以前、このエントリーの最後で、「低所得者が高所所得者になったり、低所得者の子供が高所得者になる割合が少なくなっているんだっけ?」みたいなことを書いて、また調べときますとしていたんですが、Foreign Affairsに丁度いいエッセイが出てました。
It's Hard to Make It in America (How the United States Stopped Being the Land of Opportunity)というタイトルで、Lane Kenworthyというアリゾナ大学の教授が書いたものです。ちなみにRobert DenhardtとJanet Denhardtのコンビはアリゾナ州立大学です。どうでもいいですが。
これによると、この50年で女性は男性よりも大学を卒業するようになり、収入面でも男性に追いついているし、白人と黒人の差は徐々にではあるが縮まっている。でも、生まれた家庭環境による差は広がりつつあるということのようです。
つまり、米国内の家族を所得の多い方から順番に並べて5つのグループに分けたとして、1960~80年代に一番下の所得グループの家庭に生まれた子供は、大人になったときに真ん中以上の3つのグループにいる確率は30%でしかない。完全に機会が均等であれば、確率は60%であるはずだから、一番下の所得グループに生まれた子供は人生における機会が少ないということになる。逆に一番上の所得グループに生まれた子供は、80%の確率で真ん中以上のグループにいることができる。また、こうした機会の格差は1970年代までは縮まっていたが、最近は広がっている。さらに米国での機会の格差はオーストラリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、ドイツ、ノルウェー、スウェーデン、イギリスよりも大きい。フランスやイタリアとは同程度。
there is general consensus among social scientists on a few basic points. First, an American born into a family in the bottom fifth of incomes between the mid-1960s and the mid-1980s has roughly a 30 percent chance of reaching the middle fifth or higher in adulthood, whereas an American born into the top fifth has an 80 percent chance of ending up in the middle fifth or higher. (In a society with perfectly equal opportunity, every person would have the same chance -- 20 percent -- of landing on each of the five rungs of the income ladder and a 60 percent chance of landing on the middle rung or a higher one.) This discrepancy means that there is considerable inequality of opportunity among Americans from different family backgrounds.
Second, inequality of opportunity has increased in recent decades. The data do not permit airtight conclusions. Still, available compilations of test scores, years of schooling completed, occupations, and incomes of parents and their children strongly suggest that the opportunity gap, which was narrowing until the 1970s, is now widening.
Third, in a sharp reversal of historical trends, there is now less equality of opportunity in the United States than in most other wealthy democratic nations. Data exist for ten of the United States' peer countries (rich long-standing democracies). The United States has less relative intergenerational mobility than eight of them; Australia, Canada, Denmark, Finland, Germany, Norway, Sweden, and the United Kingdom all do better. The United States is on par with France and Italy.
その理由としては、高所得グループの子供は両親ともにそろっていて、親が勉強の面倒をみてくれたり、学校以外での活動に時間をとって充実した生活を送れるけれど、低所得グループの子供は両親がそろっていないことも多くて勉強に専念できないことや、高所得者層が住む地域の学校は総じて低所得者層が住む地域の学校よりもレベルが高いこと、低所得グループの子供は大学の学費が払えないこと、製造業の海外流出で限定的なスキルでも安定的に収入を得られるチャンスが減ったこと、低所得グループの子供は低所得グループの子供と結婚する傾向が高く、高所得グループの子供は高所得グループの子供と結婚する傾向が高いので、格差が世代間で引き継がれていくこと、などが挙げられています。
解決策として提示されているのは、
・0~4歳の5年間における親の収入が3000ドル増えれば、子供が大人になったときの所得は20%増えるという調査結果があるので、米国でも子供手当てを導入するべきだ。ちなみにカナダ子供2人の家庭で年間3000ドル、低所得だったら6000ドル。
・あまり若いうちにできちゃった結婚しても収入が不安定だから、子供たちにはまず勉強して、安定的な収入のある仕事について、その後で結婚して子供を作るように教育する。
・育児休暇や公的な幼児教育の充実。こうした分野での州政府の活動を連邦政府として支援する。
・低所得グループの子供でも大学に入りやすくする。一番下の所得グループに生まれた子供でも、4年制大学を卒業した場合は、53%の確率で真ん中以上の所得グループに入ることができる。(機会均等な社会での確率である60%に近い) 北欧では公立の4年制大学の授業料はタダだ。
・子供のいる家庭だけでなく、子供がいない人にも税控除を拡大する。そうすれば自分が教育を受ける余裕ができる。
・すべての世帯に対して増税して、得られた税収を教育にあてる。収入の格差は解消しないけど、機会の格差は解消できる。高所得者にだけ増税して収入の格差を縮めても、低所得者の機会が増えるわけではない。
・affirmative actionの対象を人種や性別から家庭環境にシフトさせる。例えば、大学が入学者を選ぶ際に、厳しい家庭環境で育ってきた高校生を優先する。
といった感じ。
で、エッセイの最後の部分は、
Fortunately, the United States' experience and that of other affluent nations suggest that the country is not helpless in the face of economic and social changes. There is no silver bullet; a genuine solution is likely to include an array of shifts in policy and society. Even so, a fix is not beyond the United States' reach.
となってます。
うんうん。そうだよね。
ところで、income mobilityについて書かれたこんな本を見つけました。
surprising conclusionsって何なんでしょう。気になる。
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