いわゆる財政の崖(fiscal cliff)問題に関する協議が大詰めを迎えています。オバマ大統領はハワイでのクリスマス休暇を早めに切り上げて共和党側との協議に臨むようです。まぁ、そもそもクリスマス休暇をとっている場合かよ、っていう気はしますが、前回のエントリ以降の動きについてまとめておきます。
ちょっと前のCNNの報道によると、オバマ大統領は17日の月曜日に増税される家族の年収を40万ドル以上にしてもいいよという提案をしています。これまでは25万ドル以上としていたわけだから、増税の対象となる家族は減ることになって、共和党的には嬉しいでしょ? というわけです。
詳しい内容はWSJのこのページが、随時アップデートされるみたいなので、ここにコピペ。
Obama’s Latest Proposal
Revenue
$1.2 trillion to $1.3 trillion: New revenue raised over 10 years under Mr. Obama’s latest offer. Key features:
Raise tax rates on income above $400,000
Increase tax rate on capital gains and dividends to 20% from 15% for income over $250,000
Increase estate-tax rate to 45% from 35% (exempting first $3.5 million of assets per person, down from first $5.12 million)
Limit top value of some tax deductions
Permanently extend the alternative-minimum tax relief
Spending Cuts
$400 billion: Health-care spending cuts through changes to programs
$200 billion: Spending cuts to nonmandatory health
$200 billion: Discretionary spending cuts, including $100 billion from defense
$130 billion: Chained CPI savings
一番最後に出てくるchained CPIによる歳出削減というのもミソらしい。さきほどのCNNの記事などによると、Social Securityの受給額は物価に連動するようになっているのですが、chained-CPIを採用すれば、物価変動の幅が従来の方法よりも小さめに見積もられるようになる。chainde-CPIの場合、ある商品の物価が上がった場合、消費者はその商品ではなく、代わりのもっと安価な商品を買うようになることを考慮にいれるからだそうです。ということで、Social Securityの支給額も小さくなって、歳出削減の効果がある。これまた共和党にとっては嬉しいでしょ? というわけです。
これに対して、共和党のベイナー下院議長は18日の会見で、「オバマ大統領の提案は1.3兆ドルの税収増に対して、8500億ドルの歳出カットしか想定しておらず、バランスのとれたアプローチとはいえない」と批判。そのうえで、、「年収100万ドル以上に対する増税だったら認めてもいいよ」という提案を行います。いわゆる「プランB」とよばれるやつで、ベイナー下院議長は20日に下院で法案を投票にかけると宣言しました。
この記事によると、プランBはBudget Control Actに基づく歳出の一律削減や社会保障制度の改革には触れていない不完全なものなようですが、副大統領候補だったライアン下院議員や影響力のある反増税活動家のGrover Norquist氏らの支持を獲得。共和党的にはこのプランBを下院で通過させてしまえば、「次は歳出カットでオバマ大統領と民主党が妥協する番ですよ」と迫れるとの皮算用もあったようです。あと、歳出一律カットの問題については、「国防費のカットは一律じゃないよ」という別の法律を作って対処するという作戦もとった。でも結局は共和党内から十分な支持を得られず、ベイナー下院議長はプランBを投票にかけることを断念します。共和党内には「増税は絶対に嫌」という議員が多いうえに、早くからオバマ大統領や民主党がプランBへの反対を表明していたため、「上院を通るわけがない」という判断があったようです。ちなみに、国防費のカットは一律じゃないよ法案は投票にかけられて、215-219で可決されています。(参照)
このプランBの失敗を受け、オバマ大統領は21日の会見で、「あと残り10日しかない。98%の米国民に対する減税の継続に関しては誰も反対していないんだから、それをやらない理由はない」と強調してハワイへ出発。そのオバマ大統領が27日、ワシントンに帰ってきたというわけです。
CNNの記事によると、28日午後3時から、オバマ大統領、バイデン副大統領、ベイナー下院議長、ペロシHouse Minority Leader、リードSenato Majority Leader、マッコーネルSenato Minority Leaderによる協議が行われるそうです。
なんか共和党内にいる「増税絶対反対派」を納得させるために、一旦、財政の崖から落ちて税率を現状よりも上げたうえで、そこから税率をちょっと引き下げて「減税を実現したんだ」というロジックを展開するなんていう話もあるみたいです。めんどくさい話ですね。
写真はハワイから戻ってきたオバマ大統領。
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