2期目のオバマ政権の国防長官はチャック・ヘーゲルに決まりました。たれ目で一重まぶたの普通のおじさんです。ネブラスカ州出身でベトナム戦争に従軍。下院議員のスタッフをしたり、ファイヤーストーン社のロビイストをしたり、携帯電話会社を起業して成功した後、1996年に上院議員に初当選し、外交畑を歩んできた人です。
共和党ですが、ブッシュ政権をおおっぴらに批判したりもしている。イラク戦争の決議には賛成したものの、 “Actions in Iraq must come in the context of an American-led, multilateral approach to disarmament, not as the first case for a new American doctrine involving the preemptive use of force.”なんて言ったりしている。(参照) あと、イラク増派に反対したり、対イラン制裁に反対したり、アンチ・イスラエルな言動をみせたりすることでも知られている。(参照)
このページによると、 “We are each a product of our experiences, and my time in combat very much shaped my opinions about war. I’m not a pacifist; I believe in using force, but only after following a very careful decision-making process.”なんていう言葉もあって、なんかカッコイイです。ただ、共和党からのウケはよくないらしい。
で、このページに、ヘーゲル自身が寄稿したForeign Affairs誌の記事というのが紹介されていたので読んでおいた。8年ほど前に書かれたものですが、参考になるんだと思います。(参照)
まず目に付くのは、軍事力だけじゃなくて、その軍事力で何を達成しようとしているのかという理念が大事なんだという主張ですね。米国が他国から信頼されるような国であることが重要だということです。
A wise foreign policy recognizes that U.S. leadership is determined as much by our commitment to principle as by our exercise of power. Foreign policy is the bridge between the United States and the world, and between the past, the present, and the future. The United States must grasp the forces of change, including the power of a restless and unpredictable new generation that is coming of age throughout the world. Trust and confidence in U.S. leadership and intentions are critical to shaping a vital global connection with this next generation.
そのためには現実を直視することが大事で、「神から与えられた使命だ」的な教条主義的な考え方では失敗しますよと。ひとりよがりになっちゃいけないということですね。
a Republican foreign policy for the twenty-first century will require more than traditional realpolitik and balance-of-power politics. The success of our policies will depend not only on the extent of our power, but also on an appreciation of its limits. History has taught us that foreign policy must not succumb to the distraction of divine mission. It must inspire our allies to share in the enterprise of making a better world.
ただ、軍事力の行使を否定するわけでもない。アメリカだもの。
Traditionally, a Republican foreign policy has been anchored by a commitment to a strong national defense. The world's problems will not be solved by the military alone, but force remains the first and last line of defense of U.S. freedom and security. When used judiciously, it is an essential instrument of U.S. power and foreign policy. Terrorists or states that attack the United States should expect a swift and violent response.
そのうえでヘーゲルは、外交で守るべき7つの原則というのを列挙していきます。
・法治国家、所有権の尊重、科学技術の開発、自由貿易、人的資本への投資といった理念を大事にして、世界経済のリーダーであり続けること。
・エネルギー安全保障の重要性を確認すること。たとえ原油の中東依存度が下がったとしても、中東の不安定化は原油価格の上昇と通じて米国経済に影響する。
・国連やNATOを重視する。国連には問題も多いけれど、昔よりはマシになっている。米国が主導権を握らねばならないときもあるが、権限やコストやリスクを分担することも必要だ。
・中東の民主化、経済改革を支援する。理念での勝負で負けるわけにはいかない。イスラエルとパレスチナの紛争も解決せねばならなし。中東の安定は米国とイランの対話や、イランのテロ支援や核開発といった問題へのアプローチとなる。リビアのカダフィ大佐が核開発を放棄したことは良い例だ。
・NAFTAなど西半球諸国との経済連携の重視。
・世界中の貧困や病気と戦っていく。途上国の安定につながる。
・public diplomacyの強化。
さらに重要な連係相手として、EU、ロシア、インド、中国を挙げています。ロシアについてはエネルギー調達での連係を強化することが必要だとし、インドは人口を背景とした潜在力があるが、パキスタンとのカシミール問題の解決を進めねばならないと指摘。あと中国との関係は、北朝鮮の核開発問題への影響力、ミサイル技術やdual-use technology(軍事、民生の両方に使える技術)の拡散、中台問題の解決において、特に重要だとしています。
外交政策に詳しいわけじゃないですが、まぁ、普通の穏健な内容って感じなんでしょうか。ただ、どうしてもイランが核開発を止めないっていうことになって、イスラエルが怒り始めたりしたとき、どんな対応をとろうとするのか分りませんけど。
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