2013年1月14日月曜日

マリがややこしい

西アフリカのマリ共和国のイスラム武装勢力に対してフランス軍が空爆を行っています。よく分らないので調べておいた。

マリでは2012年3月にクーデターがあったのですが、このときの流れは外務省のサイトにある各トピックスの中身をのぞいていくと、それまでの経緯がまとめられたりしています。それによると、

3月21日にマリの国軍の一部が武器の調達を要求して騒乱を起こします。マリ国軍は北部におけるトゥアレグ族の独立運動グループと戦ってきたのですが、「武器が足りないぞ」との不満があったようです。で、翌22日には民主主義再建・国家復興のための国家委員会(CNRDRE)が国家の指揮権を掌握して憲法の停止を宣言します。

これを受けた4月2日、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)はマリに対する経済制裁を発動。6日にはECOWASとCNRDREの交渉の結果、憲法秩序回復に向けた枠組みが合意されます。この合意に基づいてトゥーレ大統領は辞任し、12日にはトラオレ国民議会議長が暫定大統領に就任します。

これでクーデター騒動は落ち着くわけなんですが、憲法秩序回復に向けた合意がなされた6日、マリ国軍の混乱に乗じるかたちで、トゥアレグ族の武装勢力アザワド地方開放国民運動(MNLA)が北部の主要都市に信仰して、北部の独立を宣言をしちゃう。

で、ここから先がごちゃごちゃするんですが、このあと北部ではトゥアレグ族によるMNLAとイスラム武装勢力「アンサール・ディーン」(Ansar Dine)の対立が激しくなって、6月下旬にはアンサール・ディーン側が「MNLAをやっつけた。北部を制圧しているのは我々だ」と宣言するに至ります。(参照、ロイター) アンサール・ディーンはイスラム法を全土に広めようとするイスラム武装勢力で、「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」(AQIM。AQMIとも)とも関係が深い。このAQIMはマリ北部を拠点にしてアルジェリア政府の打倒を目指しているアルカイダ系の組織です。ちなみにマリ北部にはMUJWA(Movement for Unity and Jihad in West Africa)という組織もあって、これは活動範囲を西アフリカ全域に広げたAQIMの分派だそうです。各組織の概要はウィキペディアを参照。(アンサール・ディーン AQIM MUJWA

国際社会の対応としては3月のクーデター後にECOWASがマリに対する経済制裁を発動したほか、米国もそれまで行ってきたマリへの支援をストップしています。それまでのマリと米国の関係はエクセレントで民主主義の強化と経済成長を通じた貧困撲滅という共通のゴールを持っていたのに、クーデターとは何事だというわけです。米国はトラオレ暫定政権に対して大統領選挙の実施を求め、北部の反政府勢力に対してもテロリスト集団との関係を断ち切って、法に基づいた政治的な解決の道をとるよう求めています。(参照) 

国連も7月に安保理決議2056を全会一致で採択し、クーデターを批判するとともに、さらにMNLAによる独立宣言も無効であるとし、AQIMによるテロ活動にも懸念を示しています。10月の安保理決議2071では、安保理決議に基づいた軍の派遣を求めるマリ暫定政権からの要望に留意するとしたうえで、マリ情勢は国際社会の平和と安全への脅威だとの認識を示して、加盟国に対してマリ国軍に対するサポートを要請(calls upon)。さらに12月の安保理決議2085では、マリの安定確保にはマリ国軍の再配備が重要であるとして、マリ全土での安定確保とテロリストの脅威を取り除くため、加盟国に対してマリ国軍へのサポートを促している(urges)。

で、フランスはこの国連決議に基づいて2013年1月10日からマリへの空爆をやっているそうです。ただ、これであっさりと安定を回復できればいいですが、イスラム武装勢力を敵に回すっていうのは思い切った決断だという気もします。砂漠での戦闘は泥沼化するわ、フランス国内でもテロリストが暗躍するわっていう展開にもなりかねない。どうなるんでしょう。


画像はウィキペディアにのっていた2012年4月時点のマリの地図。


追記(1月17日)
12月の安保理決議2085では、アフリカ諸国主導の"International Support Mission in Mali"を派遣することを承認。その目的として、マリ政府が北部の支配権を回復することをサポートすることなどを挙げて、軍事介入にお墨付きを与えています。肝心なところが抜けていました。

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