2011年12月16日金曜日

The Great Disruption


COP17前から読み進めていた、"The Great Disruption"を読み終わりました。著者はPaul Gildingという、環境保護団体グリーンピースのExecutive Directorだった人です。いわゆる「環境派」のことも知っておこうかと思って、amazon.comで売れ筋の本を選んでみました。勉強になった。

ギルディングさんはオーストラリアの牧師さんか何かの家の生まれで、若い頃から環境問題に目覚め、アクティビストとして活動を開始。若いころは環境汚染を続ける会社に対して、相当過激なこともやったみたいです。ただ、そのうち、そういった活動だけでは社会を変えられないことに気づいた。企業や経営者のモラルを批判するのは止めて、環境破壊を続けることがいかに採算のあわないことなのかと説くというアプローチに転向したそうです。環境アドバイザーとして、デュポン、フォード、BHPビリトン、アングロアメリカンなど、いかにも環境に悪影響を与えていそうな企業の経営にも関わっているらしい。

ギルディングさんは地球には経済成長を支えるためのキャパシティがあると言います。エネルギーを使いすぎると、温室効果ガスが大量に排出されて、地球温暖化が始まる。地球のキャパシティを超えるレベルで温室効果ガスが排出されると、干ばつが起こり、海面が上昇し、世界は安定的な経済成長をできなくなる。食糧危機が深刻化し、政治的、軍事的な動乱も起こるかもしれない。しかも、その時は突然やってくる。今はキャパシティの貯金を取り崩して成長を維持しているけれど、貯金がゼロになった瞬間、世界の成長は止まる。そのときは、今後5年だか10年だか、そのぐらいでやってくるだろう、というわけです。

一応、こうした主張の科学的な論拠として、いろんな人の主張やら論文やらを引用しています。引用された主張やら論文がどのぐらいまともなものなのかは分かりませんが、ギルディングさんは「科学的な根拠が明確でないことは、行動を起こさない理由にはならない。事が起こった場合の損害はあまりにも甚大だからだ」と言っています。

では、どうやったらその恐るべき事態を回避できるのか。そのためのプランが"One-Degree War"と名付けられた戦略です。

・戦略の開始時期は2018年。

・1~5年目の"Climate War"の期間に、温室効果ガス排出量を50%削減する。第二次世界大戦中に各国がとった国家総動員体制を考えれば、決して実現不可能な数字ではない。

・5~20年目の"Climate Neutrality"の期間に、温室効果ガス排出量を50%削減のレベルに維持したまま、温室効果ガスの吸収・固定のための技術開発や自然開発を進め、ネットベースで温室効果ガスが増えない世界を築く。

・20~100年目の"Climate Recovery"の期間に、ネットベースで温室効果ガスが減るようにして、地球環境を産業革命以前の通常状態に戻す。


えー。トンデモですか、中2病ですかという感じがしないでもないです。いや、むしろ、します。する。断言しちゃう。


ただ、そこをぐっと飲み込んで読み進めていくと、どうやらギルディングさんは経済成長自体に意味を見い出していないんですね。世帯あたりの収入が600万円を超えたあたりからは、いくら経済的に裕福になっても幸福の度合いは増えないという心理学上の研究があるとか、もっと働く時間を短くして、家庭やコミュニティとの関わりを重視したシンプルな生活を送ることが望ましいとか。意外に保守的な主張である気もします。まぁ、省エネですよ。方向性としては。

でもやっぱり、「そういった取り組みを戦時中の総動員体制を参考にして世界的に進めていかないと、世界は破滅のどん底に落ちてしまうのだぁ~」とか言われちゃうとちょっと引いてしまいます。

あと個人的には経済成長止めちゃうと借金返せなくなると思います。国家的に。そんなのは小さな話ですか、そうですか。

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