前回の続きです。もうひとつの「決着がついた感」を作った判決というのが、2010年のMcDonald v. Chicagoの最高裁判決です。
シカゴ市ではワシントンDCと同様に「拳銃を保有するには、登録せねばなりません」ルールと「拳銃を登録してはなりません」ルールを組み合わせて拳銃の保有を禁じてきました。そして2009年、第7巡回区の控訴裁判所はこのルールについて、シカゴ市の銃規制は「合憲」との判断を下します。合衆国憲法の修正第2条は「武器を保有する権利」を認めているのですが、その権利は州が制限することができるという考え方です。
この判決はワシントンDCでの銃規制が違憲とされた後のものですが、州と特別区は違うという考えだったようです。(参照)
この判断の背景にあるのが、合衆国憲法修正第14条と1873年のSlaughter-House Casesにおける最高裁判決です。
合衆国憲法修正第14条というのは、
All persons born or naturalized in the United States, and subject to the jurisdiction thereof, are citizens of the United States and of the State wherein they reside. No State shall make or enforce any law which shall abridge the privileges or immunities of citizens of the United States; nor shall any State deprive any person of life, liberty, or property, without due process of law; nor deny to any person within its jurisdiction the equal protection of the laws.
という文言。2文目のところで「州は合衆国民の権利や免責を侵害してはならない」としています。これだけだと州は「銃を持つ権利を侵害できない」ということになって、シカゴ市の銃規制は違法だということになりそうです。
ところが、この条文の解釈について、Slaughter-House Casesにおける最高裁判決がありまして、この判決では「州が侵害してはならないのは合衆国民としての権利であって、州民としての権利ではない」とされています。(判決文)
何を言うとんねんという感じですが、
このSlaughter-House Casesの判決はまず、修正第14条の1文目には、「合衆国で生まれたり、帰化したり、管轄地域に属したりしている全ての人は合衆国民であり、住んでいる州の州民である」と書かれているので、合衆国民としての権利と州民としての権利を区別しているのは明確とします。
It is quite clear, then, that there is a citizenship of the United States, and a citizenship of a State, which are distinct from each other, and which depend upon different characteristics or circumstances in the individual.
さらに2文目で「the privileges or immunities of citizens of the United States」という言葉を使っていることを指摘して、州が侵害してはならないと規定されているのは「合衆国民としての権利である」とします。逆に言うと、州民としての権利は州によって制限されることもありえるということです。
Of the privileges and immunities of the citizen of the United States, and of the privileges and immunities of the citizen of the State, and what they respectively are, we will presently consider; but we wish to state here that it is only the former which are placed by this clause under the protection of the Federal Constitution, and that the latter, whatever they may be, are not intended to have any additional protection by this paragraph of the amendment.
そして制限されうる州民としての権利について、fundamentalなものとします。この際、以下のような別の判決での判断を引用したりしています。
what are the privileges and immunities of citizens of the several States? We feel no hesitation in confining these expressions to those privileges and immunities which are fundamental; which belong of right to the citizens of all free governments, and which have at all times been enjoyed by citizens of the several States which compose this Union, from the time of their becoming free, independent, and sovereign.
でまぁ、Slaughter-House Casesでは、職業選択の自由というのはfundamentalな州民としての権利であるから州によって制限されることもあると続くわけですが、McDonald v. Chicagoの控訴裁判所での判決では、職業選択の自由が銃を持つ権利に置き換わる。つまり、銃を持つ権利は修正第14条によって保護されるものではなく、シカゴ市が銃の保有を禁止することは合憲だという判断になります。
当然、主張を退けられた側は最高裁に持ち込みます。で、ようやく2010年のMcDonald v. Chicagoの判決につながります。
長くなったので続きます。画像は修正第14条。
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