2016年5月13日金曜日

"The Paper Menagerie and other stories"

"The Paper Menagerie and other stories"を読んだ。中国出身のSF・ファンタジー作家、Ken Liu(ケン・リュウ)の短編集です。米国版は2016年3月出版。日本版の短編集「紙の動物園」は2015年4月に出ています。短編集ですから、それぞれの作品はそれより先に発表されていて、日本の方で先に短編集が出たってことなんでしょうね。

表題作の"The Paper Menagerie"は2011年発表。この年のヒューゴー賞ショート・ストーリー部門、ネビュラ賞ショート・ストーリー部門、世界幻想文学大賞短編部門賞の三冠を獲得しました。これが日本のSFマガジン2013年3月号に掲載されています。

いつもチェックしている前川淳という折り紙作家のブログで2014年6月と2015年5月に「紙の動物園」が紹介されていて、読んでみたいなと思っていました。そしたら英語の短編集も最近になって出たということで、早速購入してみた次第です。

日本語版、英語版とも15編の収録ですが、作品は異なっています。同じなのは7作品。

The Paper Menagerie(紙の動物園)
Good Hunting(良い狩りを)
Mono No Aware(もののあわれ)
A Brief History of The Trans-Pacific Tunnel(太平洋横断海底トンネル小史)
The Waves(波)
The Bookmaking Habits of Select Species(選抜宇宙種族の本づくり習性)
The Literomancer(文字占い師)

英語版だけに載っている8作品は以下の通り。

State Change
The Perfect Match
Simulacrum
The Regular
An Advanced Readers' Picture Book of Comparative Cognition
All the Flavors
The Litigation Master and the Monkey King
The Man Who Ended History: A Documentary


どの作品も面白いです。

日本語版と共通作品のなかでは、「紙の動物園」「もののあわれ」「波」「文字占い師」、

英語版のみの作品のなかでは、

インターネットの検索を牛耳る企業による情報統制が常態化した社会を描く"The Perfect Match"

サイボーグ化した中国系米国人の女性のアクション活劇"The Regular"、

19世紀のゴールドラッシュで西海岸にやってきた中国人労働者の集団と三国志の関羽雲長のストーリーをごちゃませにした"All the Flavors"、

不都合な歴史を押し隠そうとする清王朝とそれに抵抗する詭弁家の男の話を西遊記で味付けした"The Litigation Master and the Monkey King"、

意識だけをタイムトリップさせて過去を観察する技術を開発した日系女性物理学者と、その夫で第二次世界大戦中の日本の731部隊の実体を世に知らしめようとする歴史家の男性の行動をとりあげながら、歴史と現在の関係性について考察した"The Man Who Ended History: A Documentary"

なんかが印象的です。

ケン・リュウさんは中国の甘粛省蘭州市生まれで11歳で渡米したということです。中国、台湾、日本の文化や歴史にも詳しいのでしょう。「もののあわれ」では典型的な日本人観に基づいた日本人を描いています。一方、"The Man Who Ended History: A Documentary"では、第二次世界大戦中の日本人による残虐な行為を中国視点で描きつつ、日本としての「歴史的な過ちは認めるんだけれど、過去の行為を否定しきってしまうこともできない」という悩ましい内面も描いています。


また別の本も読んでみたい。

2016年4月20日水曜日

How I Met Your Mother

10日ほど前に"How I Met Your Mother"を見終わった。ネットフリックスで1~9シーズンまで。非常に面白かったです。すべての日本人が見るべき。
「ママと恋に落ちるまで」の邦題で日本でもケーブルテレビで放送されていたらしいです。今でも放送されているのかもしれません。

CBSが2005年から2014年、足かけ10年かけて放送したシットコムです。CM抜きで1話20分ぐらいで、全208エピソード。つまり4160分=約69時間半。基本的にはドラマを観ることはほとんどないのですが、日本での放送を見たことがあった嫁さんが「面白い」と言っていたので、英語の勉強になると思って見始めてハマった。

物語は主人公のテッド・モズビーが2030年時点で、ティーンネージャーの子供2人対して「自分がどうやって君たちの母親(ママ)と出会ったか」と語るという設定です。実際の物語自体は2005年から2013年5月25日の2人の出会いの場面まで。ただし登場人物たちの学生時代のエピソードや、ママと出会った後のエピソードもところどころに挟まれます。

各ストーリーの内容は、いってしまえばテッドたち仲良し男女5人組がマンハッタンを舞台に繰り広げる恋愛模様と面白エピソードということになります。ウィキペデイアで、"Known for its unique structure and eccentric humor, How I Met Your Mother has gained a cult following over the years"とされているように、各エピソードのシナリオはよく練られていて、洒落たセリフや思いがけない展開が満載です。で、ジョークは8割が下ネタ。だからと言ってはなんですが、日本人でもよく分かります。子供に説明を求められたら、返答に窮するようなものばかりですが。このほかのジョークは、男女交際あるある、学生生活あるある、酔っ払いあるある、親子あるある、社会人あるある、子育てあるある、夫婦あるある、カナダあるある、懐かしのテレビ番組あるある、スターウォーズあるあるって感じですかね。懐かしのテレビあるあるは、正直よく分からないですが、ある意味勉強になります。

最初の設定では5人のうち幼稚園の先生のリリー・オールドリンと弁護士志望のマーシャル・エリクソンが鉄板のカップル。バーニー・スティンソンはバーでナンパを繰り返す遊び人。テッドはカナダからニューヨークに来たばかりのロビン・シュバツキーに一目惚れします。ここにサブキャラクターたちが加わって、くっついたり、はなれたり、くっついたり、はなれたり、くっついたり、はなれたりして、テッドとママとの出会いまで物語が続きます。

観る側の関心は「結局、テッドと結婚するママって誰なの?」っていうところなんですが、2030年の時点のテッドは子供たちに対してロビンのことを「ロビンおばさん(Aunt Robin)」と呼んでいるので、どうも「ロビン=ママ」ではないようです。じゃぁ、誰なんだってことですよね。物語が進展していくと、やっぱり「テッドとロビンが結婚するしかしかありえなんじゃないか」と思える展開もあるし、「テッドとロビンが結ばれることはありえないな」と思えるような展開も出てきます。

こうしたシリーズ全体の構成上、私なんかは「ママと出会った瞬間に物語は終わってしまうから、テッドとママの間のドラマが十分に描かれないんじゃないか」なんて心配していたんですが、そんなことは心配しなくて良かったです。ママとの出会いのシーンへの複線はシーズン3ぐらいから少しずつ引かれ始め、シーズン6ぐらいからはあからさまに引かれ出して、シーズン9では複線を見事に回収していきます。出会いのシーンなんてね、悶絶ものですよ。この構成は最初から決められていたんでしょうか。それとも適当に引いた複線を強引に改修したんでしょうか。いずれにしても悶絶ものであることに変わりはないですが。

エンディングには賛否両論あったようですが、あれは観る側が好きなように納得すればいいんじゃないでしょうか。作品の評価を落とすものではないと思います。

私のような40代のおっさんがマンハッタンを舞台にした男女5人の恋愛ドラマをみるなんていうのは気持ちが悪いかもしれませんが、テッドたちとほぼ同世代であるだけに楽しめる部分が多かったと思います。

2016年4月7日木曜日

Crippled America: How to Make America Great Again

“Crippled America: How to Make America Great Again”という本を読んだ。共和党の大統領候補選びでトップを走っている不動産王のドナルド・トランプさんの本です。昨年11月に出た本で、一応読んでおいた方がいいのかと思って読んだ。200ページほどのボリュームで、すぐに読めます。まぁ、演説や討論会で話している内容と同じなわけですが、本なので一応のまとまりがあります。思いのほか面白かった。

本は全体で17章構成。最初のうちは1章ごとにひとつの政策課題について書いています。不法移民、外交、教育、医療保険といった感じですね。そのうち自己紹介的な内容になってきて、「俺は実はいいヤツなんだ」とか「俺こそ愛国者なんだ」みたいな話になります。

いわんとすることは、「俺は成功したビジネスマンだから、交渉の仕方を知っているし、妥協の仕方も知っている。政治家は政治献金をしてくれる企業の顔色ばかりをうかがっているけど、俺はそうじゃない。自分の考えで動くし、いつも米国全体のことを考えている。大統領にふさわしいのは俺だし、俺を批判するメディアの連中は偏向している」ということですね。

トランプさんの問題意識は一般国民と違うわけじゃないです。「貧乏人は勝手に苦労してろ!」みたいなことは言わない。共和党のエスタブリッシュメントみたいな人は「大企業寄り」みたいなイメージがありますが、そうした立場とは一線を画しているんだと思います。ただ、解決の方法は具体的じゃない。ひたすら「俺はビジネスマンだから、同じことをやらしても、政治家よりはうまくやれる」という論法を繰り返すだけです。既存の政策は全否定。どんな政策だって、「俺がやったら、もっとうまくいっていたはずだ」と言ってしまう。

こんな論法のトランプさんが支持されるのは、今のワシントンの政治が「オバマ対議会」「共和党対民主党」「共和党穏健派対ティーパーティー」なんていう対立がこじれちゃって、どこにも妥協が成立しない状況が続いてきたからだと思います。2008年にオバマが大統領に初当選したとき、オバマは「ひとつの米国」を訴えたし、国民もそれを期待した。でも実際はそうはならなかった。下院議長になったばかりのポール・ライアンが仕切った昨年12月の予算協議はようやく出てきた前向きな動きだったわけですが、米国民はちょっと待たされすぎたわけです。だから、「政治家じゃないトランプさんだったら、なんとか上手くやってくれるかも」というムードがあるのだと思います。

自分が大金持ちで成功者であることをアピールするのも、そういった期待を高めるためなんでしょう。あと、自分の子供たちが立派な大人になっていることをアピールするのも、自分が父親としても成功していることを強調しているのだと思います。実際、トランプの子供たちの悪い評判は聞きません。

ただ、こうした論法はオーナー企業のトップとしては成立するかもしれませんが、政治の世界ではどうなんでしょうという疑問もあります。トランプさんが自分の会社で決断したことは、例え妥協の産物で不満を抱く人がいたとしても、異議を挟む人はいません。株主は自分ですしね。でも大統領が現実的な妥協をすれば、あらゆる方向から異議が出てくる。そもそも大統領は独裁者じゃないから、なんでも自分の思い通りの決断ができるわけじゃないし。このあたりのことをトランプさんはどう考えているのか。自分の資金と弁舌とメディア操縦術をもってすれば、政治家たちを黙らせることが出来ると思っているんでしょうか。それともオーナー企業のトップと大統領は同じようなものだと思っているのか。

ちなみにトランプさんは高い手腕をもった大統領として、レーガンとジョンソンの名前を挙げています。ジョンソンについては、公民権法を成立させたときの交渉手腕を評価しているみたいですね。”he took on the far left and the far right and threatened them in order to get his way”なんて書いています。あと、自分は1990年代の失敗から学んでいるとしているのも印象的です。こんなトランプさんでも、辛かったんでしょうね。


そのほかの語録としては、

“I’m a practical businessman who has learned that when you believe I something, you never stop, you never quit, and if you get knocked down, you climb right back up and keep fighting until you win”

“I learned a long time ago that if you’re not afraid to be outspoken, the media will write about you or beg you to come on their show”

(移民排斥主義者だとの批判について)“The next thing you heard was that Trump said all immigrants were criminals. That wasn’t what I said at all, but it made a better story for the media

“It’s not fair to everyone else, including people who have been waiting on line for years to come into our country legally”

“Most important is ending or curtailing so-called birthright citizenship, or anchor babies”

“If fact, I would like to reform and increase immigration in some important ways…..This country is a magnet for many of the smartest, hardest-working people born in other countries, yet we make it difficult for these bright people who follow the laws to settle here ”

(現在の外交政策を批判して)“When you’re digging yourself deeper and deeper into a hole, stop digging”

“The best way not to have to use your military power is to make sure that power is visible. When people know that we will use force if necessary and that we really mean it, we’ll be treated differently. With respect”

(イラクが1991年にクウェートを侵攻した際、クウェートの富裕層は避難先のパリで贅沢な暮らしを続けていたとして)”They were watching TV in the best hotel rooms in Paris while our kids were fighting for them”

“We can’t be afraid to use our military, but sending our sons and daughters should be the very last resort”

“Unfortunately, it may require boots on the ground to fight the Islamic State. I don’t think it’s necessary to broadcast our strategy”

“The side that needs the deal the most is the one that should walk away with the least”

“I know the best negotiators in this country, and a lot of them would be ready to go to work creating a fair balance of trade”

“I don’t want people to know exactly what I’m doing ---or thinking. I like being unpredictable”

(教育問題について)“You know what makes a kid feel good? Winning. Succeeding”

“We need to get a lot tougher on trouble makers. We need to stop feeling sorry for them. They are robbing other kids of time to learn. I’m not saying we should go back to the days when teachers would get physical with students, but we need to restore rules about behavior in the classroom and hire trained security officers who can help enforce those rules”

(気候変動問題について)”We have even had ice ages. I just don’t happen to believe they are man-made”

(オバマケアについて)”And it was only approved because President Obama lied 28 times saying you could keep your doctor and your plan --- a fraud and the Republicans should have sued --- and meant it”

“To succeed in business, you have to be flexible and you have to change with the realities of the world”

“There is no question we need real health care reform. We can’t let Americans go without health care because they don’t have the right resources”

“We should hire the most knowledgeable people in the world on this subject and lock them in a room --- and not unlock the door until they’ve agreed on the steps we need to take”

“During the Recession of 1990 many of my friends went bankrupt, and never recovered. I never went bankrupt. I survived, and learned so much about how to deal with bad times”

“In the 1990s, the government changed the real estate tax laws and made those changes retroactive. It was very unfair, but I fought through it and thrived. It absolutely killed the construction industry. It put a lot of people out of business”

“We should not touch Social Security”

“I’m a nice guy. I really am”

“A great leader has to be flexible, holding his ground on the major principles but finding room for compromises that can bring people together”

“By nature, I’m a conservative person. I believe in a strong work ethic, traditional values, being frugal in many ways and aggressive in military and foreign policy. I support a tight interpretation of the Constitution, which means judges should stick to precedent and not write policy”

(火星に人類を送るミッションについて)”I think it’s wonderful. But I want to rebuild our infrastructure first on Earth…I don’t understand how we can put a man on the moon but we can’t fix the potholes on the way to O’Hare International Airport”

“There is nothing, absolutely nothing, that stimulates the economy better than construction”

“I’m not going to pretend that being rich doesn’t offer a lot of wonderful opportunities, but it doesn’t necessarily make you happy. I’ve learned that wealth and happiness are two completely different things. I know the riches people in the world. Many of them are great negotiators and great businesspeople. But they’re not necessarily nice people, nor are they the happiest people”

“It’s not fun being a landlord. You have to be tough”

“My two oldest sons claim they’re the only sons of a billionaire who know how to run a Caterpillar D10”

“Honestly, I was a bit of a troublemaker. My parents finally took me out of school and sent me upstate to the New York Military Academy”

“Stand behind your word, and make sure your word stands up”

“The way you dress and the way you act is an important way of showing respect for the people you are representing and the people you are leading with. Impressions matter”

(税制改革案について)“It also eliminate the death tax, because you earned that money and already paid taxes on it. You saved it for you family. The government already took its bite; it isn’t entitled to more of it”

“The Democrats want to make inversions illegal, but that isn’t going to work. Whatever laws they pass, with literally billions of dollars at stake, corporations will find methods to get around them. It makes a lot more sense to create an environment that welcomes business”

(1970年代に手がけたグランドハイアットの改装事業について)”During the years it took me to put this deal together, I learned a lot about working with the city and the banks, the construction industry and the unions”

(トランプタワーの建設事業について)”One of the things I’m most proud of about that building is that the person I put in charge of overseeing construction was a 33-year-old woman. I made that decision in 1983, when the fight for gender equality in business was really beginning”


政治や外交、経済の専門家からすれば笑止千万な内容なのかもしれませんが、一般庶民の目線に立てばうなずける部分も多いと思います。問題はここに書かれていることが、どれだけ本当か分からないところでしょうか。

2016年3月22日火曜日

The Maze Runner

"The Maze Runner"という小説を読んだ。アメリカには「ヤング・アダルト向け小説」というジャンルがあります。だいたい14~21歳ぐらいの世代に向けた小説らしいのです。ただ、実際に読んだことがなかったもので、ちょっと読んでみました。

舞台は四方を巨大な迷路に囲まれた"Glade"と名付けられた場所。ここに送り込まれた数十人の少年たちがGladeから脱出を試みるという話です。少年たちは最年長で16歳ぐらいで、地下につながっている坑道に設置されたエレベーターでGladeに送り込まれてきたのですが、記憶を失っているのでどうして自分がこんな場所にいるのか分からないし、どうやったら脱出できるかも分からない。坑道を通って地下に行けばいいんじゃないかと思うのですが、その坑道に身を投じると、なんか体が切り刻まれることになるそうです。ということで迷路の中を走って、出口を見つけ出そうとするわけですね。ちなみに迷路のなかには、Greiverという機械じかけのモンスターがいます。主人公はこのGladeに新たに送り込まれてきたトーマスという少年と、その翌日に送り込まれてきたテレサという少女。2人は少年たちのリーダーグループとケンカしたり協力したりしながら、迷路からの脱出に力を目指します。

まぁ、マンガみたいな話ですね。私が読んだことがある本のなかでは「バトル・ロワイヤル」とか「新世界より」とかに近い雰囲気なんだと思います。マンガだったら「進撃の巨人」ですかね。ただ、バトル・ロワイヤルとか新世界よりは、大興奮のすえに読み終わったときにときに「このストーリーを映画にしても、2時間ちょっとの枠では面白さを伝えることはできないだろうなぁ」なんて思ったものですが、このMaze Runnerの場合は「ふーん」って思いながら読んで、読み終わった後に「2時間の映画にすればちょうどいいかな」ってぐらいの感じです。実際に映画化されてますしね。言ってしまえば、設定がありきたりで、かつ雑ですよね。まぁ、14~21歳向けですから、43歳のおじさんが読んじゃいけないのかもしれません。

ヤング・アダルトについてひとつ勉強しました。

2016年2月6日土曜日

The Japanese Lover

"The Japanese Lover"という小説を読んだ。「昨年の秋ごろに有名作家の待望の新刊がでます!」みたいな感じで話題になっていて、タイトルがJapanese Loverということなので、どんな本なのだろうと思って、昨年末ごろから読み始めたものです。ラブストーリーはほとんど読んだことがないので何とも比較のしようがないですが、別に面白くもない小説でした。

カリフォルニアの高齢者施設で暮らすアルマ・ベラスコさんという女性のストーリーです。アルマさんは子供のころ、第二次世界大戦中のポーランドからユダヤ人迫害を逃れて、親戚にあたるカリフォルニアの資産家の一家であるベラスコ家で暮らすようになって、そこで出会った庭師の息子で、同じ年頃の日系2世の男性、イチメイ・フクダさんと恋に落ちる。で、まぁ、いろいろあって2人は結ばれなかったわけだけれど、それでも2人の愛は永遠に続いているのだっていう筋立てですね。典型的なラブストーリーなんでしょうか。終盤になって何人かの登場人物の以外な過去が明らかになったりもするのですが、「あぁ、そうだったのね」というぐらいの話です。「実はイチメイ・フクダはアルマの想像のなかでしか存在しない、戦争でトラウマを背負った少女が現実逃避のために生み出した架空の人物像だったのだ!」なんていう話ではありません。

で、私の個人的な関心は、こういう小説に登場する日系人っていうのがどんな風に描かれるのかということなわけですが、これが驚くほどにステレオタイプでした。

・子供のころのイチメイは細身で小柄。でも重い荷物でも軽々運べる
・目は離れ気味で、笑うとなくなってしまう
・父親から空手と柔道を教わっている。気の弱いベラスコ家の長男に手ほどきをしたところ、その長男はいじめっこを投げ飛ばすことができるようになった
・大人になってからも、身長はアルマさんより頭半分低い。でも知的で、アルマが戦争の悲しみを引きずっているときは、いつでも気を紛らわせてくれる
・イチメイの父親のタカオは英語が上手くないが、庭師としての腕は一流で、ベラスコ家の当主、アイザックの厚い信頼を得る
・タカオは日系人として強制収容されたときも「仕方がない」と受け入れた。家宝として大切にしていた日本刀をアイザックに託した
・イチメイの母親はヒデコは明るく、しっかりとした働き者。
・イチメイの姉のメグミもしっかりとした働き者。勉強して医者になろうとしている
・イチメイは手先が器用で、収容所のなかで木製のヨットを作って遊んだりした
・イチメイの兄のひとり、チャールズは日系人部隊に志願して戦死。
・もうひとりの兄、ジェームズは日系人の収容への抵抗運動を続けて、行方知れずになった
・タカオは戦後に収容所を出た後、アイザックとの共同事業として花卉栽培のビジネスを始めるが、タカオ自身は金儲けには興味がない
・イチメイはタカオの仕事を引き継ぐことになるが、やはり商売っ気はない

チャールズとジェームズは日本人のステレオタイプからは離れている気もしますが、まぁ名前がチャールズとジェームズですからね。作者が大して愛着をもっていないことは明らかです。あと、イチメイはベッドのなかでは情熱的らしいですよ。これはどうなんでしょう。ステレオタイプなんでしょうか。

ニューヨーク・タイムズの書評でも「登場人物がステレオタイプ」をされていますね。
http://www.nytimes.com/2015/12/13/books/review/the-japanese-lover-by-isabel-allende.html?_r=0

まぁ、感想としてはそのぐらいです。

あと、キンドルで本を読んでいると、下の方に「このチャプターを読み終えるのに約20分かかります」なんていう表示がでるのですが、実際に読んでみると本当に20分ぐらいで終わったりしました。読むのが早くなったのかもしれません。まぁ、そんなに難しい英語でもないし、難しい筋立てでもないですけどね。

2015年10月14日水曜日

"The Residence: Inside the Private World of the White House"

“The Residence: Inside the Private World of the White House”を読んだ。ブルームバークの記者のKate Anderson Browerさんがホワイトハウスで働くスタッフや大統領夫人や子供ら100人以上にインタビューして書いた、ホワイトハウスの内幕ものです。政治や外交の中心であるホワイトハウスの中で、大統領やその家族、スタッフたちがどんな私生活を送っているのかが描写されています。面白くて読みやすい。ただ、内容にまとまりはなくて、エピソードが羅列されているだけの感が強いです。

印象としては、

(気むずかしい人)
ジャクリーン・ケネディ、リンドン・ジョンソン、リチャード・ニクソン、ナンシー・レーガン、ヒラリー・クリントン

(優しい人)
ジェラルド・フォード、ジミー・カーター夫妻、ロナルド・レーガン、ジョージ・H・W・ブッシュ夫妻

(エロい人)
ジョン・F・ケネディ、リンドン・ジョンソン、ビル・クリントン

(よく分からない人)
バラク・オバマ夫妻

という感じ。ファースト・レディーはおおむね難しい人で、共和党の大統領はおおむね優しくて、民主党の大統領はおおむねエロいという感じでしょうか。そんななか、H.W.ブッシュ夫妻の評価が高い気がします。あと、ホワイトハウスと黒人スタッフの歴史も興味深かったです。


以下、面白エピソードを列記してみます。

・オバマ大統領が2009年に就任式を終えて初めてホワイトハウスに入った夜。大統領家族の生活スペースである2階に上がったスタッフは、オバマが”I got this, I got this. I got the inside on this now”と叫んでいるのを聞いた。その後、Mary J. Bligeの”Real Love”が流れて、オバマはワイシャツ姿で、ミシェルはTシャツにスウェットパンツといういでたちでダンスを始めた。

・オバマの家族は初めのうちは多くのスタッフに囲まれるホワイトハウスの生活になじめなかった。シカゴ時代は家政婦を1人雇っていたけど、ナニーは雇わず、マリアとサーシャはミシェルの母親のマリアンと過ごしていた。なのでオバマの家族はホワイトハウスでもプライバシーを求めた。マリアンもホワイトハウスの3階に住むことになった。ミシェルはマリアには自分の洗濯物は自分でするように教えた。マリアンも自分の洗濯は自分でやった。

・就任式の朝、大統領は退任する大統領と自らの安全保障スタッフからブリーフィングを受ける。このブリーフィングの最後に、核攻撃開始のために必要なコードについて知らされる。実際に大統領が就任式で宣誓すると、コードを運ぶブリーフケース「フットボール」は常に大統領の身の回りにおかれ、大統領は攻撃開始に必要なカードを渡される。

・裕福な家庭で召し使いに囲まれて育ったジャクリーン・ケネディは完璧主義者でホワイトハウスの日々の運営に口出しした。夜のうちにやらねばならないことを書き出したメモを作り、仕事を終えるとメモにチェックマークをつけていった。いつも持ち運んでいるノートには、チーフ・アッシャー(総支配人的な役職)への支持が書き連ねられていた。

・アイゼンハワー大統領は毎晩10時に就寝する規則正しい生活を送った。でもケネディ一家は就任式の夜、午前2時にセレモニーの会場から友人たちを連れてホワイトハウスに戻って、2階でパーティを始めた。最後のゲストが帰ったのは午前3時15分。その後、ケネディはドアマンにコーラを部屋まで持ってくることと、夜風を部屋に入れるために窓を開けることを頼んだ。ジャクリーンはドアマンに食前酒を持ってくるように頼んだ。ドアマンは午前4時まで帰れなかった。

・ホワイトハウスの家具はメリーランド州リバーデールの完全空調が施された倉庫に保管されている。新しくホワイトハウスに入る大統領の家族は、ここで自分の好きな家具を選んでホワイトハウスに持ち込む。

・H.W.ブッシュはホワイトハウスをクリントン家に引き継ぐとき、ブッシュ家の飼い犬”Millie”をなでているチェルシーに対して”Welcome to your new house”と声をかけた。ブッシュは伝統に従って、オーバルオフィスのデスクにクリントンへのアドバイスを書いたメモを残した。クリントンが8年後にW.ブッシュにホワイトハウスを引き継ぐとき、自身のメモと一緒に、H.W.ブッシュのメモもデスクに残した。内容は公表されていない。

・クリントン一家はホワイトハウスのリフォームに40万ドルかけた。すべて個人としての寄付でまかなった。でもホワイトハウスの外部からは顰蹙の声もあがった。プライベートを重視するクリントン一家は、ホワイトハウスから電話をかけるのにオペレーターを通さなければならないことを不満に思って、ホワイトハウスの電話システムを完全に入れ替えた。

・ジョンソン大統領の娘のルーシーは、両親がディナーで不在の間に友達をホワイトハウスでのスリープオーバーに招待した。その夜、自分の部屋にある暖炉に火をつけてみたが、暖炉の使い方を知らなかったので、部屋の中に煙が充満。グラスやゴミ箱で水をかけて火を消そうとしたけれどうまくいかず、結局は机にのぼって窓を開けて煙を部屋から出した。結局、ホワイトハウスの警察官が部屋に駆けつける事態になった。

・フォーマルなスタイルの生活を好んだニクソンが辞任した後にホワイトハウスに入ったフォード一家はリラックスしたスタイルだった。フォードの4人の子供たちはジーンズ姿で暮らした。娘のスーザンは両親が不在の際、ホワイトハウスのフロアでローラースケートで遊んでいた。

・ホワイトハウスの食費などは大統領家族がプライベートで負担する。なので大統領家族は大抵の場合、スタッフに対してなるべく節約するように依頼する。例外はH.W.ブッシュのファーストレディーのバーバラ・ブッシュ。バーバラ曰く、食費やクリーニング代は個人として負担せねばならないけれど、電気代や空調、生花、執事、配管工などは負担しなくていいので、「ホワイトハウスに住むことはとてもお得。何の責任も負わなくていいのなら、また戻って暮らしたいぐらいだわ」

・ヒラリーが雇ったシェフのWalter Scheibはローラ・ブッシュに解雇された。Scheibはヒラリーが好んだ高級な米国料理を作ってきたが、ブッシュは正反対の好みだった。ヒラリーが”layered late-summer vegetables with lemongrass and red curry”のような料理が好きだとすれば、ブッシュはTex-Mex ChexとかBLTが好きだった。ちなみに、ビル・クリントン自身は遊説などでヒラリーの目が届かないときには、アンヘルシーな料理でも満足していた。

・H.W.ブッシュは副大統領、大統領を10年以上務めたので、退任したころは世間ずれしていた。バーバラ・ブッシュの回想録によると、当時、ピザの宅配を注文できることを知って大いに驚いたという。

・H.W.ブッシュはホワイトハウスのスタッフから心から好かれていた。ブッシュ家は何にでも喜んでくれたし、スタッフもリラックスできた。ある日、バーバラはChief Usherに対して、「ホワイトハウスで美味しくないものを食べたことがない。だからシェフには毎晩好きなものを作るように言って。私たちは毎晩、料理を楽しめると思うわ」と話した。Chief Usherが「でも、好きなものじゃなかったらどうしますか?」と尋ねると、バーバラは「そのときは次は出さないでってお願いします」と答えた。

・ホワイトハウスで使われる食材はStoreroom Managerが一般人として普通の食材店に買いに行く。その店は誰にも教えられていない。食材に毒物が混入されるなどのトラブルを避けるため。

・クリントン夫妻はホワイトハウス内で激しく口論しているところを何度か目撃されている。その後、ずっと口を聞かないこともあった。ただ、仲が良いときは、夜遅くまでおしゃべりを楽しむ睦まじさもみせた。

・カーターの3人の息子たちはホワイトハウスで大麻を吸っていたらしい。外で大麻を吸っているのが見つかれば逮捕されるが、ホワイトハウス内なら安心だったのだろう。

・ホワイトハウスでは仕事よりもプライベートを優先させるスタッフは解雇される。ファーストファミリーは理由を説明することなくスタッフを解雇する権限があるとされる。

・クリントン家は在任中、State Dinnerを29回開いたので、厨房のスタッフにとっては大変な負担だった。ミレニアル・ニューイヤーのイベントだけでも、1500人が招待され、Executive Pastry ChefのRoland Mesnierは翌朝7時まで帰宅できなかった。W.ブッシュのState Dinnerは6回だけ。

・ナンシー・レーガンも要求が高かった。オランダの女王を招いたState Dinnerの準備をしている際、ナンシーはMesnierが提案したデザートのオプションを3度却下して、最終的に自分でデザートのアイデアを提案。非常に手の込んだ時間のかかるデザートだったので、Mesnierが「とても素晴らしいのですが、ディナーまでtwo daysしかありません」と意見を述べると、ナンシーは”You have two days and two nights before the dinner”と応じた。

・1987年12月8日、ソ連のゴルバチョフ書記長がフルシショフ以来のワシントン訪問を行ったとき、ナンシーはホワイトハウス内の生花を、朝の到着時とランチ時とディナー時で、すべて取り替えさせた。

・Mesnierはゴルバチョフのディナーの際、ソ連ロシアでは「キャビアと同じぐらい高価」とされるラズベリーをふんだんにつかったデザートを出した。ゴルバチョフが帰ったあと、ソ連からホワイトハウスの厨房に届けられた小包には7ポンドもの最高級キャビアが入っていた。

・H.W.ブッシュは気さくな人柄で、馬蹄投げをしているときスタッフに虫除けスプレーを持ってくるように頼んだ。ところがスタッフが誤って業務用の強力な殺虫剤を使ってしまい、大統領の顔が赤くなり、シャワーで殺虫剤を洗い流さなければならない事態になった。スタッフは真っ青になったが、大統領は「大丈夫、大丈夫。馬蹄投げを続けよう!」と問題視せず、誰も解雇しなかった。

・あるホワイトハウスのスタッフは父親が亡くなった際、キャンプデービッドにいたH.W.ブッシュから直接お悔やみの電話を受けた。それだけでも信じられないほどなのに、H.W.ブッシュの後にはバーバラも電話口に出て、お悔やみの言葉をかけた。

・ジョンソン大統領は荒々しい性格で何事にも満足しなかった。いつでも”Move it, Damn it, move your ass,”と叫んでいた。

・高校教師だったこともあるジョンソンは、ホワイトハウスのスタッフ1人1人にグレードをつけていた。突然、電気工事技師の事務所に顔を出して、「お前は今日、Fを取ったぞ」と言い放ったりした。

・ジョンソンは水圧の強いシャワーが好きだった。就任前、DCの自宅のシャワーは、あらゆる方向に取り付けられた複数のノズルから針のような刺激の水が吹き出て、そのノズルのひとつは自身の性器(自分で「ジャンボ」とあだ名をつけていた)に当たるようにしつらえられていた。ジョンソンは就任後、同じタイプのシャワーをホワイトハウスに取り付けた。配管やポンプの取り付けで数万ドルの費用がかかり、警護費用として支出された。ジョンソンの後任のニクソンは就任後、このシャワーをみて、「外せ」と命じた。

・ジョンソンは自分の周囲の人に子供が生まれると、自分の名前「リンドン」を付けるように説得しようとした。断られると、ひどく残念そうな表情をみせた。

・ナンシー・レーガンはジョンソン大統領と同じぐらい奇妙な振る舞いが目立った。ナンシーはスタッフの女性にロングヘアーを許さず、家政婦に対しては自分の衣類に購入した日付と最後に着た日を記したラベルを取り付けるように命じた。

・ヒラリー・クリントンには「仕えるのが難しい」という評判もあるが、「家政婦のような働く女性にはとても共感してくれるし、どのスタッフの強みや弱みも知っている」という評価もある。「男性に対しては、女性に対してよりも厳しい」との評価も。

・クリントン家には「彼ら自身も何が欲しいのか分かっていない」という評判もある。あるとき、ヒラリーがある鶏肉料理が頻繁に出てくるので出さないで欲しいというのでメニューから外したら、数カ月後に、「どうして私たちの大好きなあの鶏肉料理を出さないの?」と言われたりした。

・クリントン家はいつ食事をするのかも予測できなかった。就任当初、クリントン家はディナーの席について「今から食事を出して」と頼んで厨房を困惑させた。ブッシュ家は事前に「12時半から2人分の昼食をお願い」などと連絡を入れていた。

・モニカ・ルインスキーのスキャンダルが発覚したのは1998年1月だが、2人の関係が継続していた1995年11月~1997年3月の時点からホワイトハウスのスタッフは気づいていた。

・スキャンダル発覚後の1998年の3~4カ月間、ヒラリーの怒りを買ったクリントン大統領は個人の書斎のソファーで寝ていた。ホワイトハウスの女性スタッフのほとんどは「当然の報いだ」と思っていた。

・UsherのSkip Allenはクリントン家のことを”the most paranoid people I’d ever seen in my life”と評している。

・レーガン大統領はスタッフに対してとてもフレンドリーだったので、スタッフたちは大統領との長話につかまってしまうことがしばしばあった。なのでスタッフたちは忙しいときは、大統領に会わないようなルートで移動することを覚えた。

・オバマ大統領はプライベートを大切にするので、レジデンスのエリアにはValerie Jarrettら数人の側近しか立ち入らせない。

・ホワイトハウスのスタッフはかつては奴隷的な身分の者でしめられていた。ミシェル・オバマの家系は奴隷の血筋を引いていて、母方の祖父はシカゴのハンディーマンで、叔母の1人はメイドをしていた。オバマ家は、ホワイトハウスでスタッフにかしづかれるようにして暮らすのが心地よくないのかもしれない。

・カーター大統領夫妻はジョージア州知事時代、殺人罪による終身刑判決を受けたMary Princeという女性の無罪を信じて恩赦を与え、知事公邸のナニーとして雇った。プリンスはカーターの大統領就任後もナニーとしてホワイトハウスで働き、シンデレラストーリーとして話題になった。

・1961年当時、ホワイトハウスで働いていた黒人スタッフの給料は白人スタッフよりも大幅に低かった。

・1967年当時、ホワイトハウスのドアマンは名字だけで呼び捨てにされていた。

・アイゼンハワー大統領はホワイトハウスを軍隊のように規律正しく運営しようとした。

・公民権運動のころ、黒人のスタッフのなかには白人と同等の権利を要求するものもいたが、職を失うことを恐れて不満を口にしない者もいた。古い世代の黒人は、白人に対して”mouthy”にならないように教え込まれて育っていた。

・レディ・バード・ジョンソンは黒人の女性家政婦と一緒にホテルに泊まろうとして断られたとき、怒りをあらわにしてホテルを出た。レディ・バードは公民権法の成立に熱心で、ジョンソン大統領自身も自ら主導した公民権法で自らの友人の人生に影響を与えたことを誇りとしていた。

・ただ、ジョンソンは一部の黒人の指導者がより大胆な改革を求めていたことについては、差別用語を使って怒りをあらわにした。議会の同意を得るには現実的な策をとる必要があったが、それでも不満を示す黒人指導者に納得がいかなかったようだ。

・ケネディはホワイトハウスで働いていた女性たちとも愛人関係にあった。ジャクリーンが不在のとき、ケネディはやりたい放題で、あるスタッフは裸の女性がキッチンから出てくるところを見たこともある。

・ジョンソンはパーティー会場でかわいい女性をみつけると部屋の隅に連れて行ってキスしようとせまった。顔にキスマークをつけていることもよくあった。

・ケネディは世間知らずで、缶切りの使い方すら知らなかった。

・レーガン大統領はホワイトハウスのスタッフに裸をみせても気にしないほど親しく接していたが、息子のロン・レーガンは「両親のスタッフに対する態度は、スタッフを同等の人間として扱っていなかったといえるかもしれない」としている。H.W.ブッシュとバーバラ・ブッシュのスタッフへの態度は、スタッフに対する尊敬をともなったものだった。

・カーター大統領は子供をDCの公立学校に通わせた。

・ヒラリーは娘のチェルシーに対しては非常に心優しい。


過去の回想録などで周知の事実というような内容もあるのでしょうけど、なかなか勉強になりました。

2015年8月26日水曜日

The Global War on Morris

"The Global War on Morris"を読んだ。スティーブ・イスラエル下院議員が書いた小説です。米国の政治家は選挙前に自分をアピールするために出版する自伝的な本を出したりして、私もそうした本を面白がって読んできたわけですが、ワシントンポストの今年5月の記事で「イスラエル議員は政治風刺小説を書くという同僚たちとは違った道をとった」というのをみかけて、読んでみました。2014年末に出版された本です。

面白いかどうかと問われれば面白いですけど、別にそんなに滅茶苦茶面白いというわけでもないです。

ストーリーは2004年の米国が舞台。とにかく周囲ともめごとを起こすのが嫌いな、控えめで大人しいモリス・フェルドスタインという医薬品のセールスマンが、ひょんなことからテロリストとして誤認逮捕されてグアンタナモに収容されるのですが、2009年にオバマ政権が誕生した後で疑いが解かれて釈放されるというもの。こう書くとシリアスな話のようにも思えますが、基本的にはコミカルなタッチで、つまらないジョークを交えながらストーリは進展します。しかもモリスが逮捕されるのは物語が始まってから9割ほど過ぎたところで、ストーリーのほとんどは、いかに対テロ戦争にたずさわる政治家や官僚組織がくだらないもので、米国内に潜むテロリスト集団もつまんない平凡な組織であるかという描写に費やされています。

もうちょっと具体的に書くと、テロ対策の強化を主張するチェイニー副大統領は「2004年の大統領選でブッシュ大統領を再選させるため、大したことのないテロの脅威を過剰に煽って国民の危機感を高めようとしているだけの人物」として描かれます。NSAやらCIAやらの対テロ戦の前線にたつ工作員たちは「巨大な連邦政府のなかのあらゆる官庁のなかに作られた数多の対テロ組織のなかで、なんとかして手柄を挙げようと些細な出来事に目を光らせるつまんない官僚たち」ですし、NSAが情報分析のために開発した巨大コンピューターシステム"NICK"は「的外れな情報と的外れな情報を結びつけて、的外れな警告を発するヘボコンピューター」といった具合です。さらに、米国内に潜むテロリスト集団は「米国内に潜り込んだはいいものの、3年以上も組織からテロ実行の指令は降りず、そのうちアメリカの生活になじんで愛着までもってしまった純粋な人々」となります。そういう人たちの行動がなんとなくからみあった結果、極めて平凡なモリスという男が誤認逮捕されて、グアンタナモに送られてしまう。で、ブッシュ政権がオバマ政権に変わった途端、政府は「やっぱり誤認逮捕だったわ」と認めて釈放される。そんな雰囲気の話です。テロを防止する方も、テロを起こす方も、誰もシリアスになっているわけじゃないのに、ひどい結果が起こってしまうわけです。

終わりの方にこんな文章が出てきます。

"Sure there were a few times when the Feds may have inadvertently spied on the harmless phone conversations of innocent Americans. Few, as in thousands. Or hundreds of thousands. Maybe millions. No one knew. The whole matter was classified. But that was a small price to pay for freedom, wasn't it?"

まぁ、そんな連邦政府内のムードを皮肉っているんだと思います。

ただ、この本は現役の下院議員が書いたとはいえフィクションですからね。「へぇ、そうなんだぁ」と納得するわけにもいきません。しかもバカ売れした本でもないですから、「世の中の連邦政府に対するイメージはこんなもんなんだぁ」と思うわけにもいきません。「ちょっと変わった下院議員もいるんだな」ぐらいの感想ですかね。