2012年11月9日金曜日
マイノリティの支持、マジハンパねぇ
大統領選はなんだかんだで現職オバマ大統領の完勝という結果でした。選挙人は303以上。接戦州として挙げられていた11州のうち、ノースカロライナを除く9州で勝利を収めた(フロリダはまだ結果が出ていない)。「投票人が同数になったらどうしよう」なんて心配して損しました。バカみたい。
失業率を回復させられない「弱い現職」と、金持ちイメージのいけすかない「弱い対立候補」の対決で、なんでオバマが完勝できたかについてはいろいろと解説もありますが、なんだかんだで「オバマは選挙が上手かった」というものをよく見かける。ウォールストリートジャーナルのこの記事(原文の見出しは、Big Bet Six Months Ago Paved Way for President)なんか読むと、よくもまぁやるもんだと思います。ちなみにこのWSJ日本語版の記事は日本の新聞に載せるとすると、12字×525行あります。なげぇ。
あと選挙戦の結果について「アメリカは分断されているんだ」と分析する話もよく見ます。でも、アメリカの何がどう分断されているのかよく分らないので、米メディアによる共同出口調査の結果をみてみた。CNNのこのページがすごく分りやすい。
まず、Vote by Raceのところで驚くのは、白人だけでみると59%がロムニー支持であること。ロムニー完勝じゃんって感じです。でも、黒人の93%、ヒスパニックの71%、アジア系の73%がオバマ支持。Vote by Gender and Raceのところでは、黒人女性の96%がオバマ支持。黒人のおばちゃんは熱狂的です。でも、「アメリカって白人の方が多いんだから、ロムニーが勝つんじゃないの?」って思っちゃうわけですけど、投票者の28%が非白人っていうことなんで、そこで圧倒的な支持を得ることができるオバマは最初から優位なわけです。
なるほど、このグラフをみると、「アメリカはここで分断されてます!」って線を引けるぐらいだな。このオバマに勝とうとするなら、共和党も黒人を候補者にすれば良かったのにね。
次に、Vote by Incomeのところをみても、「あぁ、ここで分断されているのかな」という気がする。世帯収入が5万ドル未満の人たちは60%がオバマ支持。逆に世帯収入5万ドル以上の人になるとオバマ支持は45%で、ロムニー支持が53%になる。投票者の割合では、5万ドル以上の方が多数派なわけですが、5万ドル未満の人たちのオバマ支持の水準が強いために、全体ではオバマが盛り返すという結果になる。
Most Important Issue Facing Countryなんかもそうで、アメリカが抱える最大の問題は経済だと考える人が59%で最多。この人たちの間ではロムニー支持の方が多い。財政赤字が問題だと考える人たちのなかでもロムニーの支持はかなり強い。ただ、ヘルスケアが問題だという人が投票者全体の18%いて、この人たちの75%がオバマを支持している。ここでもやはり、2割程度の人たちの熱狂的な支持がオバマを後押ししているわけです。
負けたロムニー陣営は悔しいでしょうね。多数派の支持はロムニーにあるわけですから。下院選挙では共和党が多数を占める背景にはこうした事情があるのでしょう。下院の候補者全員がオバマというわけじゃないです。また、マイノリティの圧倒的支持というゲタをはかせてもらっても、全体ではオバマの得票率が50%にすぎなかったということは、やはりオバマは「弱い現職」だったことの現れだと思います。
そういえば選挙前、職場の先輩に「やっぱロムニーは金持ちだから嫌われるんですかね」と尋ねてみたとき、「そんなことないよ。アメリカ人は金持ち好きなんだよ」っていう返事だったな。ロムニーが嫌われたわけじゃないけど、オバマ支持の熱狂がかろうじて上回ったって感じですね。
まぁ、アメリカが分断されているというイメージは分った気がする。じゃぁ次は「どうして分断されているのか」っていうことになるんですが、これは「有色人種は白人にはなれない」ってことに尽きるんですかね。オバマは黒人と白人のハーフですから、なんとか橋渡しをしたいという理想をもっているんでしょうけど、実態は有色人種からの圧倒的な支持での勝利であって、白人からの強い支持は受けられていない。
あと、「低所得者はどんなに頑張っても高所得者にはなれない」っていうのもあるかもしれない。このあたりの事情は「家族政策(Child and Family Policy)」の授業でやったな。確か、低所得者が高所得者になったり、低所得者の子供が高所得者になる割合が少なくなっているとかいう話だったような気がする。うろ覚えですけど。もしかしたら逆だったかもしれない。また調べておきます。
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