2013年2月17日日曜日

国連安保理決議による北朝鮮への経済制裁

北朝鮮がロケットを発射してミサイル技術の実験をしたり、核実験をやったりしている。で、国際社会としては経済制裁でプレッシャーをかけたいんだけど、いくらやってもあんまり効果がないらしい。なんだかよく分らないので、北朝鮮に対してどんな経済制裁が行われているのか調べておいた。国連安保理ベースで。

国連安保理は1月22日の安保理決議2087で対北朝鮮経済制裁の強化を決めています。(参照)

このなかに、

4. Reaffirms its current sanctions measures contained in resolutions 1718(2006) and 1874 (2009);

というパラグラフがありまして、現在の経済制裁は2006年の安保理決議1718と、2009年の安保理決議1874が元になっていると分ります。で、この二つの安保理決議がどういう内容だったかを調べてみた。

まず安保理決議1718。(参照) 2006年10月14日の決議です。北朝鮮はこの年の7月5日にミサイル発射実験、10月9日に初めての核実験を行っています。

決議は国連憲章7章(ACTION WITH RESPECT TO THREATS TO THE PEACE, BREACHES OF THE PEACE, AND ACTS OF AGGRESSION)の41条に基づいたものです。

41条は、

"The Security Council may decide what measures not involving the use of armed force are to be employed to give effect to its decisions, and it may call upon the Members of the United Nations to apply such measures. These may include complete or partial interruption of economic relations and of rail, sea, air, postal, telegraphic, radio, and other means of communication, and the severance of diplomatic relations."

という文言で、決議の実効性を高めるために、軍事力行使以外の、経済関係や交通、運輸、通信、放送などの封鎖や外交圧力といった方法をとることができるというものです。

で、安保理決議1718でどんな経済制裁をやるのかは8パラ以降に書かれていまして、

・加盟国は北朝鮮への物品の供給や販売、輸送を行わないよう行動する。禁止される物品は、戦車、戦闘機、ヘリ、艦船、ミサイル、関連部品など。および贅沢品

・北朝鮮は、上記の物品の輸出を止め、加盟国は上記の物品を北朝鮮から調達することを禁止する。

・加盟国は、上記の物品の製造、メンテナンスに関連する技術や訓練などを北朝鮮に供給したり、北朝鮮から調達することを禁止する。

・加盟国は、北朝鮮の核兵器や大量破壊兵器などに関連すると認められる個人や団体などが保有している金融資産などを凍結する。

・加盟国は、北朝鮮の核兵器や大量破壊兵器などに関連すると認められる個人や家族が、自国内に入ることを妨げるための必要な措置をとる。ただし、自国民が自国に入ることは妨げない。

・加盟国が、上記の項目が遵守されるようにするため、必要に応じて北朝鮮に持ち込まれる貨物や、北朝鮮から運び出される貨物に対する検査を行うために協調するよう求める。

・金融資産などの凍結については、食糧や医薬品など基本的な生活に関わるものなどは除外。

・北朝鮮関連の個人や家族の入国禁止については、人道的活動や宗教活動などと認められるものは除外。

・輸出入禁止の対象となる物品や、金融資産凍結の対象となる個人や団体の詳細は、安保理か新たに設立される委員会で決める。

ざっとこんな感じです。結構いろいろやってます。


で、次は2009年6月12日の安保理決議1874。(参照) 北朝鮮が4月5日にミサイル発射、5月25日に核実験を行ったことを受けたものです。これも国連憲章7章41条に基づいています。

内容は、

・北朝鮮による物品輸出や、北朝鮮からの物品輸入の禁止の対象を、あらゆる武器や関連品、送金、技術的な訓練などに拡大。

・北朝鮮への物品供給や販売の禁止の対象を、あらゆる武器や関連品、送金、技術的な訓練などに拡大。ただし小型の武器などは例外。

・加盟国に対して、禁止されている物品が含まれていると疑われるあらゆる荷物を検査するよう求める。

・加盟国に対して、禁止されている物品を運んでいると疑われるあらゆる船を検査するよう求める。

・加盟国が、禁止されている物品を押収し、破壊することを認める。

・加盟国は、禁止されている物品を運んでいると疑われる北朝鮮の船に対して、燃料補給などを行うことを禁じる。ただし、合法的な経済活動に影響を与えることを目的とはしない。

・加盟国に対して、北朝鮮の核開発などに使われる可能性がある金融資産に関連する金融サービスや送金を禁止するよう求める。

・加盟国に対して、北朝鮮への新たな経済支援を行わないように求める。人道的支援は例外。

という感じ。禁輸される物品が拡大されて、検査体制が強化されて、送金なども停止されたといった内容です。


で、次が冒頭で書いた国連決議2087。北朝鮮が2012年12月12日にミサイル発射実験を行ったことを受け、13年1月22日に採択されました。北朝鮮はその後、2月12日に3度目の核実験もやっています。

内容は、

・禁輸品や資産凍結の対象となる個人や組織を追加。

・船に対する検査を拒否された場合の対応策を決めるための委員会を新設する。

・金融取引の禁止措置をのがれて現金(bulk cash)が北朝鮮に持ち込まれていることを残念に思う。

ぐらい。なんかあまり内容がないです。もうやれることは言っちゃったし、やろうといったことは守られていないし、っていう気分なんでしょうか。この決議は国連憲章7章には基づいていないです。なんか無力感。


ちなみに、安保理決議1718で設立が決まった委員会はこちらです。禁輸品とか、資産凍結の対象となっている組織なんかのリストもこのサイトからリンクが張られている。もっと沢山の個人や団体がリストアップされているのかと思っていたのですが、なんかあんまり多くないような気がします。

画像は北朝鮮が2012年12月12日に打ち上げたロケット。

0 件のコメント:

コメントを投稿