2011年12月21日水曜日

The Life of Lazarillo de Tormes and of His Fortunes and Adversities


"The Life of Lazarillo de Tormes and of His Fortunes and Adversities"を読み終わりました。以前、スペイン人のAさんが来日した際、「スペインにはピカレスクという言葉があって、面白い本があるから教えてやる」と言われたのですが、その後、帰国したAさんから送られてきた本です。メッセージには「日本文化からすれば奇妙に思えるかもしれないけれど、この本はスペイン(あとラテンアメリカ)の文化を理解するのに役立つよ」と書かれていた。ためになったです。

この本は1554年にスペインで発行されたもので、それの英語訳です。原本はところどころページが抜け落ちているそうで、この英語訳でも抜け落ちたページは白紙になっています。

ラサリーリョという貧乏な少年が、いろんなご主人様に仕えて生活の糧を得ていくというのがあらすじ。で、どのあたりがスペイン文化かというと、ラサリーリョはとても「ずる賢い」。例えば、盲目のご主人が持っているワインを勝手に飲んだり、別のご主人が箱の中にしまっているパンを食い散らかして、ネズミの仕業にしたりといった具合。あと、免罪符売りのご主人様が相棒とグルになった大芝居の結果、免罪符をバンバン売ってしまう様子を見て、大いに感心したりする。ラサリーリョ少年は悪意があって嘘をつくというわけではなくて、生きていくためには嘘も必要といった感じなので、それほど不道徳な感じの話ではないですが、カトリック教会が発売禁止処分にしたこともあったようです。

で、面白いのは最後のエピソード。少しお金持ちになったラサリーリョはあるご主人様の紹介で女性と結婚するのですが、その女性は実はそのご主人様との間に子供がいた。つまり人を騙してお金持ちになったラサリーリョが最後は騙されてしまうわけです。でも、ラサリーリョは怒ったりしない。「今、僕は彼女のことを愛しているんだから、いいじゃないか」というわけです。この後もラサリーリョと奥さんとご主人様の3人は良好な関係維持したということで話が終わります。

これがAさんの言うスペイン文化のエッセンスなんですかね。一言でいうと「嘘もあり」。生きていくためには嘘をつかなければならないときもある。だから嘘をつかれたときでも相手を許してやる。そういえば、ラサリーリョに騙された人たちはラサリーリョを追い出したりはするけれど、決して「非道徳的だ」とか「罰を与えろ」とかは言ったりしていないんです。ラサリーリョは人に決定的な危害を与えるような嘘はついていませんしね。

そうなると、Aさんが話していた「駅員のいないところでは電車賃を払わない」「太陽光発電の買い取り制度で発電量を水増しする」なんていうのも、許容範囲の嘘なのかもしれません。別に誰かを傷つけようってわけじゃないですから。日本にもずる賢い主人公が成功する話ってのはありますけど、やっぱり基本線は「誰も気づいていなくても、お天道様がみていらっしゃる」っていうところです。

まぁ、そう考えるとラテン系の人たちが時間とか約束にルーズなのも許せるかな。国家的なデフォルトってのは問題ですけど。

2011年12月19日月曜日

どうでもいい話


あと、香港からヨハネスブルグに向かう飛行機で見た、"The Hungover"という映画が面白かったです。邦題は「ハングオーバー消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」。

どうでもいい話なんですが、これに出てくる歯科医・ステュ役の人が誰かに似ていると思ったら、シラキュースでの同居人だったCさんでした。風貌は真面目なんだけど、行動がどこか変わっている感じとか。

で、よくよく考えてみたら、それは多分、私とも共通する要素なんだと思います。酔っ払ったときの行動なんかは特に。なるほどなぁ。そうか。うんうん。俺ってこんな感じなのか。

写真は劇中で自らの歯を抜こうとする酔っ払ったステュ。

2011年12月16日金曜日

The Great Disruption


COP17前から読み進めていた、"The Great Disruption"を読み終わりました。著者はPaul Gildingという、環境保護団体グリーンピースのExecutive Directorだった人です。いわゆる「環境派」のことも知っておこうかと思って、amazon.comで売れ筋の本を選んでみました。勉強になった。

ギルディングさんはオーストラリアの牧師さんか何かの家の生まれで、若い頃から環境問題に目覚め、アクティビストとして活動を開始。若いころは環境汚染を続ける会社に対して、相当過激なこともやったみたいです。ただ、そのうち、そういった活動だけでは社会を変えられないことに気づいた。企業や経営者のモラルを批判するのは止めて、環境破壊を続けることがいかに採算のあわないことなのかと説くというアプローチに転向したそうです。環境アドバイザーとして、デュポン、フォード、BHPビリトン、アングロアメリカンなど、いかにも環境に悪影響を与えていそうな企業の経営にも関わっているらしい。

ギルディングさんは地球には経済成長を支えるためのキャパシティがあると言います。エネルギーを使いすぎると、温室効果ガスが大量に排出されて、地球温暖化が始まる。地球のキャパシティを超えるレベルで温室効果ガスが排出されると、干ばつが起こり、海面が上昇し、世界は安定的な経済成長をできなくなる。食糧危機が深刻化し、政治的、軍事的な動乱も起こるかもしれない。しかも、その時は突然やってくる。今はキャパシティの貯金を取り崩して成長を維持しているけれど、貯金がゼロになった瞬間、世界の成長は止まる。そのときは、今後5年だか10年だか、そのぐらいでやってくるだろう、というわけです。

一応、こうした主張の科学的な論拠として、いろんな人の主張やら論文やらを引用しています。引用された主張やら論文がどのぐらいまともなものなのかは分かりませんが、ギルディングさんは「科学的な根拠が明確でないことは、行動を起こさない理由にはならない。事が起こった場合の損害はあまりにも甚大だからだ」と言っています。

では、どうやったらその恐るべき事態を回避できるのか。そのためのプランが"One-Degree War"と名付けられた戦略です。

・戦略の開始時期は2018年。

・1~5年目の"Climate War"の期間に、温室効果ガス排出量を50%削減する。第二次世界大戦中に各国がとった国家総動員体制を考えれば、決して実現不可能な数字ではない。

・5~20年目の"Climate Neutrality"の期間に、温室効果ガス排出量を50%削減のレベルに維持したまま、温室効果ガスの吸収・固定のための技術開発や自然開発を進め、ネットベースで温室効果ガスが増えない世界を築く。

・20~100年目の"Climate Recovery"の期間に、ネットベースで温室効果ガスが減るようにして、地球環境を産業革命以前の通常状態に戻す。


えー。トンデモですか、中2病ですかという感じがしないでもないです。いや、むしろ、します。する。断言しちゃう。


ただ、そこをぐっと飲み込んで読み進めていくと、どうやらギルディングさんは経済成長自体に意味を見い出していないんですね。世帯あたりの収入が600万円を超えたあたりからは、いくら経済的に裕福になっても幸福の度合いは増えないという心理学上の研究があるとか、もっと働く時間を短くして、家庭やコミュニティとの関わりを重視したシンプルな生活を送ることが望ましいとか。意外に保守的な主張である気もします。まぁ、省エネですよ。方向性としては。

でもやっぱり、「そういった取り組みを戦時中の総動員体制を参考にして世界的に進めていかないと、世界は破滅のどん底に落ちてしまうのだぁ~」とか言われちゃうとちょっと引いてしまいます。

あと個人的には経済成長止めちゃうと借金返せなくなると思います。国家的に。そんなのは小さな話ですか、そうですか。

終わらない会議


それで会議がどうなったかって話です。

先ほども書いたように、EUは全ての国が温室効果ガス排出量の削減義務を負うべきだと言っていて、米国は義務なんて嫌だと言っていて、中国とかインドは先進国だけが削減義務を負えばいいじゃんと言っている。みんな意見がバラバラ。で、結局のところ、ここは曖昧な表現に落ち着いた。このルールについては2015年までに決めましょうということになった。対象は全ての国(all Parties)だけれども、その形式は"a protocol, another legal instrument or an agreed outcome with legal force"となっていて、「削減義務を課す」という厳しい内容になるかもしれないし、そうではない緩やかな合意になるかもしれない。

EUとしては米中印を説得しきれなかったという感じではないでしょうか。せっかく金曜日に終わるはずの会議を日曜日朝まで延長したのにねぇ。

個人的には、中国やインドが「我々はまだ発展途上の国なんだ。国内には貧しい人がいっぱいいるし、国を豊かにするためにやらなきゃならないことがたくさんある。それがどうして、先進国と同じような削減義務を負わねばならないのか」という主張には、納得してしまいます。まぁ、そうだよね。あと、アフリカとか島国の人たちが「この気候変動をなんとかしてくれ」という気持ちにも納得がいく。ソマリアとかのアフリカ東部では60年ぶりの大干ばつで数百万人単位の難民が出ているそうです。最近知ったんですけどね。

「大干ばつの原因は本当に温室効果ガスなの?」と疑う気持ちもありますが、一応、国連交渉の場では気候変動問題を解決するため温室効果ガス削減に向けて努力するということにはなっているので、どうもそれは言わない約束らしい。なにしろ、私が信じようと信じまいと、アフリカの人たちは信じているでしょうからね。それを否定するだけの材料もないわけです。COP17で感じたのですが、新興国の人たちは「産業化で温室効果ガスを排出してきた先進国は地球温暖化の犯人じゃないか。ちゃんと責任とれよな」と言わんとしているわけです。

ただ、先進国の一員である日本としては「そんなこと言われたって、地球温暖化問題解決しようと思ったら、中国とか米国とかが取り組まないと意味ないじゃん。日本とEUだけで削減したって意味ないよ」とも言いたくなります。なにせ、米・中・印・南ア・ブラジルの5カ国で世界の温室効果ガス排出量の50%を占める。しかもこれから経済成長をしていく中・印・南ア・ブラジルは今後も排出量が増えていく。これまでの地球温暖化の犯人が先進国であったとしても、これからの温暖化を防ぐには新興国が何にも取り組まないわけにもいかないでしょう。

やっぱカネかな。先進国がカネを新興国に渡して、そこで何とか削減努力するしかないかな。先進国だって借金まみれでカネはないけど、新興国に比べればカネはあるもんな。あとは省エネだね。無駄なエネルギー使いすぎだ。日本の二酸化炭素排出量は産業部門では90年比約13%減っているのに、民生部門では33%増えてる。間接ベースで。


写真は会期延長があまりに長期間に及んだため、死にそうになっている日本代表団。

COP17な人々


で、肝心の会議の方なんですが、いろんなキャラクターがいて楽しいです。

まずはEUのヘデゴー欧州委員ですね。前々回もちょっと書きましたが、デンマークのエネルギー担当大臣として再生可能エネルギーの普及を進めた実績がある。デンマークは総発電量に占める風力発電の割合が20%、バイオマス発電の割合が10%という国です。「再生可能エネルギーが実用可能なことは証明済みじゃん」ってことなんでしょう。すべての国に対して温室効果ガス排出量削減を法的に義務づけるべきだというスタンスがはっきりしている。新聞記者とかテレビキャスターもやっていたそうで、プレゼン上手なんだと思います。

これに対抗するのが米国のスターン気候変動問題担当特使。排出量削減の義務化なんてもってのほかで、なんだかんだと理屈をつけては義務化に反対する。だからと言って、EUに真正面から反対するわけでもなく、「EUの言うように議論を進めることには賛成するよ。ただ、その結果が削減義務につながるかどうかは分からないけどね」みたいなね。発言中でも決して熱くならず、さらさらっとぼそぼそっとしゃべって、すーっと帰ってしまう。全体会合でのスピーチの直前、会場にいたNGOの女性が突然、「米国は地球温暖化問題にもっと積極的に取り組むべきだ」と批判する声を上げたのですが、スターンさんはスピーチの冒頭で「熱狂的な聴衆においでいただいてありがとうございます」なんてかわしてました。まぁ、NGOからすれば「嫌なアメリカ人」でしょう。

で、EUの言う削減義務は先進国にのみ適用されるべきであって、新興国は別だというのが中国の解振華・中国国家発展改革委員会副主任。この人は中国語で話すので、いかにも異次元の世界の人っぽい。見た目も恰幅がよくて、「尊大な中国人」のイメージです。ちょっと説得できそうにない雰囲気をかもしだしています。

この中国と共同歩調を取るのがインド。ナタラジャン環境相という強烈なおばさんが代表者で、ものすごく熱く激しくまくしたてます。インドはまだまだ貧しい国で経済成長をする権利があるのだと。終盤の非公式な全体会合では、議長のマシャバネ南アフリカ外相に対して「マダム、どうして私たちの主張をオプションとして加えることが間違っているといえるのですか」と何度も何度もすごい迫力で呼びかけてました。この人も説得できそうにないです。

この他、ベネズエラのサエルノ特使。きれいな方だと思いますが、先進国に対する削減義務を強烈に訴えるエキセントリックなイメージの人です。あまりに発言が多くて、うざいところがあります。で、発言を求めて手を上げても議長に指名されなかったりする(と自分で思っている)のですが、そうなるとイスの上に立ち上がってベネズエラの国名プレートをかかげ、「あなた私を無視したわね」と突っかかる。これとは対照的な穏健派がグレナダのフッド外相。インドのナタラジャン環境相の熱いスピーチの後、「私はインドのようには感情的にはならない。冷静に、少しでも前進するように話し合うべきだ」と始めておきながら、ときおり感極まったような表情を見せたりするスピーチ上手です。あと、ぼっちゃん顔のフィリピンとか、「何がなんだか分からんぞ」とボヤくロシアとかも見逃せない存在です。

異彩を放っていたのが、ギリシャのパパコンスタンチノウ環境相。全体会合のスピーチの冒頭で、「私はパパコンスタンチノウです。パパンドレウ(前首相)ではありません」とジョークをかまし、気候変動問題をギリシャの債務危機になぞらえて「一刻も早い対応が必要だ」と訴えてた。説得力はあるんだけど、お前が言うな的な印象はぬぐえません。

こういう人たちと比べると、日本の細野豪志環境相の存在感はゼロです。本人による記者会見は一度も開いていません。まぁ、こんなに目立つ必要はないわけですが。


写真は雄々しくイスの上に起立されているベネズエラのサエルノ特使。

2011年12月15日木曜日

B&B


ただ、宿がとれませんでした。

COP17が開かれたのはダーバンというリゾート地です。2010年のワールドカップのときは日本代表も試合をしたそうで、それなりに宿泊施設はあるんです。ただ、190以上の国が参加する国際会議に政府の代表団と経済界の関係者と環境系NGOとマスコミが押し寄せるということで、宿はあっという間に一杯になってしまったらしい。実は私は1カ月ぐらい前になって、某旅行代理店に「泊るとこありますかね」と尋ねてみたのですが、全く候補が見つかりませんでした。キャンセルも出ません。日本の経済界の偉い人たちが集まっている団体の人によると、彼らは2カ月ぐらい前に動き出して、会場近くのホテルを押さえたそうです。

で、結局、ネットで見つけたB&Bに泊ることに。ホテルは満室でも、B&Bなら空きがあるというわけです。ぎりぎり1軒だけ見つかったんですけどね。会場から5キロほど離れていて、シャトルバスのコースからも1キロほど離れているので、夜中に1人で帰るとなると、若干安全性に不安はありますが、まぁ泊る場所がないよりはマシです。最初のうちは、B&Bのオーナーに車で送ってもらって、最終的にはシャトルバスで往復することにしました。ちなみにこのオーナーはインド系でベンツに乗ってます。

ただ、初めて夜中のダーバン郊外を歩いたときは、結構怖かった。シャトルバスから降りた場所とB&Bとの位置関係をおぼろげにした覚えていなかったもので、迷子になるんじゃないかと。なんとかB&Bの部屋の窓から見たサッカー用のグラウンドを発見して事なきを得たのですが、あれはやっちゃいけないパターンでした。シャトルバスを使うときは、きちんと昼間のうちに下調べしないとダメです。っていうか、もっと早くに宿を抑えて、シャトルバスを使うにせよ、ルート沿いにあるホテルやB&Bを抑えるべし。

食事はB&Bでの朝食と会場内にある食事スポットで1日2食。味はカレーとかシチュー的なものが多かったですが、肉はかなり固かった。あと、ライスも固い。アフリカ人はもうちょっと真面目にご飯を炊くべき。インターネットは日本から南アで使い放題の通信端末を借りて行きました。これは超便利。絶対に必要。


写真はネットで拾ったダーバンの画像。美しいところですが、私はB&BとCOP17会場しか行っていません。到着初日から帰国直前まで全部仕事でした。

2011年12月13日火曜日

国際会議


南アフリカに行っていました。

COP17という気候変動問題について話し合う国連の会議をのぞいてくるのが目的です。京都議定書を延長するのかどうかとか、そいういうことを話しているやつですね。私は「僕たちの地球を守ろう!」的なエコっぽいのは敬遠してきたのですが、まぁなんやかやで行くことになったわけです。

ほとんどの会議は非公開です。でも主だった国は毎日のように会見をやります。EUとか米国ですね。あと、新興国の人たちやNGOの人たちも会見をやります。COP17の会場であるInternational Convention Centerというどこにでもあるような名前の施設のなかに会見室があって、そこに座っていれば、勝手にいろんな人が来て話をしてくれるというわけです。あと、こうした会見はインターネットでも中継されているので、別に日本にいたって話が聞ける。便利。

で、会見は英語でやるわけですが、だいたい理解できます。EUのヘデゴー欧州委員なんかは中学の英語の先生かというぐらい、はっきりとゆっくりと話すので実にありがたい。中国の解振華・中国国家発展改革委員会副主任という人は中国語で話しますが、同時通訳がついています。同時通訳も聞きやすい英語なんで分かりやすいです。ただ、会見場にいて、同時通訳のヘッドセットを持っていないと一言も分からないという問題があります。最初、「やっぱり英語で話すんだろうな」なんて思ってぼーっとしていたら、急に中国語で話し出したので、みんなが急いでヘッドセットを奪い合うという場面がありました。

ただしトッド・スターン気候変動問題担当特使はちょっと厄介です。この人はネイティブなもんですから、英語に容赦がありません。早口でぼそぼそ話します。しかも回りくどい。地球温暖化問題には積極的ではない米国ですから、いろいろと論をこねくりまわしては、批判をまぬがれようとする。だから分かりにくい。ただ逆にいえば、言いたい結論は最初から分かっているので大きな誤解をすることはないです。あらかじめスターンさんの過去の声明文なんかに目を通しておけば大丈夫。しかも、この人の会見は米国の国務省がわりとはやく文章化してホームページにアップしてくれます。

というわけで、何とかならないわけでもない。力不足も感じますが、この頃と比べると、流石に進歩している。

写真はヘデゴーさん(今回の会議での写真ではないです)。デンマークのエネルギー担当大臣として再生可能エネルギーの導入を推進したことがある人です。なるほど。バリバリですな。

2011年11月11日金曜日

The Surrendered


"The Surrendered"という本を読みました。うちのヨメさんのアメリカ人の友人がフェイスブックで「この本を読んで電車のなかで号泣しちゃった~」「実は私も~」みたいな盛り上がりをしていたというので、アメリカ人はどんな本を読んで泣くのかと思って購入。難しかった。作者は、Chang-Rae Leeという人です。

主要な登場人物は3人。朝鮮戦争で孤児になった韓国人の女の子。この女の子が入った米国人宣教師が運営する孤児院の院長さん夫人。孤児院で働く寡黙な元米兵。それぞれが戦争中の体験で心に傷を抱えています。でね、この3人がね。ややこしいんですよ。女の子が孤児院に入ったきっかけは、1人ぼっちになった女の子が偶然、元米兵(このときは現役の兵士)に会ったからなんです。で、女の子は元米兵に連れられて孤児院に行くんですね。多分。で、元米兵もこの孤児院で働き始めるんですよ。で、この元米兵は院長さん夫人と出会う。この院長さん夫人もややこしい人で、第二次世界大戦中の満州で暮らしていたことがあるんですが、このとき日本兵に恋人とか家族とかを殺されちゃっているんですね。それが原因なんだか知りませんが、元米兵と恋に落ちるんです。

あと話は1986年の米国とイタリアにも飛ぶんですよ。なんでかっていうと女の子は結局、米国にわたって元米兵と結婚するんですね。で、子供もできた。でも、すぐに離婚しちゃう。離婚しちゃったんだけど、骨董品屋をやって、まぁそこそこ成功する。でも、高校を卒業した子供は旅行に行くとか行って出ていったきり、帰ってこないんですよ。でね。この女の子、っていうかもう女性なんですが、ガンなんです。余命いくばくもない。ということで、元夫であるところの元米兵と一緒に子供を捜そうと、イタリアに行きます。

まぁ、ほかにも色々とエピソードがあるわけです。韓国人女性が離婚後に元米兵を探しだすために探偵雇うとかね。で、探偵はようやく元米兵を見つけるんだけど、元米兵は別に同居している女性がいるもんだから、イタリアなんかにゃ行かないよ、というわけです。でもね、結局2人は一緒にイタリアに行くんです。なぜかっていうと、探偵が車を運転している車が元米兵と同居している女性をひき殺しちゃって、探偵自身も車を街灯か何かにぶつけちゃって死ぬんですよ。すごい話だよね。

で。「で」ばっかりで恐縮なんですがね。こういったもろもろのエピソードが時系列をぐちゃぐちゃにして語られるんです。最初は朝鮮戦争中の朝鮮半島。次は満州。次ぎはまた朝鮮半島。米国。イタリア。満州。みたいなね。ややこしい。極めてややこしい。

それとここからが大問題なんですが、やっぱ私の単語力が追い付かない。知らない単語があっても、スピード重視で読み飛ばして大意をつかもうと心がけているんですが、これだけ知らない単語が出てくると困る。特に微妙な心理描写と、アクションシーンですね。このあたりは何がなんだか分からない。あと、朝鮮半島とか満州でのエピソードは凄惨なんで、気が滅入る。朝からこんな話読みたくない。


そういえば、中学校を卒業したとき、パールバックの「大地」という本を読んだことがあります。入学する高校で、「春休み中に読んでおけ」みたいなことになっていたからです。今回と同じように訳が分からなかった。


ということで、泣けませんでした。泣きたくはなりましたけど。

2011年10月14日金曜日

切符を買う国


スペインからAさんがいらっしゃいました。火曜日の話です。なんでも上海で友達の結婚式があったので立ち寄ったとのこと。まえさんと一緒に夜会合。Aさんは、このイベントを企画した人です。

Aさんはスペイン人の友人2人と一緒だったのですが、なんとか楽しくコミュニケーション。同じ学校で学んだ者同士、マニアックな共通の関心事が見つかるもんです。スペインの再生可能エネルギー事情で、太陽光発電の買い取り価格を高く設定しすぎた結果、太陽光バブルが起こって電力会社の経営が立ちゆかなくなったことは知っていたんですが、なんかいろいろと不正もあったとのこと。太陽光パネルを設置した人が、「お前ん家のパネルでそれだけ発電しようと思ったら、夜も発電してなきゃおかしい」というぐらいの水増し請求をしたりとか。「補助金のあるところに不正あり」だそうです。あと、地方分権を進めたら、汚職が増えたんだって。ありそうな話です。

ただ、六本木に連れていくために地下鉄に乗ったところ、「改札に駅員がいないのに、みんなが切符を買うってすごいな。スペインだったら、誰も切符なんて買わないぜ」とか言って驚いてました。そりゃ、太陽光発電の水増しぐらいはやるわな。

それとスペインでは網で追い込んだマグロを銛で突いて引き上げる「マッタンツァ」という漁法があるそうで、それが「残虐だ」と避難されているそうです。それで「スペインの中でも問題になっているのか」と聞いてみたら、「全然。スペインは闘牛で牛を殺すようなクレイジーな国だ」って笑ってました。明るくていいね、スペインの人たちは。あと、六本木では「こんなに黒人がいるとは思わなかった」と驚いてた。六本木のモータウンハウスという外国人が集まるバーでビールをおごってもらったのですが、あのあと3人はどこに行ったのでしょう。1時になっても、ホテルに帰る気は毛頭ないようでした。

今度はこちらからスペインに行きたい。まじで。

2011年10月5日水曜日

Kafka on the Shore


"Kafka on the Shore"を読み終わりました。日本人が書いた小説ならバックグラウンドの知識とは関係なしに楽しめるのではないかと考えて、ウィキペディアによると村上春樹が世界的に評価されるきっかけになったらしい「海辺のカフカ」を選んでみました。面白かったです。

自慢じゃないけど、村上春樹を読んだことがなかった。謎めいた登場人物に謎めいた状況設定。なんか普通のミステリー小説みたいに楽しめるなぁとか、宮部みゆきとか伊坂幸太郎の小説にこんな感じの登場人物がいたなぁ、なんて思いながら読んでいたのですが、最終的にはなんだか変な話になって終わりました。ここからいろいろと意味を読み取るのが楽しみ方なんでしょうね。

いろんなキャラクターのなかで一番心情が理解できるのはナカタですね。心情なんていうものがあるのかどうかも怪しいですが、一番自分に似ている気がします。次はサクラですね。意外に。ホシノは普通の人ですよね。カフカとかサエキは分かんないな。辛気くさい。オーシマは何なんでしょうね。一番理解するのが難しい。

そういえば、「思考の整理学」(参照)を読んだとき、本当の読む力(未知のものを読む力)をつけるには、文学を読むのが一番だというようなことが書いてありました。村上春樹はノーベル文学賞を取るんじゃないかと言われるほどの人ですから、英語の勉強方法としては正解なのかもしれません。

まぁ、もっとじっくり、繰り返し繰り返し読むべきなんでしょうけど。

2011年10月1日土曜日

人食い大統領


ウガンダから帰国されたSさんと、東京組のまえさんとOさんとともにお酒を飲む。

ウガンダといえば、「人食い大統領」としてアントニオ猪木との異種格闘技戦の話もあったというアミン大統領ぐらいしか知らないわけですが、標高が高い土地だということで意外に快適ですごしやすいところだそうです。Sさんは元気そうでした。まえさんとOさんはこれまでにも何度か会ってますが、こちらはこちらで元気に働いていらっしゃいますです。

今日の飲み代はすべてSさんにおごってもらいましたことを記録しておきます。文章にしておかないと、おごってもらったことを忘れる可能性があるので。

ありがとうございます。ありがとうございます。

2011年9月5日月曜日

The Bone Collector

ボーン・コレクター読了です。本当ならば刑事コロンボの小説版を読みたかったのですが、キンドルでは売っていないようです。で、遠い昔に映画で見たことがあるこの本を選んでみました。映画はデンゼル・ワシントンとアンジェリーナ・ジョリーが主演。

まぁ、正直言って、そんなに面白くない。私は推理小説は結構好きなんですけど、朝から通勤電車で読むような話ではないですね。頭のおかしな殺人者が次々と人を攫って、殺そうとするなんていう話は。

ストーリー展開もそんなにね。犯人が殺人現場に、意図的に次の犯行の手がかりを残していくんですけど、なんかありきたりです。犯人が昔のニューヨークで起こった連続殺人事件をなぞるようにして犯行を繰り返すっていうのも、ベタ。あと、途中からは同じパターンの繰り返しで、ダレる。1998年の作品ですから、斬新かどうかを問うのは間違っているわけですが。

日本語で読めば、もうちょっとキャラクターがつかみやすくて面白かったかも。小説は日本のものの方が楽しめるのかもしれません。

2011年8月2日火曜日

The Voyages of Doctor Dolittle


読了しました。いわゆる「ドリトル先生航海記」です。長男(小2)と一緒に図書館に行ったときにこの本の日本語訳があったのを見つけて、私自身が小学生だったころにドリトル先生シリーズに随分とハマっていたことを思い出していたのです。大人になっても面白いお話でした。

ドリトル先生といえば、動物と話せるお医者さん。今となってはそんなに目新しい設定でもないのかもしれませんが、ストーリー展開はかなりぶっとんでいる。10歳のスタビンズ少年がケガをしたリスの治療のためにドリトル先生を探しあてて、先生の家に住み込んで動物の言葉を勉強するようになって、ついにはブラジル沖にある浮島「スパイダーモンキーアイランド」への航海に同行するという話。ドリトル先生が会いたいと切望している偉大なナチュラリスト、ロング・アローさんとか、大西洋のどこかにあるというものすごく深い穴とか、複線として配置された様々な謎が最後には見事に回収されてエンディングに向かいます。ドリトル先生がとある町の闘牛を止めさせる話とか、ドリトル先生が王様になってしまう話とかいった面白エピソードも満載で、面白いったらありゃしない。

ドリトル先生が巨大カタツムリと話すシーンがあるんですが、ドリトル先生はカタツムリ語を話せない。それで、ドリトル先生がイルカに話して、イルカがそれをウニに伝えて、ウニがそれをヒトデに伝えて、ヒトデさそれを巨大カタツムリに伝える。とんでもないホラ話なわけですが、すぐに「ドリトル先生は巨大カタツムリ語も話せる」という設定ではないところが妙にリアル。ドラえもんだったら、「翻訳こんにゃく」で一発解決なんですがね。王様になったドリトル先生の葛藤なんていうのもなかなか考えさせるものがある。

キンドル版ですが、作者のヒュー・ロフティング自身が手がけた挿絵もたくさん載っています。懐かしい。

ドリトル先生みたいな、見た目は大したことないんだけれど、本当はすごい実力をもっているというキャラクターは私のヒーロー像であるような気がします。刑事コロンボとかマスター・キートンとかね。友達少なそうな人ばかりですが。

画像はかの有名なオシツオサレツ(pushmi-pullyu)。オシツオサレツはこの本にも一瞬だけ登場しますが、この画像はなかったです。

2011年7月26日火曜日

More Money Than God


読了しました。"More Money Than God"という本で、ヘッジファンドの歴史を描いた本です。ヘッジファンド界の出来事や中心人物のエピソードを中心にした堅苦しくない本。面白かったです。

ヘッジファンド界最初の成功者は、Alfred Winslow Jonesという人だそうです。彼が最初のヘッジファンドを立ち上げたのは1949年。4人の友人から6万ドルを集め、自分自身でも4万ドルを投資します。
で、1968年までの累積のリータンは5000%。1949年の1万ドルが、約20年で48万ドルになった計算です。

それまでは資産を預けるという行為は、財産を保持することが目的で、その預け先はFedelityやPrudentialなんていう会社だったわけですが、Jonesはもっとアグレッシブな運用をしたというわけですね。Jonesの運用は他を圧倒していた。例えば、1965年までの5年間のJonesのリターンは325%。他のファンドは最高でも225%だったそうです。

Jonesの戦略のキモは、空売りとレバレッジ。これらの手法は大恐慌前の1920年代にもあったんだけど、Jonesはそれをリスクコントロールのために使った。上げ相場のときに株を買うだけでなく、価格下落のリスクを空売りでヘッジしながら買いを入れることで、より大きなポジションをとることができる。

とまぁね、こんな話から次から次へと出てくる本です。Jones以外にも、コンドラチェフ波動を投資分析に取り入れたMichael Steinhardt (Steinhardt, Fine, Berkowitz & Company)、ココア市場の分析からefficient-market theoryを否定したHelmut Weymar (Commodities Corporation)、チャート分析から投資家心理を読み取ったMichael Marcus (Commodities Corporation)、ファンダメンタル分析とチャート分析を使い分けり、キャリートレードを始めたりしたBruce Konver (Commodities Corporation)なんていうところから始まって、George Soros (Quantum Fund) とか Julian Robertson (Tiger Management)、 Paul Tudor Jones (Tudor Investment Corporation)とか、LTCMとかルネサステクノロジーとか。あと最近のジョン・ポールソンも。いちいち読み返すのが面倒くさくなってきましたが、いろんな人が登場します。多分、普通の人が知っているような人は全員でてくる。

もともとはソロスがポンドを売り崩したという話が知りたくて、この本を読もうと思ったわけですが、そういう話の本ではなかった。肝心のソロスとポンドの話は、もともとEurope's exchange-rate mechanismという各国通貨の為替レートを安定させる仕組みがあったところに、東西ドイツの統合でドイツ国内での需要拡大がインフレ・金利上昇を生んで、マルク高ポンド安のトレンドになった。イギリスはポンド安を阻止するために金利を引き上げたいんだけど、国内景気が悪いもんだから金利引き上げを見送り。イギリスはそれでも為替は安定させなければならないから無理なポンド買い介入を続けていたんだけど、ドイツのブンデスバンク総裁のHelmut Schlesingerが「欧州各国の通貨制度を見直すべき」と発言したと伝えられて一気にポンド安のトレンドが加速。ソロスはポンド売りを仕掛けて、仕掛けて、徹底的に仕掛けて、大もうけした。とかいう話でした。1992年の話だったと思う。

ちょっと長すぎる本でしたが、これを機に個別の人物にテーマを絞った本を読んでみたりするのもいいかもしれないと思わないこともないこともないです。

ちなみにタイトルにある"God"というのは、JPモルガンさんのことだったと思います。

2011年5月14日土曜日

Battle Hymn of the Tiger Mother


"Battle Hymn of the Tiger Mother"を読んでみた。大変面白い。

ブッシュ前大統領もご卒業されたイェール大学の教授で中国系アメリカ人女性Amy Chuaが「中国式子育て」をつづった本です。これがまた引いてしまうほどのスパルタ式教育ということで、アメリカで物議をかもしたことが日本でも少しニュースになりました。

で、彼女の子育ての背景にある信念というのが、「数学でも、ピアノでも、野球でも、バレエでも、子供が何かひとつにでも成功すれば、子供は褒められて、満足し、自分に自信を持つようになり、楽しくなかったものを楽しめるようになる」というもの。まぁ、日本人でもそんな考え方をする人もいる。KANの「すばらしい人生」にだって、「あれほど逃げまわっていたピアノを弾きながら」という歌詞がありますよね。知りませんか、そうですか。

ただ、Amyさんのすごいところは、その方針が徹底していること。曰く、「Aマイナスは悪い成績である」「数学の授業ではクラスメイトより2年先をいっていなければならない」「子供が先生に従わなかったら、親は必ず先生の側に立つ」「友達の家でのお泊まり会なんて許さない」「子供は親の命令には絶対服従」「西洋の子育ては子供の自尊心に気を遣いすぎ」なんていった具合です。私がAmyさんの息子だったら、殺されているところです。

Amyさんには2人の娘がいます。長女のSophiaはピアノを習わせた。思惑通りに練習に励み、ピアノもどんどん上達していく。なんせ旅行先でもホテルやバーのピアノを借りて、必ず毎日練習させたというからそりゃあもう上達するわけです。

で、次女のLuluにもピアノを習わせた。ところが、このLuluさんが相当な頑固者。幼稚園の入園試験で、Luluはブロックを数えるように言われた。でも、彼女は一言も口にしない。慌てたAmyさんが「何やってんのよ」と囁くと、Luluは「頭の中で数えたの」。Amyさんは自分の信念を曲げて、「ちゃんとできたらキャンディーを買ってあげるから」と買収。すると、もう1度4個のブロックを数えるように言われたLuluは、「11,6,10,4」と数える。次は8個のブロックを前にして、「6,4,1,3,0,12,10,8」。なんという漢気。完全に大人をなめきっている。そんなLuluとAmyさんは、この後も繰り返しバトルを繰り広げることになります。

ピアノの練習をしろと言われた、LuluはAmyさんにパンチ、キック、かみつき。さらには楽譜をつかんで破り捨てる。するとAmyさんは楽譜をテープでつなげて破られないようにプラスチックのケースにいれて、「あなた大事なお人形さんの家を寄付しちゃうわよ」と脅迫。これに対してLuluは「本気だったら、さっさとサルベーションアーミー(慈善団体みたいなもん)に行けばいいじゃない!」と反撃する。

Amyさんは、Luluが上手にピアノを弾けないときは、「失敗するのが怖いから、わざと失敗している」と感じるタイプの人だそうです。ユダヤ系アメリカ人で、Amyさんとおなじくイェール大教授かつベストセラー作家の旦那さんは娘たちがいないときに、「いい加減にしないか。子供を傷つけるのはやめろ」と言うらしいですが、Amyさんは「傷つけてなんかいない。モチベーションを高めているだけ」と言い返す。旦那さんは「Luluはまだ小さいから、難しいことはできないんだ。君はそんなことを考えたことがあるの?」と切り返すわけですが、「あなたはLuluの可能性を信じてないのよ」と猛反論。読んでいるだけで、疲れてしまうような生活です。

こんな生活を繰り返していても、Amyさんはめげない。「私の子育ての副産物は、SophiaとLuluが仲良しになったこと。2人が『おかあさん、狂ってる』と囁きあっているのを聞いたことがある」と明かしながらも、「でも、私は気にしない。私は西洋の母親のように傷つきやすくなんかない。私の子育ての目的は子供たちの未来に備えることで、私を好きになってもらうことではない」と言ってのける。漢です。漢のなかの漢なのです。

とまぁ、こんな感じの生活が日々つづられています。Luluはピアノをやめて、バイオリンを弾くようになるのですが、まぁ基本的には同じ感じ。でも、この後、旦那さんのお母さんの死とか、Amyさん自身の妹の闘病なんていう話も出てくるとAmyさんにも心境の変化がでてくる。「本当は、私は人生を楽しむことが得意ではない。これは私の強みではない」「中国式の子育ては、成果が上がらなくなると脆い」なんていう文章も出てきます。

で、最終的にどうなるかっていう話ですが、Luluはバイオリンを止めることになります。Luluはますます反抗的になり、ついには部屋に閉じこもって自分の髪の毛を自分でぐちゃぐちゃに切ってしまったりもする。そのときAmyさんは心臓バクバクで、思うように言葉が出てないほど動揺しますが、それでも問題はコントロールできるとLuluと対決姿勢を貫く。するとLuluは人前でもAmyさんに反抗するようになり、旅行先のモスクワのレストランでブチ切れ。クライマックスです。

「お母さんなんて嫌い! 私のことを愛してないわ。自分ではそう思っているかもしれないけれど、絶対に違う。一緒にいるといつでも気分が悪くなる。私の人生台無し。そばにいたくない。お母さんはそれでいいの? 最悪の母親だわ。自己中心的で、自分以外のことなんて気にもしない。どれだけ私が嫌な思いをしてるか分かる? 全部自分のためにやってるんでしょ。私のためにやって言っているけど、全部自分のためじゃない! バイオリンなんて嫌い。生きているのも嫌い。お母さんも嫌い。家族も嫌い!」

グラスを床にたたきつける。ガラスが飛び散って、周りの視線が集まる。

「私を1人にしてくれないなら、次のグラスを割る!」

Amyさんはその場から逃げ出して、赤の広場の行き止まりで立ちつくします。


私が旦那さんなら泣いてるな。


現在は家族関係は良好のようです。この本も、家族みんなが目を通して、何度も何度も買い直したらしい。Luluはテニスを始める。ジュリアードの入学試験を受けたほどの腕前だったバイオリンに比べると、まったく上手ではないようですが、自分でモチベーションをもって頑張っている。一度、Amyさんが良いテニスのコーチを見つけようと画策したらしいですが、Luluに拒否されて諦めたらしい。なんとなく、ほのぼのとしたハッピーエンド。

まぁ、自分の子育ての参考になるかどうかというと、ならないです。ただ、優秀な夫婦でも子育てには苦労するんだなと。ほのぼのハッピーエンドのせいもあって、お昼の連ドラを見たかのような読後感でもあります。

2011年4月21日木曜日

Decision Points

Decision Points を読み終わりました。震災で仕事が忙しくなり1カ月は中断してましたが、ようやく読了。非常に面白かった。

言わずと知れた米国の第43代大統領ジョージ・ブッシュさんの自伝です。911からリーマンショックまでの8年間、世界中からバカにされ続けてきたこの人は一体どんな人なんだろうと常々疑問に思ってきたのです。この本を読んで分かるのは、このおじさんはすごくいい人なんじゃないかということ。大統領の息子であるブッシュさんは、家族の伝統に基づいてマサチューセッツのなんとかという学校、イェール大と進学し、30前にハーバードビジネススクールに入ったとき「初めて自分の意志で学校を選んだ」なんていう感慨を持ったという人です。(実はきちんと覚えてないのですが、確かそんな風な話が書いてありました。)超おぼっちゃんなわけです。こういう育ちのいい人だから、滅茶苦茶に批判されてもめげずに仕事できたんだろうなと。長嶋一茂みたいなもんじゃないかと。何があっても「家族と神様は僕を守ってくれる」みたいなね。

ただ、そうは言ってもマスコミに対する不信感がなかったわけじゃないらしい。父親の選挙運動を手伝っているときに、取材に協力したニューズウィークの記事の見出しがパパブッシュのことを「臆病者(wimp)」と表現したことをきっかけに政治記者とその裏にいる編集者は警戒するようになったそうです。ニューズウィークの記者に抗議したら、「編集者がどうのこうの」的な言い訳をしたらしい。わはは。

あと、大統領の任期中、個人的な人格批判にさらされたことも振り返っています。「政敵やコメンテーターは私の正統性や知性、誠実さに疑問を投げ掛け、容姿やアクセント、信仰心までバカにした。ナチだとか戦争犯罪人だとか、遂には悪魔とまで呼ばれた。最後のはベネズエラのチャベス大統領の言葉だ。私のことを敗北者で嘘つきだといった議員は今、上院多数党院内総務をやっている」だって。それでもイェールで歴史を学んだというブッシュさんは、「リンカーンだってヒヒになぞらえられたんだ」とめげないのですが、ブッシュさんが一番こたえた感じた批判があった。「イラクが大量破壊兵器を持っていると嘘をついたと批判されたり、金持ちのために減税したと言われることより、カトリーナで多数の黒人が犠牲になったことを理由に『人種差別主義者だ』と批判されるのは辛い」だって。へぇ。

911の後の対応については、「もしも次の攻撃がなかったら、私は過剰反応したと批判される。でも、次の攻撃があったら、なぜきちんと対応していなかったのだと批判される」として、「これが大統領の仕事というものだ」とボヤきます。あと、「ケーブルニュースを24時間分埋めなければならない熱心すぎる記者たち」なんていう表現もある。おぼっちゃんだって頭にきていたみたいです。

このほか印象的なのは、小泉純一郎がけっこうカッコイイ感じで書かれているところですね。2002年のカナダ・カナナキスでのG8サミットで、ブッシュさんが途上国支援に「政治腐敗がないこと」「市場主義経済を目指すこと」「健康と教育に投資すること」といった条件をつけるMillennium Challenge Accountという新手法について説明したとき、フランスのシラク大統領が「ずいぶん身勝手じゃないか。アメリカが政治腐敗の一掃を手助けするだって? 自由主義が腐敗を作り出してるんじゃないか!」と話しかけてきた。それに対してブッシュさんが「少なくともアメリカはアフリカを植民地にしたりはしていないがね。アメリカは困っている人たちがお金を吸い上げられるのを見てられないだけだ。あんたたちがどう思うと、我々はこの方法でいく」と啖呵を切る。このとき、他の出席者はショックを受けて静まりかえった。ただ、「私の友人である日本のコイズミだけがフッと笑って、静かにうなずいていた」だって。まぁ、笑ってるだけなんですが、なんか「ムダヅモ無き改革」の小泉ジュンイチローばりの渋さじゃないでしょうか。あと例のプレスリーの写真も出てきます。

とまぁ、こんな風にブッシュさんに関心がある人にとっては非常に面白い本だと思います。もちろん真面目にアメリカの内政、外交に関心がある人にとっても為になるでしょう。書かれていることは自分に都合のいいところばかりなのかもしれませんが、これも8年間批判され続けた人の本音。これぐらい許してやってあと英語で読んでいると、そんなに嫌みにも感じません。そういうニュアンスを読み取るほどの語学力がないから。


キンドルは相変わらず素晴らしいです。面白いところにブックマークを付けることができるので、こうして感想を書くときにも便利。

2011年3月22日火曜日

あっちゃん

AKB48の前田敦子が被災地の人たちを励ますために、毎日ブログを写真付きで更新するとかいう記事を読んだ。で、どんなブログなんだろうと思って、前田敦子のブログにアクセスしてみた。

恥ずかしい。もっすごい恥ずかしい。別に何も変なことを書いているわけじゃないけれど、普段読み慣れないかわいらしい文体をながめているだけで恥ずかしい。まともに読むことができないほどだ。

もう2度とアクセスしないでおこうと思う。

2011年2月1日火曜日

Superfreakonomics

キンドルで"Superfreakonomics"を読んだ。

最初の一冊なもので確実に面白いものにしたら、期待通りの結果。第一章の売春婦ネタはあからさまなウケ狙いなわけですが、なんだかんだで「なるほどな」と思わされます。「売春の値段が下がったのはなぜか?」「婚前交渉が一般的になったからだ」みたいなね。このほか、「不特定多数のなかからテロリストを見つけ出すには?」「生命保険に入っていない奴を疑え。自爆テロを覚悟しているテロリストたちは、自殺では生命保険がおりないことが分かっているから、生命保険に入って保険料をムダにするようなことはしない」とか。まぁ、この手の「へぇ」的なエピソードが統計的な裏付けをもって示されているという趣向です。男女間の賃金格差の話は、シラキュースでやった家族政策(Child and Family Policy)の授業で読んだような論文も出てきました。Gary Beckerは最初のFreakonomistなんだって。

あと、キンドルの方ですが、サクサク読めて便利なことこのうえないです。右手で持ってもサクサク、左手でもってもサクサク。電車の乗り換えなんかで読書を中断したいときは、スッとコートのポケットに入れておけばいい。次にキンドルを立ち上げたときは、きちんとさっきのページが開かれている。立ち上げにかかる時間は1秒ぐらいのものなので、ストレスなし。難点としては電池の減り具合に気づきにくいことぐらいか。なかなか電池が減らないから、充電せずに放っておいたら、月曜の朝に電池切れになっていることがあった。でも許せる。全然許せる。

良い買い物をしたな。

2011年1月11日火曜日

第一印象

キンドルで本を買ってみた。

ちゃちゃっと選んでワンクリック。すると画面には購入した本の文章がすぐに現れる。やばい。これはやばい。本を買ったという実感がまったくない。無料のホームページを閲覧するがごとく、サクサクと本を買えてしまう。

画面は読みやすい。小さすぎるということもない。ページの切り替えも早くてストレスなし。

断念

読んでいた本を断念します。

"Free Lunch: How the Wealthiest Americans Enrich Themselves at Government Expense (and Stick You with the Bill)"という本を読んでいました。シラキュースで講座を持っていたこともあるニューヨークタイムズの記者が書いた本で、留学中に学内の本屋で見つけて買ったもの。途中でほったらかしにしていたので、リベンジのつもりでした。

ただね、この本がつまんないの。ずーっと金持ちの悪口だけを書いている。ニューヨークヤンキースが新スタジアムを建設したとき、ニューヨーク市から補助金を受け取っていたことを取り上げて、「大金持ちのジュリアーニ市長が庶民から集めた税金を大金持ちのスタインブレナーに譲り渡した。けしからん」みたいな話ばかり。ちょこっと、「スポーツ施設っていうのはシーズンオフには人が集まらないから意外に経済効果は少ないんだよ」みたいなことが書いてあったりして、私としては「そこんとこもっと知りたい」と思うんだけれど、次は別のお金持ちの悪口になっていく。なんだかなぁ。

というわけで、読むのが辛い。やめます。あと、どうやら12月あたまに注文していた「キンドル」が届いたようだし。金融危機の本が分厚くて重かったもんだから、思わずポチッてしまってたんですが、ようやく到着したようです。クリスマスシーズンのせいか、当初は「配送日は最悪で2月上旬」ということだったのですが、ちょっと早くなったみたいです。

キンドルについてはいずれ。