前のエントリーで北朝鮮に対して経済制裁なんかやったってどうせ効かないんだから、もっと経済関係を深める方向でいくべきなんじゃないかという人もいることに触れましたが、もうちょっと調べておいた。
北朝鮮との経済関係を深めるといえば「太陽政策」っていう言葉が思いつく。1998~2008年にかけて韓国の金大中政権や盧武鉉政権でとられたりしたそうで、WSJのブログにその政策アドバイザーだった人のインタビュー記事的なものが載ってました。(参照) 延世大学教授の文正仁(Moon Chung-in)という人です。
金大中、盧武鉉時代の太陽政策に対しては「結局、北朝鮮による核開発を止められなかった」という評価があるのですが、文教授は「ブッシュ政権の誕生のせいで太陽政策の効果は弱まったし、李明博政権は太陽政策の成果を潰してしまった」と反論します。そのうえで、やっぱり北朝鮮と経済的な関係を強めることで、北朝鮮は自然と民主化への道を進むのだと説いています。実際、北朝鮮では以前に比べて「お金」が持つ意味が大きくなっているそうで、計画経済下では意味を持たないはずのお金が重要になっているのは、外国との交流の結果、北朝鮮が変化しつつあることの証拠だというわけです。
金正恩は、経済の疲弊で苦しんでいる国民を満足させないと、体制を維持できない。だから北朝鮮に対して、状況を克服するには外国との関係をもつことが重要だということを北朝鮮に分からせる。そうすれば、北朝鮮が経済協力の申し出を断ることはできないという読みです。
で、文教授は北朝鮮に対して、このように対話を持ちかけるべきだとします。
Our approach should be to say something like this to the North Korean leadership: ‘I don’t care about the North Korean dynasty. It’s your problem. You could be like Deng Xiaoping. We want that kind of leader. But you could wind up like Ceausescu. That’s your problem. For us, we want peace with you. We want economic cooperation. We will work hard to create a peaceful environment in which you can pursue that kind of project without worry and anxiety.’
つまり北朝鮮の国内体制については文句は言わない。北朝鮮が民主化せず、人権侵害を続けていたとしても、北朝鮮との平和的な関係を維持するためには目をつぶって経済関係の強化を持ちかける。「鄧小平になるかチャウシェスクになるかは、そちらにまかせるけど、こちらとは仲良くやりましょう」というわけですね。ほほぅ。
でも、こうした太陽政策に対しては、「そんなに上手くいくかいな」という声もある。American Enterprise InstituteのMichel AuslinはWSJで、"There is no indication that Pyongyang will seriously consider giving up its weapons programs for any amount of aid."と言っています。さらに米国は北朝鮮に対して、「米国や同盟国に大量破壊兵器なんか使いやがったら、ぶっつぶすぞ」と宣言したうえで、北朝鮮との非核化交渉を止め、北朝鮮が国内での人権侵害を止めることを条件に外交交渉を始めるように明言すべきだとしています。
making a clear declaration that any use of weapons of mass destruction by North Korea against America or its allies would be an act of war resulting in a devastating U.S. response to end the Kim regime's existence. Washington should end all further negotiations on denuclearization with Pyongyang, but it should also make public its willingness to engage in regular diplomatic discussions once the regime's human rights abuses stop.
文教授とは正反対ですね。米国にとって民主主義の拡大は非常に重要だということでしょう。
長いんで続きます。画像は文正仁教授。
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