2012年11月12日月曜日

ブッシュ減税終了とバフェットルール


オバマ大統領が再選されて、次はFiscal Cliff(財政の崖)への対応です。ブッシュ減税の終了による消費の下押しと、Budget Control Actで定められた予算規模の自動的なカットなどが景気を下押しすると予想されているわけですが、オバマとしてはどうしようとしているのか調べておいた。歳出カットの方はよく分からないので、ブッシュ減税の終了なんかについて。

まずブッシュ減税とは何ぞやということですが、これは2001年のTax Relief, Unemployment Insurance Reauthorization, and Job Creation Act(EGTRRA)と、2003年のJobs and Growth Tax Relief Reconciliation Act(JGTRRA)で実施された減税措置で、所得税やキャピタルゲイン課税と配当課税の税率が引き下げられ、所得税の最高税率は35%、キャピタルゲイン課税の最高税率は15%になった。2012年末にこのブッシュ減税が失効すると、所得税の最高税率はブッシュ減税前の39.6%、キャピタルゲイン課税の最高税率は20%に戻ってしまいます。配当課税は普通の所得としてカウントされることになる。

で、オバマとしては選挙中から中間層への減税は続けて、年間所得25万ドル以上の世帯には増税しますよと約束してきた。(参照) ということで11月9日の演説では、「とりあえず25万ドル未満の世帯には減税を延長することには異論はないはずでしょ?」と共和党に呼びかけています。

民主党はすでに7月25日、25万ドル未満の世帯への減税を延長するMiddle Class Tax Cut Act(参照1)(参照2)を上院で通しています。tax bracketを修正して、25万ドル未満の減税を継続、25万ドル以上は増税しようという内容です。だからオバマは11月9日の演説では、「共和党さえ賛成してくれれば、協議に時間はかからないよね」と言っています。ちなみに、このMiddle Class Tax Cut Actの採決は51対48。民主党のJim Webb(D-VA)と民主党系無所属のJoseph Lieberman(I-CN)が共和党とともに反対しています。

あと、先ほどのオバマの公約では25万ドル以上の世帯への増税のほか、Buffet Rule(バフェットルール)についても書かれています。バフェットルールは、年収100万ドル超の世帯のなかに、所得税とpayroll taxを合わせた実効税率が年収25万ドル未満の中間所得層の実効税率よりも低い世帯があるということを問題視したもので、「年収100万ドル超の世帯の実効税率を30%以上にしよう」というルールです。

ホワイトハウスの資料によると、年収5万ドル~10万ドルの世帯の実効税率は平均13%、10万ドル~25万ドルの世帯では18%。100万ドル以上の世帯だと平均で20~26%ということですから、25万ドル未満の世帯よりも高いわけです。でも100万ドル超を稼いでいる世帯のうち2万2000世帯では実効税率が15%未満になっていたりすることもある。ヘッジファンドのマネジャーが、収入を「キャピタルゲイン」として申告して、税率を15%にしたりしているかららしいです。バフェットルールが成立すると、2012~22年の税収は$46.7 billion増えると試算されています。(参照、このメモの冒頭にブッシュ減税の簡単なまとめがあります)

ちなみに民主党はバフェットルールについて定めたPaying a Fair Share Actを上院に提出し、4月16日に51人の賛成を得ていますが、共和党がフィリバスターでブロックしています。共和党は何がなんでも増税反対の姿勢をとっているというわけです。

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