーの範囲を変えたりして、より安い保険料を提示するようになります。1951年までにはAetnaやCignaがシェアを伸ばし、BlueCrossのようなすべての保険加入者を平等に扱う非営利組織は不利になっていきます。そして1994年、BlueCrossは営利組織になることを容認。社会的な使命を意識する保険会社が駆逐されてしまった形になりました。
1993年、保険会社は保険料の95%を医療費に使っていましたが、現在では80%近くまで下がっています。なかには64.4%なんていう保険会社もあるそうです。オバマケアは保険会社に対して、この比率(medical loss ratio)を80~85%にするよう求めました。ただ、高齢者向け公的医療保険のメディケアのmedical loss ratioは98%ですから、オバマケアは十分甘いともいえます。
つまり保険会社は公的な使命を忘れてしまっていて、オバマケアもそれを容認してしまったということです。
医療機関にも問題があります。そもそもほとんどの医療機関は非営利組織として運営されているため、利益を上げることができません。すると医療費として集めたお金が実際にかかったコストよりも大きくなると、余ったお金を無駄遣いする構造になっています。つまり節約するという意識がない。1960年代にメディケアが登場すると、65歳以下の世代でも保険加入が進みます。すると患者の方でも自分がいくら負担するかを気にしなくなってきて、医療機関は好き勝手な医療費を請求するようになります。1967年から1983年にかけて、メディケアの支払い額は30億ドルから370億ドルまで増えました。
メディケアも対応に乗り出します。1980年代の半ばにはdiagnosis related group (DRG)という仕組みを導入し、治療の種類に応じて支払い額を固定するよう決めました。一方、民間の保険会社はDRGでは医療費が高止まりする可能性があるとして、ケアマネジャーを雇って適正な医療費の価格をはじき出して、医療機関と交渉する仕組みを採用します。
すると、医療機関はメディケアや交渉力のある保険会社が手強くなってきたと判断し、小さな保険会社や無保険の患者に高い医療費を請求するようになります。さらに医療機関は収入を増やすためにコンサルタントを雇い、戦略的な医療費設定(strategic pricing)を始めます。コンサルタントは保険会社が支払いに応じないような品目での請求を止め、酸素吸入や処方薬のような保険会社が支払いに応じることが多い品目での請求を増やし、その結果、こうした品目として請求される医療費が実際の費用からかけ離れた高額になるといった事態が生じます。大手の医療コンサルタント企業は年間342億ドルもの売上を稼いでいるんだそうです。
さらに医療機関のなかには医師に対して固定給ではなく、行った治療の収益性に応じて報酬を払うケースもあります。治療や検査の複雑さを示すレベル1~5までの分類に応じて、医師が受け取る報酬が決まっているわけです。普通にひざの関節への注射をすれば1200ドルの収入になるけれど、その際に超音波で針を刺す場所を特定すればさらに300ドルの収入になる。ひざへの注射は特段難しいわけじゃないので、超音波による検査は必要ないんだけれど、医師は報酬を増やすために超音波を使うようになるといった具合で医療費が上がっていきます。
メディケアにまわされた請求を分析したところ、緊急治療室で治療を受けた患者のうちレベル4と5の治療を受けた患者の割合は2001年には4分の1ですたが、2008年には半分にまで増えていた。一方、レベル2の請求は15%まで半減。医療機関2400カ所のうち500カ所では、患者の60%に対してレベル4と5の治療が行われていました。
つまり医療機関は保険会社やメディケアなんかの監視の目をかいくぐるようにして、患者から医療費をむしりとっているという構図です。病院の経営者の収入は2011年から2012年にかけて24.2%増えました。オバマケア成立後のことです。医師の報酬も2009年以降、増え続けています。医師以外の職業ではみられない現象だそうです。ローゼンタールさんが医療現場で働いていた1990年台、医師たちは「時給で考えたら、配管工より給料が安い」なんて文句を言っていたそうです。でも、今はNBAのレブロン・ジェームズやゴールドマン・サックスの会長が比較の対象になっているようだと、ローゼンタールさんは書いています。
メディケアの方にも間抜けなところがあります。メディケアは地域ごとに支払い額を決めているのですが、その支払い額はその地域の医療機関による過去の請求額などを基準に決められています。しかし、ある地域で特定の治療を行う医療機関が少数であれば、それらの医療機関はお互いに競争するのではなく、そろって請求額を上げていこうという動機が生まれます。その結果、2014年段階で、ニューヨークのクイーンズでの胆嚢手術のコストは2000ドルであるにも関わらず、20マイル離れたロングアイランドのナッソー郡での胆嚢手術は2万5000ドルと計上される。そんなおかしな事態が起きています。
メディケアは1980年代に医療行為の時間や管理コスト、医師育成にかかるコスト、過誤によるコストをもとにしてrelative value units(RVUs)を算出。これをもとに医療機関への支払い額を決めるアルゴリズムを作ります。こうしたアルゴリズムは常にアップデートする必要があるわけですが、メディケアはこの任務をAmerican Medical Associationに委ねてしまします。医療行為の適正価格を医療機関自身に決めさせてしまうようなものです。AMAは3年に一度、Relative Value Scale Update Committeeを開いて見直しを進めるのですが、この委員会は各医療関連団体のロビーイング競争の場になっています。
もちろん製薬会社も無茶苦茶です。最近でも、安い値段で売られている薬の販売に関わる権利を買い集めて、一気に大幅に値上げするといった悪行がニュースになります。
かつて医薬品を開発した研究者は特許をとろうとはしませんでした。ポリオワクチンの開発に力を尽くしたJonas Salkeは「誰がポリオワクチンの特許を持っているのか」と問われて、"Well, the people, I would say. There is no patent. Could you patent the sun?"と答えたそうです。実際、当時の法制度では、多くの研究者が関わったポリオワクチンは特許をとることができないと判断されていたそうです。
しかし1980年のBayh-Dole Actで政府の資金援助を受けた研究から得られた成果でも特許を取ることが認められるようになりました。今ではひとつの医薬品に対して3.5件の特許がかかっています。1984年の別の法律改正(Hatch-Waxman)ではジェネリック医薬品の導入促進のための規制緩和が実現しましたが、同時に大手製薬会社を納得させるために、一部のケースで特許期間の延長を認めました。こうしたジェネリック企業と大手製薬会社の軋轢が法廷闘争に発展すると、その間はジェネリック医薬品の導入が遅れるケースも出ることになります。米国は欧州に比べて特許の力が強く、医薬品の価格にも規制がかかっていないため、多くの製薬企業が米国に投資するようになっています。
大手製薬会社は自社の医薬品が特許切れに寸前になると、わずかに仕様や成分を変えた医薬品を開発して新たに特許を取り直すという戦略も採ります。例えばワーナーチルコットは経口避妊薬Loestrin24 Feが特許切れになる前に、「噛めるタイプ」のMinastrin24 Feを販売。Loestrin24 Feの販売を取りやめます。新薬の方は旧薬よりも3割ほど高い価格設定ですが、まだジェネリックは出ていないので、利用者は新薬に乗り換えざるを得ません。
1994年に特許を得たスプレータイプの処方薬Flonaseの場合、2006年にジェネリック版が登場。Flonaseを販売していたグラクソスミソクラインは訴訟を起こすなどして抵抗しましたが、2010年にはジェネリック版が市販薬として20ドルの価格でドラッグストアの店頭に並ぶようになりました。処方薬であるFlonaseは医療保険の対象となる分、価格は高く設定されていますから、ジェネリック版に市場を奪われることは必至です。しかしそこでグラクソスミソクラインはFlonaseを市販薬に変更し、市場に投入。すると米国法では、同じ医薬品がひとつの市場で同時に売られることを禁じているため、ジェネリック版のメーカーは在庫を売り切って工場を閉鎖するよう要求されることになりました。さらに米国では、処方薬を市販薬に変更した場合には、3年間の市場独占期間が保障されていて、新規の参入もブロックすることができます。グラクソスミソクラインはこの市販薬版のFlonaseを40ドルで売ったとのことです。
とまぁですね、こんなややこしいエピソードが山ほど書かれている本です。ややこしいので、ここまでに書いた文章にも誤解があるかもしれません。このほか患者の側のかわいそうな話も満載です。
本の後半では、医療の消費者である患者の側はどのように対応すればいいかといった話も出てくるのですが、正直、これだけ根深い問題を見せられた後ではなかなか明るい希望は抱けません。多分、政策上とか理論上ではできることはいくらでもあるのでしょう。でも、政治の状況を考えれば、なんか絶望的です。
オバマケア(Affordable Care Act)についてこんな記述があります。
The ACA did little directly, however, to control run-away spending. President Obama had initially included several ideas in the bill that would have done so ---like national negotiation for pharmaceutical prices. To get a healthcare bill passed and to win support from powerful groups like PhRMA, the AMA, the American Hospital Association, and America's Health Insurance Plans, the administration had to cave on anything that would directly limit the industry's ability to profit.
医療業界によるロビイングは共和党だけでなく、もちろん民主党にも浸透しています。ハリー・リードとかチャック・シューマーのようないかにも悪そうな人たちだけならまだしも、エリザベス・ウォレンやエイミー・クローブシャーのような、いかにも「庶民の味方」といったイメージの議員まで医療業界の世話になっているようです。そんなことになっていたら、オバマ大統領だって法律を通そうと思えば、妥協せざるをえなかったということなのかもしれません。
トランプ大統領だったら、医療業界ごとぶっとばしてくれる。そんな期待もあるかもしれません。でもトランプ大統領だって法律を通すには議会の協力を得ねばなりません。予算編成で強い影響力を持つ上院財政委員会の委員長は医薬品業界とのつながりで有名なオリン・ハッチです。他の共和党議員だって、医療業界にお世話になっているだろうことは想像に難くありません。
まぁ、病気にならないように気をつけるしかないですかね。100年前と同じですね。
2017年6月16日金曜日
"The Ax"
"The Ax"という小説を読んだ。Donald Westlakeが1997年に書いた作品です。ウエストレイクはエドガー賞を3度獲ったほどの著名作家です。私は全然知りませんでしたが。
私はもともとミステリーが好きで、これまでJ.A. Konrathの本を読んでいたのですが、どうもこの人の本はジョーク満載で面白いんだけど、描写がグロいところがあって、なんか食傷気味になってきたところでした。
そこで、以前読んだ本のなかで、Konrath自身が好きだと書いていた作家をピックアップして、そのなかから、私が気に入るような作家を捜してみようと思ったのです。
Konrathが好きだと書いていた作家は6人。
Janet Evanovich
Rovert Parker
Lawrence Block
Robert Crais
Donald Westlake
Ridley Pearson
一人も読んだことがないので「このミステリーがすごい!」の過去のランキングを調べてみたところ、このうち、ローレンス・ブロックと、ウエストレイクは過去に何度もトップ10に入っています。
2013年10位のローレンス・ブロック「償いの報酬」A Drop of the Hard Stuff (Matthew Scudder 17)
2004年5位のドナルド・ウエストレイク「鉤」The Hook(2000, シリーズなし)
2002年4位のドナルド・ウエストレイク「斧」The Ax(1997, シリーズなし)
1998年9位のドナルド・ウエストレイク「天から降ってきた泥棒」Good Behavior (1985, Dortmunder)
1995年3位のドナルド・ウエストレイク「踊る黄金像」Dancing Aztecs(1976, シリーズなし)
1994年6位のローレンス・ブロック「倒錯の舞踏」A Dance at the Slaughterhouse (Matthew Scudder 9)
1993年2位のローレンス・ブロック「墓場への切符」A Ticket to the Boneyard (Matthew Scudder 8)
じゃぁ、このなかからどれを読むかということですが、シリーズものじゃない、比較的新しいという基準で"The Ax"を選んだ。"The Hook"を選ばなかった理由は忘れた。
で、肝心の読んでみた感想ですが、Konrathの作品とは正反対で「ジョークは一切無く、グロさもほとんどない」といった作風です。1990年台半ばのコネチカット、ニューヨーク、マサチューセッツを舞台にして、製紙メーカーをリストラされた男が殺人を繰り返すという話。一貫して犯人の視点で書かれているので、ミステリーではありません。本当に淡々と話が進んでいきます。
じゃぁ、面白くないかというと、そうではなくて、なかなか読ませます。リストラされた男が殺人を始めるまでの屈折した心理とか、家族との関係とか、ターゲットに対する心情とか、だんだんと犯罪慣れしていく様子とかが詳細に描かれていきます。描写がグロいわけじゃないですが、犯人の身勝手な理屈はなかなかにグロテスクです。また、この男をリストラした会社はコネチカットの工場を閉めて、カナダに製造拠点を移したという設定になっています。NAFTA(1994年発効)なんかも言及されていて、今日的な話題である「米国における製造業の衰退」なんていうテーマも重ね合わせてしまいますね。
淡々と話は進みますが、ラストにどうなるかは最後まで分かりません。そういった意味でも面白い。
ウエストレイクは多作な人みたいなので、しばらく楽しめそう。
私はもともとミステリーが好きで、これまでJ.A. Konrathの本を読んでいたのですが、どうもこの人の本はジョーク満載で面白いんだけど、描写がグロいところがあって、なんか食傷気味になってきたところでした。
そこで、以前読んだ本のなかで、Konrath自身が好きだと書いていた作家をピックアップして、そのなかから、私が気に入るような作家を捜してみようと思ったのです。
Konrathが好きだと書いていた作家は6人。
Janet Evanovich
Rovert Parker
Lawrence Block
Robert Crais
Donald Westlake
Ridley Pearson
一人も読んだことがないので「このミステリーがすごい!」の過去のランキングを調べてみたところ、このうち、ローレンス・ブロックと、ウエストレイクは過去に何度もトップ10に入っています。
2013年10位のローレンス・ブロック「償いの報酬」A Drop of the Hard Stuff (Matthew Scudder 17)
2004年5位のドナルド・ウエストレイク「鉤」The Hook(2000, シリーズなし)
2002年4位のドナルド・ウエストレイク「斧」The Ax(1997, シリーズなし)
1998年9位のドナルド・ウエストレイク「天から降ってきた泥棒」Good Behavior (1985, Dortmunder)
1995年3位のドナルド・ウエストレイク「踊る黄金像」Dancing Aztecs(1976, シリーズなし)
1994年6位のローレンス・ブロック「倒錯の舞踏」A Dance at the Slaughterhouse (Matthew Scudder 9)
1993年2位のローレンス・ブロック「墓場への切符」A Ticket to the Boneyard (Matthew Scudder 8)
じゃぁ、このなかからどれを読むかということですが、シリーズものじゃない、比較的新しいという基準で"The Ax"を選んだ。"The Hook"を選ばなかった理由は忘れた。
で、肝心の読んでみた感想ですが、Konrathの作品とは正反対で「ジョークは一切無く、グロさもほとんどない」といった作風です。1990年台半ばのコネチカット、ニューヨーク、マサチューセッツを舞台にして、製紙メーカーをリストラされた男が殺人を繰り返すという話。一貫して犯人の視点で書かれているので、ミステリーではありません。本当に淡々と話が進んでいきます。
じゃぁ、面白くないかというと、そうではなくて、なかなか読ませます。リストラされた男が殺人を始めるまでの屈折した心理とか、家族との関係とか、ターゲットに対する心情とか、だんだんと犯罪慣れしていく様子とかが詳細に描かれていきます。描写がグロいわけじゃないですが、犯人の身勝手な理屈はなかなかにグロテスクです。また、この男をリストラした会社はコネチカットの工場を閉めて、カナダに製造拠点を移したという設定になっています。NAFTA(1994年発効)なんかも言及されていて、今日的な話題である「米国における製造業の衰退」なんていうテーマも重ね合わせてしまいますね。
淡々と話は進みますが、ラストにどうなるかは最後まで分かりません。そういった意味でも面白い。
ウエストレイクは多作な人みたいなので、しばらく楽しめそう。
2017年6月13日火曜日
TOEFL(10回目)結果
TOEFL10回目の結果が出ました。
Reading29, Listening30, Speaking17, Writing22で、98点
9回目が Reading26, Listening27, Speaking15, Writing22 で、90点
8回目が Reading29, Listening27, Speaking17, Writing21 で、94点
7回目が Reading26, Listening24, Speaking19, Writing20 で、89点
6回目が Reading26, Listening26, Speaking15, Writing21 で、88点
5回目が Reading23, Listening26, Speaking15, Writing20 で、84点
4回目が Reading25, Listening21, Speaking15, Writing18 で、79点
3回目が Reading14, Listening19, Speaking17, Writing15 で、65点
2回目が Reading20, Listening21, Speaking13, Writing17 で、71点
1回目は Reading10, Listening18, Speaking10, Writing14 で、52点
わはは。これはつまり、SpeakingとWritingが全然上がっていない、というやつです。
Speakingで過去最高点(19)が出ていれば、100点に届いたのに。
まぁ、最高点が19点っていうのは、なかなかに情けない話ですけど。
受験時の予想が100点前後だったので、予想通りの結果といえます。(本当は100点超期待していたけど)
インプット系のReadingとListeningに自信があったのは間違いじゃないかった。
アウトプット系(特にSpeaking)に不安があったのも間違いじゃなかった。
そしてインプットの向上がアウトプットの点を後押ししてくれるというのは幻想だった。
ということで、TOEFLで100点超をとろうと思ったら、アウトプットの向上が不可欠ということです。
そのためにはアウトプットを意識的に練習することが必要だということです。
7年ぶり10回目の受験にして、当たり前の知見を得ることになりました。
ただ、ちょっと言い訳させてもらうと、2015年11月に英検1級には合格しているんですよ。
このときの2次試験(面接形式)は100点中82点。
内訳は、short speech 27/30、 interaction 27/30、grammar and vocabulary 16/20、pronunciation 12/20。
ネイティブスピーカーとコミュニケーションを取れるだけの能力がないわけじゃないんだと思うんですよね。っていうか、そう信じたい。
英検の2次は面接形式だから、こちらの発言の趣旨がうまく伝わらなくても、面接者が追加質問してくれるので、それに答えることで考えを伝えられます。
あと、周りに人もいないし、制限時間もシビアではないので、ゆっくりとハキハキと話すことができます。
でもTOEFLの場合は、制限時間1分の枠内で、マイクに向かって話すという形式ですから、より高度なスピーキングのスキルが求められる。
周りに他の受験者がいるので、なんかこっぱずかしい感じもある。他の受験者がリスニングしているのに、下手な発音で話すのって何かアレじゃないですか。
くっそぉ。悔しいなぁ。でも「取りこぼし」があったわけじゃないから、すぐに再チャレンジしても成果は期待できない。
100点超めざすなら、TOEFLのスピーキング対策をとる必要があるんだと思います。
それと、やっぱり発音をもうちょっと向上させないとダメなんだろうな。練習してないからな。
このあたりが向上した自信がつけば、再受験するかも。でも、どうやったら自信をつけられるかは分からない。
Reading29, Listening30, Speaking17, Writing22で、98点
9回目が Reading26, Listening27, Speaking15, Writing22 で、90点
8回目が Reading29, Listening27, Speaking17, Writing21 で、94点
7回目が Reading26, Listening24, Speaking19, Writing20 で、89点
6回目が Reading26, Listening26, Speaking15, Writing21 で、88点
5回目が Reading23, Listening26, Speaking15, Writing20 で、84点
4回目が Reading25, Listening21, Speaking15, Writing18 で、79点
3回目が Reading14, Listening19, Speaking17, Writing15 で、65点
2回目が Reading20, Listening21, Speaking13, Writing17 で、71点
1回目は Reading10, Listening18, Speaking10, Writing14 で、52点
わはは。これはつまり、SpeakingとWritingが全然上がっていない、というやつです。
Speakingで過去最高点(19)が出ていれば、100点に届いたのに。
まぁ、最高点が19点っていうのは、なかなかに情けない話ですけど。
受験時の予想が100点前後だったので、予想通りの結果といえます。(本当は100点超期待していたけど)
インプット系のReadingとListeningに自信があったのは間違いじゃないかった。
アウトプット系(特にSpeaking)に不安があったのも間違いじゃなかった。
そしてインプットの向上がアウトプットの点を後押ししてくれるというのは幻想だった。
ということで、TOEFLで100点超をとろうと思ったら、アウトプットの向上が不可欠ということです。
そのためにはアウトプットを意識的に練習することが必要だということです。
7年ぶり10回目の受験にして、当たり前の知見を得ることになりました。
ただ、ちょっと言い訳させてもらうと、2015年11月に英検1級には合格しているんですよ。
このときの2次試験(面接形式)は100点中82点。
内訳は、short speech 27/30、 interaction 27/30、grammar and vocabulary 16/20、pronunciation 12/20。
ネイティブスピーカーとコミュニケーションを取れるだけの能力がないわけじゃないんだと思うんですよね。っていうか、そう信じたい。
英検の2次は面接形式だから、こちらの発言の趣旨がうまく伝わらなくても、面接者が追加質問してくれるので、それに答えることで考えを伝えられます。
あと、周りに人もいないし、制限時間もシビアではないので、ゆっくりとハキハキと話すことができます。
でもTOEFLの場合は、制限時間1分の枠内で、マイクに向かって話すという形式ですから、より高度なスピーキングのスキルが求められる。
周りに他の受験者がいるので、なんかこっぱずかしい感じもある。他の受験者がリスニングしているのに、下手な発音で話すのって何かアレじゃないですか。
くっそぉ。悔しいなぁ。でも「取りこぼし」があったわけじゃないから、すぐに再チャレンジしても成果は期待できない。
100点超めざすなら、TOEFLのスピーキング対策をとる必要があるんだと思います。
それと、やっぱり発音をもうちょっと向上させないとダメなんだろうな。練習してないからな。
このあたりが向上した自信がつけば、再受験するかも。でも、どうやったら自信をつけられるかは分からない。
2017年6月4日日曜日
TOEFL(10回目)受験
TOEFLを受けてみた。前回は2010年6月。7年ぶり10回目。
これまでの結果は以下の通り。
9回目が Reading26, Listening27, Speaking15, Writing22 で、90点
8回目が Reading29, Listening27, Speaking17, Writing21 で、94点
7回目が Reading26, Listening24, Speaking19, Writing20 で、89点
6回目が Reading26, Listening26, Speaking15, Writing21 で、88点
5回目が Reading23, Listening26, Speaking15, Writing20 で、84点
4回目が Reading25, Listening21, Speaking15, Writing18 で、79点
3回目が Reading14, Listening19,Speaking17,Writing15 で、65点
2回目が Reading20, Listening21, Speaking13, Writing17 で、71点
1回目は Reading10, Listening18, Speaking10, Writing14 で、52点
8回目が留学前の最後。9回目は留学の最終盤に受けたものです。
留学の最終盤の方が留学前より点が下がっています。スピーキングが悪くなってんのね。
9回目の受験時のブログ
9回目の結果のブログ
受験の感想としては、リスニングの精度はこれまで以上に上がっていると思うんですね。
全部分かる。「うんうん、分かった、分かった。もういいよ。で、何が聞きたいの?」って思うぐらい分かる。
もっと言えば、「どうせ、こういうことを聞くんでしょ」っていうぐらいまで思う。
リスニングパート自体の点はもう27点とかになっているから、それほど上積みは期待できません。
でも、スピーキングとライティングのパートでも、出題には会話や講義の音声が含まれるわけだから、
このリスニングの精度の高さは大きな前進だと思います。
ただ、問題はアウトプットですよね。
そりゃ、最高点だった8回目(留学前)と比べても、さらに合計5年の米国生活が積み重なっていますから、
アウトプットの点でもレベルは上がっているんだとは思う。そう思いたい。
でもスピーキングとかね。やっぱね。ダメだね。
一応、答えるべきことは分かっているけど、スムーズにペラペラと話せるわけじゃない。
とりあえず言葉は口から出てくる。でも、それを文章として完成させようとすると、
ちょっと考える時間が必要だったり、文法的にねじれが生じてしまったりといった感じです。
制限時間があるので、このあたりはなかなか難しい。
会話の要約する部分で時間を使いすぎて、自分の意見を述べる部分が早口になってしまうこともあった
まぁ、実生活では制限時間付で英語を話す機会はあまりないですどね。
発音は普通です。特に練習したことないですし、ネイティブみたいに話すつもりもない。
ライティングも、出題が終われば、書くべきことが頭に浮かんで、すぐに書き出すことができた。
単語数も、意識しなくても、出題時に示される適切な語数をちょっと超えるぐらいになった。
ざっと書いて、読み直したら、ちょうど時間が終わるぐらいの感覚です。
ということで、そんなにひどい点ではないと思う。
それぞれのセクションで自己新がでれば、Reading29、Listening27、Speaking19、Writing22で、97点。
ここから、SpeakingとWritingがどのぐらい上乗せされていて、
ReadingとListeningでどれぐらい取りこぼしているかっていう感じでしょうか。
プラスマイナスが同じぐらいであれば97点ですが、
受験してみた感覚としては、100点前後っていう予想。
スピーキングやライティングのアウトップットのスキルが上がっているわけじゃないですけど、
出題時のインプットの精度があがっていることが点数を後押ししてくれていると信じたい。
まぁ、赤っ恥をかくことは覚悟のうえです。
受験前は、これで100点超えてなければ、もう一度チャレンジしようかと思いましたが、
まぁ、今回以上のパフォーマンスが出ることもないでしょうから、100点未満でも受け入れます。
受験時間は3時間半ぐらい。長い。疲れる。受験料は195ドル。昔より高くなっていないか?
これまでの結果は以下の通り。
9回目が Reading26, Listening27, Speaking15, Writing22 で、90点
8回目が Reading29, Listening27, Speaking17, Writing21 で、94点
7回目が Reading26, Listening24, Speaking19, Writing20 で、89点
6回目が Reading26, Listening26, Speaking15, Writing21 で、88点
5回目が Reading23, Listening26, Speaking15, Writing20 で、84点
4回目が Reading25, Listening21, Speaking15, Writing18 で、79点
3回目が Reading14, Listening19,Speaking17,Writing15 で、65点
2回目が Reading20, Listening21, Speaking13, Writing17 で、71点
1回目は Reading10, Listening18, Speaking10, Writing14 で、52点
8回目が留学前の最後。9回目は留学の最終盤に受けたものです。
留学の最終盤の方が留学前より点が下がっています。スピーキングが悪くなってんのね。
9回目の受験時のブログ
9回目の結果のブログ
受験の感想としては、リスニングの精度はこれまで以上に上がっていると思うんですね。
全部分かる。「うんうん、分かった、分かった。もういいよ。で、何が聞きたいの?」って思うぐらい分かる。
もっと言えば、「どうせ、こういうことを聞くんでしょ」っていうぐらいまで思う。
リスニングパート自体の点はもう27点とかになっているから、それほど上積みは期待できません。
でも、スピーキングとライティングのパートでも、出題には会話や講義の音声が含まれるわけだから、
このリスニングの精度の高さは大きな前進だと思います。
ただ、問題はアウトプットですよね。
そりゃ、最高点だった8回目(留学前)と比べても、さらに合計5年の米国生活が積み重なっていますから、
アウトプットの点でもレベルは上がっているんだとは思う。そう思いたい。
でもスピーキングとかね。やっぱね。ダメだね。
一応、答えるべきことは分かっているけど、スムーズにペラペラと話せるわけじゃない。
とりあえず言葉は口から出てくる。でも、それを文章として完成させようとすると、
ちょっと考える時間が必要だったり、文法的にねじれが生じてしまったりといった感じです。
制限時間があるので、このあたりはなかなか難しい。
会話の要約する部分で時間を使いすぎて、自分の意見を述べる部分が早口になってしまうこともあった
まぁ、実生活では制限時間付で英語を話す機会はあまりないですどね。
発音は普通です。特に練習したことないですし、ネイティブみたいに話すつもりもない。
ライティングも、出題が終われば、書くべきことが頭に浮かんで、すぐに書き出すことができた。
単語数も、意識しなくても、出題時に示される適切な語数をちょっと超えるぐらいになった。
ざっと書いて、読み直したら、ちょうど時間が終わるぐらいの感覚です。
ということで、そんなにひどい点ではないと思う。
それぞれのセクションで自己新がでれば、Reading29、Listening27、Speaking19、Writing22で、97点。
ここから、SpeakingとWritingがどのぐらい上乗せされていて、
ReadingとListeningでどれぐらい取りこぼしているかっていう感じでしょうか。
プラスマイナスが同じぐらいであれば97点ですが、
受験してみた感覚としては、100点前後っていう予想。
スピーキングやライティングのアウトップットのスキルが上がっているわけじゃないですけど、
出題時のインプットの精度があがっていることが点数を後押ししてくれていると信じたい。
まぁ、赤っ恥をかくことは覚悟のうえです。
受験前は、これで100点超えてなければ、もう一度チャレンジしようかと思いましたが、
まぁ、今回以上のパフォーマンスが出ることもないでしょうから、100点未満でも受け入れます。
受験時間は3時間半ぐらい。長い。疲れる。受験料は195ドル。昔より高くなっていないか?
2017年5月31日水曜日
"A Million Ways To Die In The West"
"A Million Ways To Die In The West"という本を読んだ。"Family Guy"で有名なSeth MacFarlaneの同名の映画の小説版です。
ちょっと前にシンプソンズの脚本に参加したことがあるというライターのエッセイを読んだのですが、これが面白くかつ読みやすかった。
https://www.wsj.com/articles/the-prom-a-survival-guide-for-parents-1494593931?tesla=y
で、このライターが何か本を出していないかと思って探してみたけど見つからなかったもので、それならファミリー・ガイのセス・マクファーレンの本だったら面白いんじゃないかと思って読んでみた次第です。
まぁ、面白かったことは間違いないですが、「お勧め!」っていうほどのものでもないです。
1882年のアリゾナを舞台に繰り広げられるコメディです。主人公はアルバートという男で、ヒツジ牧場を経営する気の優しい男。このアルバートと、美人の彼女ルイーズ、親友のエドワードとその恋人のルス、金持ちのフォイ、お尋ね者のクリンチ、その妻のアナたちが主要な登場人物で、まぁ、なんだかんだとドタバタするという話です。
ストーリーは単純です。まぁ、ちょっと凝った昔話みたいなもんです。だから話の筋道というよりは、主人公たちのキャラとか会話とかを楽しむタイプの本です。
例えば、エドワードとルスは実に仲の良いカップルなのですが、ルスは売春婦でエドワードもそのことを知っています。しかもルスとエドワードはそういった関係には至っていない。エドワードはなんとかそういう関係に持ち込みたいと思わないでもないのですが、ルスから「私たちはクリスチャンだから、婚前交渉は持つべきじゃない」と言われると、「そんなもんかなぁ」と思ってしまう。まぁ、そんなおかしなシチュエーションが面白いっていう本です。
だから面白いんです。でも、2時間ほどの映画と本にまとめたわけだから、映画で見た方が面白いんだと思います。
本を読むときに期待するほどの面白さではないと思います。
すぐに読める点はよかったです。
ちょっと前にシンプソンズの脚本に参加したことがあるというライターのエッセイを読んだのですが、これが面白くかつ読みやすかった。
https://www.wsj.com/articles/the-prom-a-survival-guide-for-parents-1494593931?tesla=y
で、このライターが何か本を出していないかと思って探してみたけど見つからなかったもので、それならファミリー・ガイのセス・マクファーレンの本だったら面白いんじゃないかと思って読んでみた次第です。
まぁ、面白かったことは間違いないですが、「お勧め!」っていうほどのものでもないです。
1882年のアリゾナを舞台に繰り広げられるコメディです。主人公はアルバートという男で、ヒツジ牧場を経営する気の優しい男。このアルバートと、美人の彼女ルイーズ、親友のエドワードとその恋人のルス、金持ちのフォイ、お尋ね者のクリンチ、その妻のアナたちが主要な登場人物で、まぁ、なんだかんだとドタバタするという話です。
ストーリーは単純です。まぁ、ちょっと凝った昔話みたいなもんです。だから話の筋道というよりは、主人公たちのキャラとか会話とかを楽しむタイプの本です。
例えば、エドワードとルスは実に仲の良いカップルなのですが、ルスは売春婦でエドワードもそのことを知っています。しかもルスとエドワードはそういった関係には至っていない。エドワードはなんとかそういう関係に持ち込みたいと思わないでもないのですが、ルスから「私たちはクリスチャンだから、婚前交渉は持つべきじゃない」と言われると、「そんなもんかなぁ」と思ってしまう。まぁ、そんなおかしなシチュエーションが面白いっていう本です。
だから面白いんです。でも、2時間ほどの映画と本にまとめたわけだから、映画で見た方が面白いんだと思います。
本を読むときに期待するほどの面白さではないと思います。
すぐに読める点はよかったです。
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