2018年7月21日土曜日

エレベーターホールの紳士

No.62

エレベーターに駆け込む人が許せない。

だってそうだろう。長い時間待たされて、ようやくやってきたエレベーターに乗り込んで、ついにドアが閉まると思っていたのに、誰かが駆け込んで来たことで再びドアが開くのだ。誰だって怒りたくもなる。一緒に乗っている人たちも大抵の場合は平静を保っているが、私は結構、本気で腹が立つ。思わず舌打ちしてしまったりするぐらいだ。ものすごく小さい、自分にも聞こえないぐらいの音でだが。

そんな私だから、自分では決してエレベーターには駆け込まない。ぎりぎり間に合うかなと思っても、「あ、上じゃなくて、下に行くんです」というような顔をして、立ち止まる。エレベーターの中でボタンを操作している人から、あえて視線をそらす心配りも忘れない。そして、エレベーターが完全にその階を離れたことを確認してから、おもむろにボタンを押すのだ。それこそが男の美学。ダンディズムだと思っている。

エレベーターホールで紳士的な人物を見かけたら、私だと思ってくれて構わない。


2005/9/28

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