オバマ政権の1期目でアフガニスタン・パキスタン問題の担当特使を務めたリチャード・ホルブルックの右腕として働き、今でも国務省のForeign Affairs Policy Boardのメンバーである、Vali Nasrの本です。読み終えたのはちょっと前ですけど、面白かったです。門外漢の私には知らないことばかりで勉強になりました。
Nasrは冒頭から、オバマ政権内には外交で問題を解決しようとする国務省と、軍事行動に重きをおく国防総省などの間に対立関係があると指摘して、側近に囲まれたオバマ大統領は多くの場合は国防総省側の意見をとりいれたことを嘆いています。政権内にいたのは2年ほどだったようですが、オバマ外交には批判的です。
2009年春ごろにホルブルックはアフガンの治安を安定させて米軍撤退をスムーズに進めるというシナリオを描いて、タリバンとアフガニスタンのカルザイ大統領との和平交渉を始めようとした。でも国防総省やCIAなんかは、タリバンと交渉するなんてテロを容認するようなものだとかいって反対する。で、そのとき就任したばかりのオバマは対外的に「弱腰だ」とみられることを恐れてホルブルックの意見に賛成しない。クリントン国務長官はホルブルックを信頼していたので、なんとかオバマを説得しようとするんだけれど、「ベルリンの壁」と呼ばれるオバマの側近グループが邪魔をする。クリントンはオバマあてのペーパーを書いて「これを承認してくれ」と頼み込み、オバマもうなずいたらしいんですが、それも棚上げになってしまう。そんなこんなとしているうちに、ホルブルックは2010年12月に心臓の病気で亡くなってしまいます。69歳。
ホワイトハウスがタリバンとの対話を検討し始めたのはこの後で、クリントンは2011年2月の演説でようやく、オバマ政権を代表してタリバンとの対話を表明することができた。ただ、ホルブルックの構想では、アフガンに駐留している米兵の数が最大の時期こそが米国の交渉力が一番強いわけだから、この状態をなるべく維持しておくという方針だったのに、オバマは6月には早々にアフガンからの撤退計画を発表してしまう。ホルブルックが死んでからホワイトハウスにどういう心境の変化があったのかは分かりませんが、ホルブルックとともに働いてきたNasrにすれば、なんという下手くそな外交なんだというところでしょう。
このほかパキスタンのムシャラフが密かにタリバンを支援しているんだとか、2011年のNATO軍によるパキスタンの検問所の誤爆の後、オバマは「タフ」に見られたいからパキスタンとの関係修復に後ろ向きだったとか、オバマはイランに圧力をかけるばかりだという意味ではブッシュ政権と大差ないとか、いろいろと面白いエピソードも。ただ、ウィキペディアをざっとみたところ、ホルブルックは毀誉褒貶がある人らしいのでNasrの評価がどれだけ的を得ているのかは分かりません。ただ、米国の政権内にはいろんな考え方をもった人がいて、なんとかそれを実現しようとあーだこーだとやっているんだなという実態は面白いと思います。
あと、中東をめぐる情勢分析も、いろいろと。イランはイスラエルと敵対することでアラブのリーダーになろうとしているけど、サウジやトルコほどの経済力がないから支持を得られないとか、イランはパキスタンやインドや北朝鮮が核兵器保有を黙認されているんだから、自分たちも認められるだろうと考えているとか、米国からすればイスラエルへのテロ活動を支援するイランに核兵器保有を許すことはテロリストに核の傘を与えることになるから認められない面があるんだとか、経済制裁は便利な方法だけれどもそれだけでは問題の根源は解決できないとか、いろいろと門外漢にとっては面白い知見が出てきます。へぇ。
面白いのはNasrはイランについて、核兵器保有を許してしまったうえで封じ込めと抑止で対応した方がいいんじゃないのかと考えているところ。ロシアや中国が核兵器を持っていても世界が核戦争に向かっているわけじゃないし、北朝鮮やパキスタン、インドが核兵器を保有しているからといって、日本や韓国、バングラディシュ、スリランカなんかが核兵器保有を目指しているわけじゃない。米国には冷戦期に豊富な経験があるんだから、イランの核保有を阻止することにこだわらなくてもいいという見方です。へぇ。以前に書いたこのエントリの話に似ています。Nasrみたいに政権内にいるような人にも、そんな考え方をする人がいるんですね。
それと中国についても力点が置かれています。長すぎるんで、ざっと書いちゃうと、中国と米国の対立はなにも太平洋を挟んで起きるわけでなく、経済成長に不可欠な原油などの供給源である中東を舞台に起きるのだから、米国はきちんと準備をしておかなければならない。中国はアラブ世界やパキスタンやイランやトルコへの影響力確保を狙っている。だから米国もこうした地域にきちんと関与していかないと、中国にいいようにやられてしまう。というのが、Nasrの心配するところであったりします。
面白い本でした。
2013年12月14日土曜日
2013年6月13日木曜日
棚上げすればいいんじゃないか論
ちょっと昔の話なんですが、Jonathan TeppermanというForeign Affairsの編集者の文章を読んだ。"Asian Tensions and the Problem of History"というタイトルで、なんで日中韓の三国は歴史問題でケンカばかりしているのかねぇという内容です。(参照)
Teppermanさんは、安倍首相が「731」ナンバーの戦闘機の操縦席で撮った写真が中韓の反発を招いた話で日中韓のややこしい関係を紹介。日中は尖閣問題で対立するし、日韓には竹島問題がある。「朴大統領はオバマ大統領との会談のかなりの部分を安倍首相をこきおろすことに費やした」なんていう表現もある。で、もちろん対立の根源は第二次世界大戦に遡るわけですが、Teppermanさんは、
Why can’t these countries just let the past lie, especially when doing so would be so clearly in their interests? Yes, there are plenty of ugly traumas to overcome. But Japan has been a pacifist, liberal democracy for nearly 70 years now, and it’s hard to imagine it threatening anyone.
と疑問を呈します。そうそう。私もそう思う。
Teppermanさんは「ベストの解決法は、西ドイツのブラント首相が1970年にやったように、日本が全面的に第二次世界大戦時の行為について謝罪すること」と指摘します。「大日本帝国とナチは違う」ことにも理解は示すわけですけど、ドイツは謝罪によって膨大な利益があったわけだから、日本だって同様にするべきだというわけです。日本の政治家たちが「これまでに何度も謝罪しているし、賠償金だって払っている」と主張していることについては、「その通りだ」と認めます。でも、日本の政治家たちが保守的で謝罪疲れした支持者を満足させるために、その謝罪を台無しにするような発言を繰り返していることも事実だと。うん。確かにそうだ。
一方、中韓に対しては、「現在の目的のために歴史を利用しようとしている点で罪深い」(Japan’s neighbors, meanwhile, are just as guilty of exploiting the past for present ends.)と論評。中国が尖閣の領有権を主張し始めたのは周辺海域で資源が見つかったことと無関係ではないことや、国内の不満をそらそうとして愛国心をあおっていることにも注目します。
つまり、確かに日本は謝罪はしているんだけど、中韓は資源獲得とか国内の不満をそらそうなんていう気持ちがあるから謝罪を受け入れようとしない。それなら日本はもう一度謝罪した方がいいんだけど、せっかくの最初の謝罪を台無しにするような発言で事態を混乱させていると。つまり日中韓が何故過去のことを水に流せないのかという疑問に対する答えについては、"The answer is that no one will go first."というわけです。まぁ、当たり前の話なんですが、的を得た簡潔な説明である気がします。
じゃぁ、どうすればいいのかというと、Teppermanさんは" simply shelve the thorniest issues and work around them"と主張します。中国と台湾だって難しい問題は棚上げしているし、日中だって国交正常化から中国が台頭する最近までは尖閣問題を事実上棚上げしていたじゃないかと。確かに簡単な話ではないんだけど、棚上げすれば、
it would cool the region’s boiling waters while letting all sides save face. And it might just be the only way to avoid an actual shooting war that no side, despite the overheated talk, wants or could afford.
ということです。
まぁ、当事者以外の立場からみればそうなんでしょう。ということは日中韓の3カ国以外の立場の人はみんなそう思っているわけですな。じゃ、そうするのが正解だな。
写真はTeppermanさん。頭良さそうな顔ですね。
Teppermanさんは、安倍首相が「731」ナンバーの戦闘機の操縦席で撮った写真が中韓の反発を招いた話で日中韓のややこしい関係を紹介。日中は尖閣問題で対立するし、日韓には竹島問題がある。「朴大統領はオバマ大統領との会談のかなりの部分を安倍首相をこきおろすことに費やした」なんていう表現もある。で、もちろん対立の根源は第二次世界大戦に遡るわけですが、Teppermanさんは、
Why can’t these countries just let the past lie, especially when doing so would be so clearly in their interests? Yes, there are plenty of ugly traumas to overcome. But Japan has been a pacifist, liberal democracy for nearly 70 years now, and it’s hard to imagine it threatening anyone.
と疑問を呈します。そうそう。私もそう思う。
Teppermanさんは「ベストの解決法は、西ドイツのブラント首相が1970年にやったように、日本が全面的に第二次世界大戦時の行為について謝罪すること」と指摘します。「大日本帝国とナチは違う」ことにも理解は示すわけですけど、ドイツは謝罪によって膨大な利益があったわけだから、日本だって同様にするべきだというわけです。日本の政治家たちが「これまでに何度も謝罪しているし、賠償金だって払っている」と主張していることについては、「その通りだ」と認めます。でも、日本の政治家たちが保守的で謝罪疲れした支持者を満足させるために、その謝罪を台無しにするような発言を繰り返していることも事実だと。うん。確かにそうだ。
一方、中韓に対しては、「現在の目的のために歴史を利用しようとしている点で罪深い」(Japan’s neighbors, meanwhile, are just as guilty of exploiting the past for present ends.)と論評。中国が尖閣の領有権を主張し始めたのは周辺海域で資源が見つかったことと無関係ではないことや、国内の不満をそらそうとして愛国心をあおっていることにも注目します。
つまり、確かに日本は謝罪はしているんだけど、中韓は資源獲得とか国内の不満をそらそうなんていう気持ちがあるから謝罪を受け入れようとしない。それなら日本はもう一度謝罪した方がいいんだけど、せっかくの最初の謝罪を台無しにするような発言で事態を混乱させていると。つまり日中韓が何故過去のことを水に流せないのかという疑問に対する答えについては、"The answer is that no one will go first."というわけです。まぁ、当たり前の話なんですが、的を得た簡潔な説明である気がします。
じゃぁ、どうすればいいのかというと、Teppermanさんは" simply shelve the thorniest issues and work around them"と主張します。中国と台湾だって難しい問題は棚上げしているし、日中だって国交正常化から中国が台頭する最近までは尖閣問題を事実上棚上げしていたじゃないかと。確かに簡単な話ではないんだけど、棚上げすれば、
it would cool the region’s boiling waters while letting all sides save face. And it might just be the only way to avoid an actual shooting war that no side, despite the overheated talk, wants or could afford.
ということです。
まぁ、当事者以外の立場からみればそうなんでしょう。ということは日中韓の3カ国以外の立場の人はみんなそう思っているわけですな。じゃ、そうするのが正解だな。
写真はTeppermanさん。頭良さそうな顔ですね。
2013年6月11日火曜日
「新型の大国関係」とG2論
中国の習近平国家主席が米国のオバマ大統領と会談しました。そのなかで、"new model of major country relationship"(新型の大国関係)という言葉が出てくるので、どういう考え方なのか調べてみた。
このフレーズは習近平国家主席が持ち出した言葉のようで、6月7日の会談前のちょっとした会見(参照)で、
We need to think creatively and act energetically so that working together we can build a new model of major country relationship.
なんていう風に言っています。
で、この発言には前段があって、そこの部分を読むと、
And at present, the China-U.S. relationship has reached a new historical starting point. Our two countries have vast convergence of shared interests, from promoting our respective economic growth at home to ensuring the stability of the global economy; from addressing international and regional hotspot issues to dealing with all kinds of global challenges. On all these issues, our two countries need to increase exchanges and cooperation.
And under the new environment, we need to take a close look at our bilateral relationship: What kind of China-U.S. relationship do we both want? What kind of cooperation can our two nations carry out for mutual benefit? And how can our two nations join together to promote peace and development in the world? These are things that not just the people in our two countries are watching closely, but the whole world is also watching very closely.
Both sides should proceed from the fundamental interests of our peoples and bear in mind human development and progress.
と言っている。
まぁ、今から作り上げていこうというものですけど、
・双方が納得のいく関係
・お互いの国益のために協調する関係
・世界の平和と発展に資する関係
・両国の基本的な国益を出発点として、人間的な発展や進歩も考慮する関係
ってことですかね。
で、この新型の大国関係については、会談後の共同会見(参照)でも触れられている。
習近平国家主席によると、
President Obama and I both believe that in the age of economic globalization and facing the objective need of countries sticking together in the face of difficulties, China and the United States must find a new path -- one that is different from the inevitable confrontation and conflict between the major countries of the past. And that is to say the two sides must work together to build a new model of major country relationship based on mutual respect and win-win cooperation for the benefit of the Chinese and American peoples, and people elsewhere in the world.
ということらしいです。昔は2つの大国があれば衝突は必至だったけれど、そういうことにならないように協力しあいましょうということですね。この後の発言では、経済での連係や人的交流、軍事面での関係強化なんかの必要性について話しています。
まぁ、米中は経済的なつながりは強まっているんだけど、対立点もいっぱいあるわけです。人権問題とかサイバーセキュリティとか南シナ・東シナ海での航行の自由の確保とか、チベット問題、台湾問題なんかについては意見の相違は大きい。ただ、そういった問題点について対立の道を進むのではなく、お互いの利益を尊重しつつ、解決の道を探っていくということでしょう。
一方、オバマ大統領は、
I think President Xi identified the essence of our discussions in which we shared our respective visions for our countries' futures and agreed that we're more likely to achieve our objectives of prosperity and security of our people if we are working together cooperatively, rather than engaged in conflict.
としている。「衝突を避け、協力しあえば、人々の繁栄と安全という目的を達成できる」ということです。
またドニロン大統領補佐官は8日のプレスブリーフィングで、
the observation and the view by many people, particularly in the international relations field and some people in the United States and some people in China, that a rising power and an existing power are in some manner destined for conflict; that in fact this just an inexorable dynamic between an arising power and an existing power. We reject that, and the Chinese government rejects that. And the building out of the so-called new relationships, new model of relation between great powers is the effort to ensure that doesn’t happen; is an effort to ensure that we don’t succumb to the idea that somehow relations between countries are some immutable law of physics -- that, in fact, this is about leadership, it’s about conscious decisions and it’s about doing what’s best for your respective people.
と述べています。こちらも「衝突を避ける」ということを強調しています。オバマ大統領やドニロン補佐官が「お互いの国益を守る」というあたりに触れていないのは、人権とかサイバーセキュリティ、航行の自由なんかの対立点について口をつぐむわけじゃないという意思表示かもしれない。それでも新型の大国関係を目指すことで合意したとは認めているわけですから、対立点はあるけれど、協力できるところから協力していきましょうなんていうことかもしれません。
ちなみにオバマ政権の初期にあったG2論とは違うのかっていう話もあるわけですけど、Wikipediaによると、G2論というのは「世界1位、2位の経済大国である米中が話し合えば、世界金融危機とか気候変動問題とか北朝鮮やイランの核問題とか、いろんな問題を解決できて、新たな冷戦を回避できるんじゃないの?」っていう話のようです。経済学者のフレッド・バーグステンが提唱して、カーター大統領の補佐官だったブレジンスキーや世界銀行総裁だったゼーリックなんかが支持した。(参照)
バーグステンのForeign Affairsへの寄稿(参照)によると、中国はWTOに加盟したものの交渉の阻害要因となり、APEC全体での自由貿易圏構想に反対したり、資源の囲い込みを謀ったり、為替レートを操作したりして、世界2位の大国としての責任感に欠けている。だから、
To deal with the situation, Washington should make a subtle but basic change to its economic policy strategy toward Beijing. Instead of focusing on narrow bilateral problems, it should seek to develop a true partnership with Beijing so as to provide joint leadership of the global economic system. Only such a "G-2" approach will do justice, and be seen to do justice, to China's new role as a global economic superpower and hence as a legitimate architect and steward of the international economic order.
ということです。「お行儀の悪い中国を国際ルールに従わせるため、米国が中国と2つの大国として協調する」というコンセプトですかね。
あと、米国はこれまで中国を国際ルールに従わせるために「従わないとペナルティがあるぞ」という方針で臨んできたけど、米国にも他の国にも中国との関係から恩恵を受けている人は沢山いるので、そんな強行姿勢をとっても中国は本気にしない。だから、
Abandoning the present position and adopting a less confrontational approach might be the only way to persuade China to start cooperating.
なんていうことも言っています。
あと、
At a minimum, creating a G-2 would limit the risk of bilateral disputes escalating and disrupting the U.S.-Chinese relationship and the broader global economy. At a maximum, it could start a process that might, over time, generate sufficient trust and mutual understanding to produce active cooperation on crucial issues.
とも。
G2論も新型の大国関係も米中が協調するという点には変わりはないですが、G2論の最終的な目標は「最終的に中国を国際ルールに従わせる」という点にあるのに対して、新型の大国関係の目標は「衝突を避ける」という点であって、中国が国際ルールに従うかどうかは棚上げされているというイメージですかね。
本当かよ。
このフレーズは習近平国家主席が持ち出した言葉のようで、6月7日の会談前のちょっとした会見(参照)で、
We need to think creatively and act energetically so that working together we can build a new model of major country relationship.
なんていう風に言っています。
で、この発言には前段があって、そこの部分を読むと、
And at present, the China-U.S. relationship has reached a new historical starting point. Our two countries have vast convergence of shared interests, from promoting our respective economic growth at home to ensuring the stability of the global economy; from addressing international and regional hotspot issues to dealing with all kinds of global challenges. On all these issues, our two countries need to increase exchanges and cooperation.
And under the new environment, we need to take a close look at our bilateral relationship: What kind of China-U.S. relationship do we both want? What kind of cooperation can our two nations carry out for mutual benefit? And how can our two nations join together to promote peace and development in the world? These are things that not just the people in our two countries are watching closely, but the whole world is also watching very closely.
Both sides should proceed from the fundamental interests of our peoples and bear in mind human development and progress.
と言っている。
まぁ、今から作り上げていこうというものですけど、
・双方が納得のいく関係
・お互いの国益のために協調する関係
・世界の平和と発展に資する関係
・両国の基本的な国益を出発点として、人間的な発展や進歩も考慮する関係
ってことですかね。
で、この新型の大国関係については、会談後の共同会見(参照)でも触れられている。
習近平国家主席によると、
President Obama and I both believe that in the age of economic globalization and facing the objective need of countries sticking together in the face of difficulties, China and the United States must find a new path -- one that is different from the inevitable confrontation and conflict between the major countries of the past. And that is to say the two sides must work together to build a new model of major country relationship based on mutual respect and win-win cooperation for the benefit of the Chinese and American peoples, and people elsewhere in the world.
ということらしいです。昔は2つの大国があれば衝突は必至だったけれど、そういうことにならないように協力しあいましょうということですね。この後の発言では、経済での連係や人的交流、軍事面での関係強化なんかの必要性について話しています。
まぁ、米中は経済的なつながりは強まっているんだけど、対立点もいっぱいあるわけです。人権問題とかサイバーセキュリティとか南シナ・東シナ海での航行の自由の確保とか、チベット問題、台湾問題なんかについては意見の相違は大きい。ただ、そういった問題点について対立の道を進むのではなく、お互いの利益を尊重しつつ、解決の道を探っていくということでしょう。
一方、オバマ大統領は、
I think President Xi identified the essence of our discussions in which we shared our respective visions for our countries' futures and agreed that we're more likely to achieve our objectives of prosperity and security of our people if we are working together cooperatively, rather than engaged in conflict.
としている。「衝突を避け、協力しあえば、人々の繁栄と安全という目的を達成できる」ということです。
またドニロン大統領補佐官は8日のプレスブリーフィングで、
the observation and the view by many people, particularly in the international relations field and some people in the United States and some people in China, that a rising power and an existing power are in some manner destined for conflict; that in fact this just an inexorable dynamic between an arising power and an existing power. We reject that, and the Chinese government rejects that. And the building out of the so-called new relationships, new model of relation between great powers is the effort to ensure that doesn’t happen; is an effort to ensure that we don’t succumb to the idea that somehow relations between countries are some immutable law of physics -- that, in fact, this is about leadership, it’s about conscious decisions and it’s about doing what’s best for your respective people.
と述べています。こちらも「衝突を避ける」ということを強調しています。オバマ大統領やドニロン補佐官が「お互いの国益を守る」というあたりに触れていないのは、人権とかサイバーセキュリティ、航行の自由なんかの対立点について口をつぐむわけじゃないという意思表示かもしれない。それでも新型の大国関係を目指すことで合意したとは認めているわけですから、対立点はあるけれど、協力できるところから協力していきましょうなんていうことかもしれません。
ちなみにオバマ政権の初期にあったG2論とは違うのかっていう話もあるわけですけど、Wikipediaによると、G2論というのは「世界1位、2位の経済大国である米中が話し合えば、世界金融危機とか気候変動問題とか北朝鮮やイランの核問題とか、いろんな問題を解決できて、新たな冷戦を回避できるんじゃないの?」っていう話のようです。経済学者のフレッド・バーグステンが提唱して、カーター大統領の補佐官だったブレジンスキーや世界銀行総裁だったゼーリックなんかが支持した。(参照)
バーグステンのForeign Affairsへの寄稿(参照)によると、中国はWTOに加盟したものの交渉の阻害要因となり、APEC全体での自由貿易圏構想に反対したり、資源の囲い込みを謀ったり、為替レートを操作したりして、世界2位の大国としての責任感に欠けている。だから、
To deal with the situation, Washington should make a subtle but basic change to its economic policy strategy toward Beijing. Instead of focusing on narrow bilateral problems, it should seek to develop a true partnership with Beijing so as to provide joint leadership of the global economic system. Only such a "G-2" approach will do justice, and be seen to do justice, to China's new role as a global economic superpower and hence as a legitimate architect and steward of the international economic order.
ということです。「お行儀の悪い中国を国際ルールに従わせるため、米国が中国と2つの大国として協調する」というコンセプトですかね。
あと、米国はこれまで中国を国際ルールに従わせるために「従わないとペナルティがあるぞ」という方針で臨んできたけど、米国にも他の国にも中国との関係から恩恵を受けている人は沢山いるので、そんな強行姿勢をとっても中国は本気にしない。だから、
Abandoning the present position and adopting a less confrontational approach might be the only way to persuade China to start cooperating.
なんていうことも言っています。
あと、
At a minimum, creating a G-2 would limit the risk of bilateral disputes escalating and disrupting the U.S.-Chinese relationship and the broader global economy. At a maximum, it could start a process that might, over time, generate sufficient trust and mutual understanding to produce active cooperation on crucial issues.
とも。
G2論も新型の大国関係も米中が協調するという点には変わりはないですが、G2論の最終的な目標は「最終的に中国を国際ルールに従わせる」という点にあるのに対して、新型の大国関係の目標は「衝突を避ける」という点であって、中国が国際ルールに従うかどうかは棚上げされているというイメージですかね。
本当かよ。
2013年5月13日月曜日
議会調査局
ちょっと前に米国の議会調査局(Congressional Research Service)が出した日本に関するレポートで、安倍政権のナショナリズムっぷりが懸念されているというニュースがあった。
この日本に関するレポートというのは5月1日に出たもので、このサイトで原文を読むことができます。確かにサマリーの部分を読んだだけでも、
Comments and actions on controversial historical issues by Prime Minister Abe and his cabinet have raised concern that Tokyo could upset regional relations in ways that hurt U.S. interests. Abe is known as a strong nationalist. Abe’s approach to issues like the so-called “comfort women” sex slaves from the World War II era, history textbooks, visits to the Yasukuni Shrine that honors Japan’s war dead, and statements on a territorial dispute with South Korea will be closely monitored by Japan’s neighbors as well as the United States.
なんていう文章が出てくる。
ただ、この日本に関するレポートっていうのは頻繁に出ているもので、今年の2月にも同種のレポートが出ている。(参照) このレポートのサマリーにも同じ文章が出てくるので、別に今なって騒ぐ話でもないような気がします。
というわけで、この報告書を読んだところで日本でも報じられていることばかりだとは思うのですが、この議会調査局のレポートが非常に便利なことに気付きました。だって、日米関係のレポートが日米関係の諸問題について網羅的に記しているわけですから、他のテーマについてもレポートを読めば、どんな問題が懸念されているのかが網羅的に分かるってことじゃないですか。便利。ちなみにウィキペディアによると、CRSは議会予算局(CBO)や会計検査院(GAO)なんかと同じように、議会をサポートするための中立的な組織として知られているようです。
で、試しにこのページから、最近の報告書をあさってみると、4月26日に米韓関係についてのレポートが出ている。で、サマリーを読んでみると、「米韓関係はオバマ大統領と李明博前大統領の時代に最良の状態にあり、朴槿恵大統領に代わってからも良好な関係が続くと思われるが、朴大統領が北朝鮮との対決姿勢と柔軟姿勢のバランスをどのようにとるかは注視せねばならないよ。朝鮮半島の非核化や人権問題という米国の最優先事項をどのぐらい重視するかが問題だ」みたいなことが書いてある。なるほど。
Dealing with North Korea is the dominant strategic element of the U.S.-South Korean relationship. The two countries’ coordination over North Korea was exceptionally close under the Lee and Obama Administrations. Bilateral cooperation is expected to work well under President Park, but it remains to be seen whether her calls for a new combination of toughness and flexibility toward Pyongyang will challenge Washington and Seoul’s ability to coordinate their policies. Perhaps most notably, Park has proposed a number of confidence-building measures with Pyongyang in order to create a “new era” on the Korean Peninsula. Two key questions will be the extent to which her government will link these initiatives to progress on denuclearization, which is the United States’ top concern, and how much emphasis she will give to North Korea’s human rights record. Likewise, an issue for the Obama Administration and Members of Congress is to what extent they will support—or, not oppose—initiatives by Park to expand inter-Korean relations.
4月24日には対イラン制裁に関するレポートが出ている。「イランに対する経済制裁は効いているんだけど、イランに核開発を諦めされるまでのダメージを与えているわけじゃない。イランが経済制裁の抜け穴を突くようになり、経済制裁がイラン国民に及ぼす非人道的な効果を宣伝するようになれば、経済制裁の効果は薄れていくかもしれない」なんて分析されています。なるほど、なるほど。
まぁ、詳しい人たちから見れば「当たり前の話じゃん」ってなもんかもしれませんが、私にとっては便利なことこのうえないです。
この日本に関するレポートというのは5月1日に出たもので、このサイトで原文を読むことができます。確かにサマリーの部分を読んだだけでも、
Comments and actions on controversial historical issues by Prime Minister Abe and his cabinet have raised concern that Tokyo could upset regional relations in ways that hurt U.S. interests. Abe is known as a strong nationalist. Abe’s approach to issues like the so-called “comfort women” sex slaves from the World War II era, history textbooks, visits to the Yasukuni Shrine that honors Japan’s war dead, and statements on a territorial dispute with South Korea will be closely monitored by Japan’s neighbors as well as the United States.
なんていう文章が出てくる。
ただ、この日本に関するレポートっていうのは頻繁に出ているもので、今年の2月にも同種のレポートが出ている。(参照) このレポートのサマリーにも同じ文章が出てくるので、別に今なって騒ぐ話でもないような気がします。
というわけで、この報告書を読んだところで日本でも報じられていることばかりだとは思うのですが、この議会調査局のレポートが非常に便利なことに気付きました。だって、日米関係のレポートが日米関係の諸問題について網羅的に記しているわけですから、他のテーマについてもレポートを読めば、どんな問題が懸念されているのかが網羅的に分かるってことじゃないですか。便利。ちなみにウィキペディアによると、CRSは議会予算局(CBO)や会計検査院(GAO)なんかと同じように、議会をサポートするための中立的な組織として知られているようです。
で、試しにこのページから、最近の報告書をあさってみると、4月26日に米韓関係についてのレポートが出ている。で、サマリーを読んでみると、「米韓関係はオバマ大統領と李明博前大統領の時代に最良の状態にあり、朴槿恵大統領に代わってからも良好な関係が続くと思われるが、朴大統領が北朝鮮との対決姿勢と柔軟姿勢のバランスをどのようにとるかは注視せねばならないよ。朝鮮半島の非核化や人権問題という米国の最優先事項をどのぐらい重視するかが問題だ」みたいなことが書いてある。なるほど。
Dealing with North Korea is the dominant strategic element of the U.S.-South Korean relationship. The two countries’ coordination over North Korea was exceptionally close under the Lee and Obama Administrations. Bilateral cooperation is expected to work well under President Park, but it remains to be seen whether her calls for a new combination of toughness and flexibility toward Pyongyang will challenge Washington and Seoul’s ability to coordinate their policies. Perhaps most notably, Park has proposed a number of confidence-building measures with Pyongyang in order to create a “new era” on the Korean Peninsula. Two key questions will be the extent to which her government will link these initiatives to progress on denuclearization, which is the United States’ top concern, and how much emphasis she will give to North Korea’s human rights record. Likewise, an issue for the Obama Administration and Members of Congress is to what extent they will support—or, not oppose—initiatives by Park to expand inter-Korean relations.
4月24日には対イラン制裁に関するレポートが出ている。「イランに対する経済制裁は効いているんだけど、イランに核開発を諦めされるまでのダメージを与えているわけじゃない。イランが経済制裁の抜け穴を突くようになり、経済制裁がイラン国民に及ぼす非人道的な効果を宣伝するようになれば、経済制裁の効果は薄れていくかもしれない」なんて分析されています。なるほど、なるほど。
まぁ、詳しい人たちから見れば「当たり前の話じゃん」ってなもんかもしれませんが、私にとっては便利なことこのうえないです。
2013年4月30日火曜日
歳出強制削減と2014年度予算
また古い話なんですが、オバマ大統領が2014年度の予算案を提出しました。で、これが例の歳出強制削減(Sequestration)とどんな関係になっているのか分からないので、調べてみた。
オバマ大統領が予算案を提出したのは4月10日。オバマ大統領は同じ日に2014年度予算にも歳出強制削減が適用されますよという文書を出している。(参照)
このなかで歳出強制削減の内容については行政管理予算局(OMB)が同じ日に出したレポートに基づいて行われますということになっている。そのレポートがこちらです。
で、このレポートの中の Table 1. "OVERVIEW OF CHANGES TO DISCRETIONARY SPENDING LIMITS AND THE PRESIDENT'S PROPOSED LIMITS IN THE 2014 BUDGET"(Discretionary budget authority in billions of dollars)というのが、歳出強制削減と予算案の関係を示しているんだと思います。
一番上のOriginal limits set in Title I of the Budget Control Act of 2011というところ。2014年は1,066 bnとなっている。で、2コ下のRedefinition of limits pursuant to section 251A of BBEDCAのところに、その1,066 bn をDefense(556 bn)とNon-Defense(510 bn)に分けた数字が出ている。これはBudget Control Act of 2011の251Aに出ている数字と同じです。(参照) つまり、2014年度の予算では、裁量的経費(Discretionary Spending)の上限は1兆660億ドルで、このうち国防費が5560億ドル、非国防費が5100億ドルということです。
4つ目のAdjustments pursuant to section 901(d) of the ATRAの項目の、2014年のところにあるDefenseで-4.0、Non-Defenseで-4.0とあるのは、今年1月のAmerican Taxpayer Relief Actにある、
(3) for fiscal year 2014—
(A) for the security category, $552,000,000,000 in
budget authority; and
(B) for the nonsecurity category, $506,000,000,000 in
budget authority;
という記述を反映したものだと思います。つまり、さきほどのDefense(556 bn)から4を引いたら552になるし、Non-Defense(510 bn)から4を引いたら506になります。
その次、Joint Select Committee on Deficit Reduction Enforcementの項目。実はこれについてはよく分からない。分からないんだけれど、Defenseで53.9 bn、Non-Defenseで37.2 bnだけ、予算の上限がカットされて、その結果がさらに1コ下のRevised Limits Included in the OMB Preview Reportの数字になっているんだと思う。つまりBCAで定められた裁量的経費の上限は国防費5560億ドル、非国防費5100億ドルだったけど、いろいろと見なおしが重ねられた結果、現状では国防費で4981億ドル、非国防費で4688億ドルになっている。
で、この上限に基づいてオバマ大統領が予算案を提案することになるわけですが、次の項目はPresident's Proposed Changes to Discretionary Limits in the 2014 Budgetとなっている。つまり2014年度予算については、この裁量的経費の上限について見なおしを提案しますよと。で、その下にごちゃごちゃと数字が出ている。特にOCO/GWOT(Oversea Contingency Operations/Global War On Terror)の項目では、Defenseに88.5 bnの積み増しをやっている。その結果、President's proposed limits in the 2014 Budgetの裁量的経費の内訳は、国防費で6405億ドル、非国防費で5146億ドルになっている。
なんでしょう。こんなにいきなり見なおしを提案されちゃぁ、歳出強制削減の意味がないような気がするんですが。違うんでしょうか。
で、オバマ大統領の予算案に関するデータはこちらにあるんですが、このうちの一番下のファイル(Summary Tables)の中にあるTable S–5. Proposed Budget by Categoryというのを見てみると、一番最後の項目にMemorandum, budget authority for appropriated programsというのがあって、そこに出ている数字が先ほどのレポートにある国防費6405億ドル、非国防費5146億ドルという数字と一致しています。つまり裁量的経費に関する予算の枠はこれだけですよ、ということなんだと思う。
でも、同じ表の一番上の項目をみると、裁量的経費のうち国防費は6180億ドル、非国防費は6240億ドルとなっている。非国防費が枠を超えちゃっているような気がするんですけど。
私が重大な勘違いをしているんでしょうか、それとも「どっちにしたって民主党と共和党が合意すりゃいいわけだから、とりあえずは枠なんて無視しちゃえばいいんじゃないの。結局、BCAの枠を超えて国防費も非国防費も出すんだから、合意しやすい内容でしょ」ってことなんでしょうか。
変なの。
オバマ大統領が予算案を提出したのは4月10日。オバマ大統領は同じ日に2014年度予算にも歳出強制削減が適用されますよという文書を出している。(参照)
このなかで歳出強制削減の内容については行政管理予算局(OMB)が同じ日に出したレポートに基づいて行われますということになっている。そのレポートがこちらです。
で、このレポートの中の Table 1. "OVERVIEW OF CHANGES TO DISCRETIONARY SPENDING LIMITS AND THE PRESIDENT'S PROPOSED LIMITS IN THE 2014 BUDGET"(Discretionary budget authority in billions of dollars)というのが、歳出強制削減と予算案の関係を示しているんだと思います。
一番上のOriginal limits set in Title I of the Budget Control Act of 2011というところ。2014年は1,066 bnとなっている。で、2コ下のRedefinition of limits pursuant to section 251A of BBEDCAのところに、その1,066 bn をDefense(556 bn)とNon-Defense(510 bn)に分けた数字が出ている。これはBudget Control Act of 2011の251Aに出ている数字と同じです。(参照) つまり、2014年度の予算では、裁量的経費(Discretionary Spending)の上限は1兆660億ドルで、このうち国防費が5560億ドル、非国防費が5100億ドルということです。
4つ目のAdjustments pursuant to section 901(d) of the ATRAの項目の、2014年のところにあるDefenseで-4.0、Non-Defenseで-4.0とあるのは、今年1月のAmerican Taxpayer Relief Actにある、
(3) for fiscal year 2014—
(A) for the security category, $552,000,000,000 in
budget authority; and
(B) for the nonsecurity category, $506,000,000,000 in
budget authority;
という記述を反映したものだと思います。つまり、さきほどのDefense(556 bn)から4を引いたら552になるし、Non-Defense(510 bn)から4を引いたら506になります。
その次、Joint Select Committee on Deficit Reduction Enforcementの項目。実はこれについてはよく分からない。分からないんだけれど、Defenseで53.9 bn、Non-Defenseで37.2 bnだけ、予算の上限がカットされて、その結果がさらに1コ下のRevised Limits Included in the OMB Preview Reportの数字になっているんだと思う。つまりBCAで定められた裁量的経費の上限は国防費5560億ドル、非国防費5100億ドルだったけど、いろいろと見なおしが重ねられた結果、現状では国防費で4981億ドル、非国防費で4688億ドルになっている。
で、この上限に基づいてオバマ大統領が予算案を提案することになるわけですが、次の項目はPresident's Proposed Changes to Discretionary Limits in the 2014 Budgetとなっている。つまり2014年度予算については、この裁量的経費の上限について見なおしを提案しますよと。で、その下にごちゃごちゃと数字が出ている。特にOCO/GWOT(Oversea Contingency Operations/Global War On Terror)の項目では、Defenseに88.5 bnの積み増しをやっている。その結果、President's proposed limits in the 2014 Budgetの裁量的経費の内訳は、国防費で6405億ドル、非国防費で5146億ドルになっている。
なんでしょう。こんなにいきなり見なおしを提案されちゃぁ、歳出強制削減の意味がないような気がするんですが。違うんでしょうか。
で、オバマ大統領の予算案に関するデータはこちらにあるんですが、このうちの一番下のファイル(Summary Tables)の中にあるTable S–5. Proposed Budget by Categoryというのを見てみると、一番最後の項目にMemorandum, budget authority for appropriated programsというのがあって、そこに出ている数字が先ほどのレポートにある国防費6405億ドル、非国防費5146億ドルという数字と一致しています。つまり裁量的経費に関する予算の枠はこれだけですよ、ということなんだと思う。
でも、同じ表の一番上の項目をみると、裁量的経費のうち国防費は6180億ドル、非国防費は6240億ドルとなっている。非国防費が枠を超えちゃっているような気がするんですけど。
私が重大な勘違いをしているんでしょうか、それとも「どっちにしたって民主党と共和党が合意すりゃいいわけだから、とりあえずは枠なんて無視しちゃえばいいんじゃないの。結局、BCAの枠を超えて国防費も非国防費も出すんだから、合意しやすい内容でしょ」ってことなんでしょうか。
変なの。
2013年4月25日木曜日
スーチーさんがやってきた。
この前、ミャンマーのアウンサンスーチーさんが来日して、東京大学で講演していました。(動画)スーチーさんは言わずと知れたミャンマー民主化運動の指導者で、1991年にはノーベル平和賞も受賞した人です。自宅軟禁されたり、開放されたりといったことを繰り返してきた人ですね。そうしたなかで、ミャンマーの軍事政権は2010年11月にスーチーさんを解放し、11年3月には民政移行もやってしまった。長年にわたるスーチーさんの戦いは実を結びつつあるわけです。
私はそんなニュースを聞く度に、「スーチーさん、これから何するんだろう」って思っていたわけです。「民主化しろ!」って言い続けてきた人ですから、実際に民主化が実現したら、やることなくなっちゃうんじゃないかって。それに日本なんかじゃ、ずっと野党だった政党が政権についたら期待されたほどの仕事をできないなんていうことがあるわけですけど、スーチーさんもそんな風になっちゃうんじゃないかと。
で、この講演をちょっと前に聴いた。うろ覚えのところもありますが、のっけから「自由には責任が伴う」なんていう硬派な発言しています。しまいにはケネディの有名な言葉を引用して、「国家が何を与えてくれるのかを問うのではなく、国家にどんな貢献ができるかを問うべきだ」なんていうことまで言う。こういったことは、何も日本の東京大学の学生を対象とした講演だから言っているわけじゃなくて、ミャンマーの若い人たちにも言っているんだそうです。へぇ。なんかイメージ違いますね。もっと、「軍政反対! なんでも反対! だめなものはだめー! 援助ちょーだーい!」みたいな人かと思っていました。失礼な話ですね。いや、まぁ、なんの根拠もなく思っていたんですけどね。
あと、聴衆から「軍との関係をどうするのか?」と問われて、「そう尋ねられるといつも戸惑うんですが、」とかなんとか切り出していたのが印象的。スーチーさんは民主化運動を始めた当初から、「国民が軍を愛していた時代に戻る」ということを目標としていたということで、何も「軍を追い出せ!」と言っているわけじゃないんだそうです。長年、軍事政権に拘束・軟禁されてきた人ですから、もっと軍自体を嫌悪しているのかと思っていましたが、理想とするのは、「軍と国民がともに国の安全のために行動できる」という状況なんだとのこと。だから軍との関係については、「良い関係を築きたい」ということになるんですね。まぁ、アウンサン将軍の娘ということですから、当然かも知れませんが。
そういえば、スーチーさんがミャンマー中部の銅鉱山開発を支持して、地元の住民から怒号を浴びるなんていうニュースもありました。(参照)
この記事の最後に出てくるスーチーさんの言葉は、
“I have never done anything just for popularity,” she said. “Sometimes politicians have to do things that people dislike.”
です。
かっこいー。
あと、ミャンマーの民主化っていってもまだまだなんですね。スーチーさん自身が講演で説明していますけど、ミャンマーの憲法は議席の4分の1を軍人に割り当てることが決まっているんですね。なんかよく分からん制度ですが。で、この憲法改正には4分の3以上の賛成が必要。ということで、軍の同意を得られなければ、議席の4分の1を軍に割り当てるという軍優位の規定を変えることができない。
しかもスーチーさん解放直前の軍政下で行われた2010年11月の総選挙は、スーチーさんの政党である国民民主連盟(NLD)のメンバーの多くが立候補を禁止されたため、NLDは選挙をボイコット。その結果、軍の支援を受ける連邦団結発展党(USDP)が上下院の選挙議席の8割近くを占める大勝を収めました。(参照) NLDはスーチーさんも立候補した2011年4月の補選で大勝して、上下院あわせて44議席を獲得していますけど、軍人割り当て分も考慮した全議席に占める割合は10%程度です。(参照) それでも「最大野党」って呼ばれるわけですから、民主化への道のりはまだ始まったばかりという感じでしょう。
どうなるんですかね。ミャンマーとスーチーさん。
画像はどっかで拾ったスーチーさん。綺麗な人ですね。
2013年4月7日日曜日
ランド・ポールって誰?
ちょっと古い話なんですが、3月に米国でConservative Political Action Conference 2013というイベントがありました。米国の保守系の人たちが集まって盛り上がろうっていうイベントで、その一貫としてstraw pollっていう参加者を対象にしたアンケートが名物企画になっています。で、そのアンケートで「次の共和党の大統領候補は誰がいい?」と聞いたところ、ケンタッキー州選出のランド・ポール(Rand Paul)上院議員がトップになった。(参照)毎年恒例のこのアンケートでトップに選ばれた人には、大統領就任前のロナルド・レーガンやジョージ・ブッシュ(子)、昨年の大統領選挙で共和党候補となったミット・ロムニーなんかがいるわけで、これはランド・ポールについても調べておかねばならないなと。
ランド・ポールは、有名なロン・ポール前下院議員の息子です。この親父さんは2008年や2012年の大統領選での共和党候補に名乗りを上げたり、2大政党が浸透している米国で「リバタリアン党」として活動したりといった何かと騒がしい人。私はなんとなく「ドン・キホーテ」的なイメージを持っていたりしたのですが、2010年、2011年にはCPACのstraw pollでトップ候補に選ばれたりもしている。割とちゃんとした人気がある人みたいです。
で、私はこの「リバタリアン」っていう考え方についてよく知らないもので、ウィキペディアでもうちょっと調べておきますと、とにかく「小さな政府を目指す」っていうことを徹底させた考え方のようです。増税には反対、歳出削減には賛成、公的な健康保険の拡大を目指すオバマケアには反対って感じですかね。それだったら共和党と変わらないんじゃないかっていうことにもなりそうなもんですが、徹底的に小さな政府を志向するわけですから、米国が海外紛争に介入することにも反対するし、同性婚についても「自由にやれば?」ってな感じで容認姿勢をとっている。小さい政府好きの人にとっては、分かりやすい主張です。
ただ、ロン・ポール自身については、過去に「黒人の95%は犯罪者予備軍か、犯罪者だ」とか「ホモは日陰で暮らしていた方が幸せなんだ」なんていう趣旨の過激な文章を書いていたようです。本人は「ゴーストライターが書いたんだ。内容については知らなかった」なんて言い訳しているようですけどね。まぁ、77歳ですから、若い頃にはいろいろと書いちゃったりもしていたんでしょう。
で、ようやくランド・ポールの話なんですが、この方は50歳。ウィキペディアによると、大学では薬学を勉強して、卒業後も医療関係の仕事をしていたわけですが、その一方で1994年にケンタッキーで反課税運動を組織したりして政治活動も行ってきた人です。親父さんの選挙選に参加したりしながら、2010年のケンタッキー州の上院選挙に満を持して立候補して、当選。そして今では「共和党大統領候補」の呼び声も高いというわけです。自分の政治信条について「小さな政府がいいと思うけれど、完全なリバタリアンではない」としているようで、親父さんとは違って米軍が海外に介入することには賛成らしい。あと、ブレナンCIA長官の承認に関しては、13時間のフィリバスター演説をやったりもしている。
ランド・ポールのCPACでのスピーチを聞いてみると(参照)、こんなことを言っています。
・自由を拡大させるなら、政府は小さくならねばならない
・経済を成長させるには、政府は手を引かねばならない
・エジプトにくれてやる金なんてない。奴らは米国の旗を燃やして、「アメリカに死を」と叫ぶような奴らだ
・唯一の景気刺激策は、稼いだお金を稼いだ本人の手に留めておくことだ
・法人税は半分にする
・所得税は一律17%
・規制緩和で企業活動を活性化
・教育省(Department of Education)は廃止する
・銃を持つ権利は守るべき
なかなか過激なことを言っています。連邦政府は縮小して、細かいことは州政府にまかせればいいって感じなんでしょうか。
まぁ、要注目っていうことで。
登録:
投稿 (Atom)
